マスクの着用が個人の裁量に任せられるようになった今、口もとに自信が持てず、はずす勇気が出ない!という切実な声が多数。我々の〝お口の健康〟に迫る問題点、そして、今すべきオーラルケアとは?
マスクオフ時代、お口のケアどうする?
マスク着用で口もとは大きく変化していた——。その事実に着目し、誰よりも早く"マスク老け"を訴えてきた石井さとこ先生に"お口の健康"が直面する現状を聞いた。
「ホワイトホワイト」院長。ホワイトニングを日本に広めた第一人者。歯や口もとを美しく見せるアドバイスに定評がある。『マスク老け撃退顔トレ』(集英社)など著者多数。
長期間のマスク着用で口臭、黄ばみ、たるみが顕著に
マスク着用が個人の判断に委ねられ、いよいよマスクなしの日常が戻ってきた。と同時に、新たにオーラルケアの悩みを訴える人が増えている。長年オーラルケアに携わり、多くの俳優やモデル、アナウンサーから支持される歯科医師の石井さとこ先生に徹底取材。歯や口腔内の健康が直面するリアルな現状とは?
「もともと日本人の成人の7割は口呼吸と言われていたのですが、マスクをすることで自身の口臭に気づく人が増え、オーラルケアの意識が高まりました。同時に、マスクオフしたときの歯の黄ばみや歯並びの悪さにも目を向けられるように。マスクをはずし、改めて鏡を見て気になり始めた、という人が多く、慌ててクリニックへ駆け込む人が見受けられました」
さらに3年にわたるマスク着用は、私たちが想像する以上に口まわりにダメージを与えていた、と、石井先生は指摘する。
「マスクで口もとが隠れることで、しゃべる、笑う、咀嚼するなどの動きが制限されたうえ、人目を気にしなくてもよくなったため、締まりがなくなり、表情筋の衰えが顕著に。口を閉じておく筋肉もゆるみ、口呼吸をするようになるんです。すると、口腔内が乾燥し、その結果唾液量が低下します。唾液には、自浄作用により口の中を清潔に保つ働きがあったり、抗菌作用や再石灰化作用などの働きがありますから、唾液量が減ることで、ニオイや歯周病、歯の汚れ、黄ばみなどのリスクが上がるんですよ」
際にこういったことを実感している人も増えていることから、歯のクリーニングやホワイトニングなど、オーラルケアに視線が集まったと言える。
マスクオフ解禁となった今、新たな口もと悩みが勃発⁉
「そしてもう一つ、大きな話題になっているのが"ゴボ"。上下の唇全体が前方へと引っ張られ、横から見たときに、唇が盛り上がり、口が前に出て見える状態を指します。一般的な"出っ歯"をイメージするとわかりやすいかもしれませんね。これは医療用語ではなく、インターネット上で広まった用語ですが、マスクによってこの"口ゴボ"が老若男女問わず増えているのです。先天性のものと、後天性のものがありますが、マスク着用によって口呼吸が増え、唇が開いていることで、舌が正しい位置にないことが後天性の"口ゴボ"の原因の一つ。また、無意識に舌を歯に強く押しつけるクセで、引き起こされることもあるんです」
舌の正しい位置は、唇を閉じたときに上あごに収められ、舌の先が前歯の裏側にきちんと収納されている状態。
「後天的な"口ゴボ"は、口呼吸をやめる、舌のポジションの見直し、マウスピースをはじめとした多種の矯正治療で改善することができます。それに限らず、口もとがゆるむことで、ほうれい線が深くなったり、下半顔がたるんだり。皆さんあまり意識されていないかもしれませんが、口まわりは簡単に変化するんです。だからこそ、鏡を使ってご自身の目で確認することが大切。ゆるみを感じるのであれば表情筋のトレーニングを、汚れや黄ばみが気になるようなら歯科医でクリーニングや、ホワイトニングを受けるなど、積極的にオーラルケアすることで、口もとの美しさを手に入れられます」
少し意識したり、ケア次第でいくらでも変えることができる口もと。健やかな口腔環境をゲットしよう!
口腔ケアQ&A
知っているようで意外と知らないオーラルケア。デンタルケアの取り入れ方やエクササイズなど、石井先生のアドバイスを参考に口もとの美しさを目指す!
Q1.マスクオフ時代の口臭ケアについて知りたい!
A.唾液の分泌を促して口内を潤すことが口臭を抑えるカギ
「口臭は、ある意味体調のバロメーター。起床時の生理的なニオイは、歯磨きや朝食をとることで解消できますが、体調が悪かったり、睡眠不足やストレス状態が続くと、やはり口臭が出やすい状態になります。虫歯や歯周病を放置しているのも大きな原因です。また、朝食を抜いたときのランチ前や疲労がたまる15〜17時、緊張などで口腔内が乾いたときもそのリスクがさらに高まる傾向に。ニオイが気になった際は、水を飲んだり、ガムを噛んで唾液の分泌を促して潤すと、口内環境がよくなり、口臭も減ります。あと、女性が特に注意したいのは、"ダイエット口臭"。極端な食事制限をすると体内でニオイのもとをつくり出し、口臭となります」
Q2.ホワイトニングで目指すのは?
A.自分が持っている歯の白さと肌の色に合わせるのが基本!
「人によって理想とする白さは違いますが、クリニックで行うホワイトニングは、自分が持っている歯の白さと肌の色に合わせるのが基準です。現在主流となりつつある『オフィスホワイトニング』は、最初にクリーニングをしっかりと行い、過酸化水素系のジェルを塗布するので、痛みが比較的少なく、フッ素の取り込みを増やしてくれます。定期的に行うことで、歯の白さと強さも両方手に入れることができますよ」
Q3.大人の虫歯対策は?
A.歯ブラシだけでは汚れ落ちは5割。ツールを駆使して
「口腔内は、場所によって重なり合っている歯だけでなく、柔らかな舌と粘膜もあり、複雑な構造をしています。これらの汚れを歯ブラシだけで落とすのは至難の業。ブラシで落とせる汚れは5割程度なので、フロスや歯間ブラシなどを活用しましょう。また、食事と食事の間に、ダラダラと間食を繰り返すのもNG。歯の再石灰化がされないばかりか、口内環境が悪くなり、虫歯や歯周病を誘発しますので注意してください」
Q4.口まわりのゆるみを改善するには?
A.口輪筋のトレーニングで血流を促進して唾液量もUP!
「マスク生活で顔をあまり動かさないことで衰えた顔の下半分ですが、筋肉なのでトレーニングすることは可能。おすすめは『ぴよぴよぷー体操』。
Q5.押さえるべきオーラルケアのポイントは?
A.歯ブラシ、フロス、歯間ブラシの"三種の神器"+歯磨き粉
【歯ブラシ】小回りが利くコンパクトタイプを
基本は自分の口に合うもので大丈夫ですが、ヘッドの大きさが3列くらいのコンパクトなものなら、口の小さな女性でも、細部にわたって磨き残しが少なくなります。1カ月に1本のペースで交換を。
【歯磨き粉】研磨剤不使用の刺激レスタイプをセレクト
刺激が強すぎると磨いた気になってしまいがちなので、あまり泡立たず、低刺激なものを選ぶと丁寧な歯磨きができます。歯磨き前には、30秒ほど口ゆすぎをしておくと汚れが落ちやすくなります。
【デンタルフロス】1日1回の夜フロス使いを習慣に
どんなに丁寧に磨いても、歯と歯の間には届きません。だからこそフロス。フロスは歯肉に深くあてないようゆっくり動かすのがコツ。ワックスでコーティングされているものは使いやすいですよ。
【歯間ブラシ・タフトブラシ】歯肉部分は専用ツールで優しく
歯と歯肉の間の汚れを取るには、先細のタフトブラシや歯間ブラシを使って。ただ何度もゴシゴシやると歯肉を傷めてしまうので、自分に合ったサイズのもので優しく、スッと通過させてください。