香水ジャーナリスト YUKIRINさんに聞く。今欲しいのは、イチジク&お茶の香水
ここ数年、ベストセラーとなっているイチジクとお茶の香り。長く展開されてきた香調でありながら、近年盛り上がりを見せている理由は? 歴史とともに、人気の理由を探る
香水・香り製品を専門に、女性誌などのメディアで記事を執筆。古今東西を問わず、多様なフレグランスの知識を持ち、コンサルティングやイベントプロデュースなど幅広く活躍。
精油のフレグランスが次々に登場。心整う、香りの秘密
ウェルビーイングを手助けする香水も増えている!アロマの力を取り入れて、日々心地よく過ごしていくためのヒントを、精油療法のスペシャリスト・加藤広美さんに教わった
香気を深く吸い込んで、自分自身と対話して ー加藤広美さん
「コロナ禍では、情報が錯綜して本質が見えづらい世の中でした。情報過多によるストレスや、社会の不安定さに振り回されないよう、今の自分に向き合うマインドフルネスを実践する人が増えたのではないでしょうか。香
水は外に向けて自己表現するものですが、自分自身を捉え直す内省の意味から、アロマテラピーに興味を持つ人も増えています。実は香りの力は、心身と密接な関わりがあるんです。嗅覚は、脳内で感情を司る部位に直通している。直感に訴えかけるので、好きか・嫌いかなど、匂いの感じ方にパーソナリティがはっきり出ます。また、記憶を司る部分である海馬にも密接なので、思い出に残りやすく、過去が呼び覚まされやすいのも特徴。香りの感じ方は嘘をつけず、そのときの自分の状態を映す鏡。女性ホルモンの状態や、疲れ・ストレスによっても、欲する香調は変わってきます。
たとえば、落ち込んでいるときはシトラスを。明るさの象徴であり、爽やかな気分にしてくれます。女性ホルモンによる不調には、フローラル系がおすすめ。生理で気持ちが落ち込んでいるときは、ローズやネロリがよいでしょう。逆に、リフレッシュしたいときは、ハーバル調を。ペパーミントやバジルなどの葉の香りは、胸を開いて呼吸を整える効果があります。疲れているときには、ウッディノートが最適。安らぎを求めているとき、安定感を持って支えてくれます」(加藤さん)
英国IFA PEOTセラピスト、THENN AROMATHERAPY主宰。精油療法士として、心身の健康をケアするためのパーソナルブレンドを行う。
香水に、先入観はもういらない。新しいメンズフレグランス
男性だから、女性だから……といった概念は、香水の世界でも打ち破られている。ジェンダーの垣根を軽やかに飛び越える、多彩な香りが次々と誕生。特に、進化したメンズフレグランスに注目だ
甘くまろやかに進化する、ゲームチェンジャーが続々 ーYUKIRINさん
「最近は、メンズが自分の香りの好みに正直になったと思います。たとえば、フローラル系が男性に売れていたり、逆にシャープでピリッとしたフレグランスが女性に売れているという話も聞きますね。その背景には、ブランドの打ち出す世界観への共感から、購入する人が増えていることがあると思います。たとえば音楽がテーマになっていたり、ストーリーが込められていたり。ニッチフレグランスを発端に、香水は芸術化。アート作品に性別がないのと同じように、誰もが手に入れたいものとして位置づけられるようになりました。
そんな中、メンズフレグランスのトレンドにも、変化が。顕著なのが、男性的なパフュームの象徴とされた、フゼアノートです。爽やかなハーバル調が印象的ですが、それが柔らかくなった"モダンフゼア"が新しい。そもそもフゼアが生まれたきっかけが、19世紀に出たウビガンの『フジェール ロワイヤル』。発売当時のものは存在しないのですが、近年リニューアルして登場しました。フレッシュながらまろやかさもあり、まさに"モダンフゼア"と言うべき、現代的な香りですね。新作も、甘さや華やかさを取り入れたものが多いです。
香水は、他人への自己演出を飛び越えて、自分の内なる個性やアイデンティティに向き合うための存在に。フェミニニティを解放したい日もあれば、マスキュリニティに惹かれる日もあります。心の声に耳を傾けて、自分の一本を探してみたいですね」(YUKIRINさん)







