H 実は数年前に私のYouTubeチャンネルで、ミョンソンさんにヘアメイクをしていただいたことがあるんです。
M 収録のあと、お食事もご一緒させていただいて楽しかったですよね。
H ほんとに。あれからずっとご活躍を拝見していたので、こうして誌面でセッションできることが本当に幸せ。BLACKPINKさんをメディアやビルボードでお見かけするたびに、ミョンソンさんのことを思い出していました。いつも素晴らしいビジュアルを更新し続けていらっしゃるけど、あのインスピレーションはいったい、どこから?
M 今年は彼女たちのワールドツアーに同行していて、毎日のように顔を合わせていて。日々セッションさせていただいている感じですね。お互いにイメージを持ち寄ったり、なんてことない雑談の中からクリエイティブが生まれることもあるんですよ。
H それ、すっごく気になります。
M ついこの間なんかは、メンバーのジスと目の前にあるウォーターボトルのフタの色がキレイだねって話で盛り上がり、メイクアップに取り入れてみようか、という話になったりして(笑)
H すごくライブ感があって素敵。何より、楽しそうで素晴らしいわ。
M 彼女たちと過ごす日々は刺激に満ちていて、エキサイティングです。
H いいじゃない! あと、ミョンソンさんのスタメンコスメティックスを拝見させていただいて、「やっぱり私たち気が合うわね」って思った。どれも好みのニュアンスカラーばかり!
M やった! お互い、ブラシをプロデュースしている点にもシンパシーを感じません?
H そうよ〜。そして今回はそんなミョンソンさんと私がお互いに秋のベースメイクから導くルックを披露させていただいたんですけど、ミョンソンさんのご提案にはよい意味で期待を裏切られた感じがしたんです。
M 私も、つくりながらヒロさんきっと驚かれるだろうなって思ってました。今回のメイクアップはどちらも、だいぶ軽めの仕上がりになりました。
H そうなの。韓国のベースメイクといえば一点の曇りもないパーフェクトスキンというイメージがあって。季節を越えてもその点は揺らぐはずない、と思っているところがあったから「お! そうくるのね」って思ったの。
M ですよね(笑)。これまでだったら、ホクロもそばかすもすべてのノイズをカバーするのが当たり前だったんです。でも、Y2Kブームが席巻している中で肌を軽めにしないとトゥーマッチになってしまうことに気がついて。それから、日本のタレントさんはどちらかというとナチュラルな魅力を大切にしたメイクアップが多いじゃないですか。長年活躍なさっていますが、蒼井優さんがその代表格のように感じます。彼女のように生まれ持ったものを生かすことの素晴らしさに、韓国の女の子たちも気がつき始めているようです。
H そうなんですね。
M なので、今回は2ルックとも抜け感を意識しながらつくったんですよね。
H 韓国にも新しい流れが来始めてるんですね。そしてきっと、それが世界のブームになっていくんですよね。
M はい。でも、ヒロさんのルックも絶対トレンドになると思います。こんなに正反対なイメージを打ち出せるのも、すごいです。まず、〝血色フォギー肌〟は私が日本のアーティストさんに対して、最もリスペクトしている手法でつくられているように感じました。韓国には化粧に隙をつくるという概念があまりないんです。ちょっと話がそれますが、日本だとまつ毛をカールアップせずに、マスカラを塗ったりするじゃないですか。でも、韓国では常に目指すべき完璧な美があるから、均等なセパレートカールのまつ毛以外考えられないんですよね。その考え方からすると、私から見て、このメイクアップはかなり斬新!
H そうですよね(笑)。日本ではパーフェクトを目指すより、本来持っているアシンメトリーな部分も〝個性〟として尊重するマインドがある。そこが化粧の表現として表れたのだと思う。
M 例えばこの眉は絶対的に未完成だと捉えられてしまう。でも、私からすると、ピンクのニュアンスがきちんと感じられるところに目がいきますね。自然なようでいて、つくり込まれているとすぐにわかりますし。省略するべきところを潔く捨てて、余白を残した美しさを体現する日本のスタイルに素晴らしさを感じるんですよね。それを体現しているこのルックは韓国の子たちも参考にできるんじゃないかな、と思いました。
H そんなふうにくみ取っていただけて、うれしいです。
M 〝シャープなツヤ肌〟のほうはスモーキーなアイメイクと肌のバランスが絶妙でやっぱりさすが。このカーキのアイシャドウを私たち韓国人の普段のメイクアップに合わせたら、「やりすぎ」って思われちゃうと思うんです(笑)。ふんわりとした光を感じるマット肌なら、こなれた印象になりますよね。ちなみにヒロさんはどうしてこの二つの肌を選んだんですか?
H 私は、今持つべきなのはツヤを秘めたマットな肌と、リアリティを帯びた「チル&モード」な毛穴レス肌だと思っていて。というのも、今ってSNSを大前提とした、デジタル時代ですよね。写真写りが完璧なマット肌を、一つはご自身のお化粧のレパートリーに加えるべきだと思うんですよ。
M マットな肌って写真写りが格段によくなりますもんね。韓国人がマットな質感が好きなのにはそういう理由もあると思います。
H でも、普通のマットだとどうしても圧迫感が出てしまうから、必要な場所にツヤを仕込んでいただきたくて。
M なるほど。それが日本人が得意とする〝抜け感〟にもつながりますね。
H そしてもう一つ推したい「チル&モード」な肌。SNSでも、ライブ配信を始め、リアルを見せるシーンが増えていますよね。そこに対応できる肌だと思うんです。クマやほうれい線を全部消すより、少しは残っているほうがリアルで美しい、という前向きな解釈も浸透してきていると思いますし。
M 誰かと実際に顔を合わせるときは鉄壁のベースメイクより自然なムードがあるほうが好印象ですしね。
H そうなの。そしてどちらの肌にも利点はあるから、TPOやその日のファッションで肌を着替えられるセンスを持っていることが重要ね。
韓国コスメに負けず劣らず日本のプロダクトをレコメンド
H それにしても、最近のベースメイク製品ってどれも素晴らしいものばかりですよね。日本は韓国コスメが好きな子であふれていて。実際、本当に魅力的な商品ばかりじゃないですか。私たちプロのメイクアップアーティストも現場で取り入れることが多いんですが、韓国の方から見て魅力的に映る日本のベースメイク用プロダクトってあるんですか?
M ありますよ! ちょっと前に、RMKの「リクイドファンデーション フローレスカバレッジ」を使ってみて「アジア人の肌に本当にぴったり!」、と感動してしまいました。とても薄づきなのにカバー力があって、最近のトレンドにもマッチしていますよね。ちなみに、韓国ではやはり、エスティ ローダーの「ダブル ウェア ステイ イン プレイス メークアップ」が引き続き人気なんですけどね。
H まだまだマット肌の勢力が主流ではあるんですね。
M 抜け感のあるラフな肌に注目が集まり始めているものの、マットの根強い信者がいるのも確かです(笑)
H でも、春夏と秋冬シーズンで抜け感の定義が違いませんか? ニットやアウターに袖を通すとき、あまりに肌が軽いとチープに映ってしまう。だから、それなりの重さを意識した中に抜け感を宿すのが重要なのかなと。そのほうがファッションも思う存分楽しめると思うんです。
M それ、私も共感です。そんなベースメイクを実現するための、ヒロさんおすすめのアイテムはありますか?
H なんだかんだ、クリームファンデーションがいいんですよね。
M クリームファンデーションというと、ハイカバーな印象ですが……。
H もちろんそうなんですけど、ここでご紹介するSUQQU(12)とエスト(13)はどちらもカバー力がありながらもフィット感が高くて、テクニックいらずで軽やかさも演出できるんです。ツヤを潜ませるための下地(11)や、フェイスパウダー(15)も欠かせないわ。あと、そんなにつくり込みたくない日におすすめなのが、ベアミネラルのクッションファンデーション(14)。
M 薄づきですね。
H でも、スッピンが格上げされる感じがしませんか?
M 確かに、いいですね!
H それにしても、ビューティトークって本当に尽きないわよね。話し足りないから、場所を移しましょ! それでは、皆さん、ごきげんよう。