なりたい肌から考える、2024春夏【ベースメイクアップ】案内

新しい季節の訪れで、洋服を新調するように、ベースメイクアップも颯爽と着替えたい。この春ならではのトレンドを反映しながらも、パーソナルな魅力が際立つ肌とは?肌の陰りさえ個性に変換してしまう、ポジティブなセンスと確かなテクニックを持つ松井里加さんがレクチャー。

眩い光と血色を含ませて、立体感まで際立つ肌へ

メイクアップアーティスト 松井里加さんが語る。この春、目指すべきベースメイクアップ

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_1
シャツ¥44,000・ジャケット¥82,500/オーラリー

「今回は、質感の異なる3パターンの〝なりたい肌〟を提案しました。中でもこの春のベースメイクアップの象徴となるのが、血色が溶け込んだフレッシュなツヤ肌。ツヤは生命感の源であり、人を本能的に惹きつけるもの。2024年春夏のミラノコレクションでも、骨格に沿った立体的なツヤ感やオレンジ色のチークを天然の血色のようにぼかしこんだルックが印象的でした。究極の理想は、「まるで素肌」のような、ごく自然なツヤと赤ちゃんを連想させる血色感を備えた肌。実際に素肌のままで勝負するのは難しいけど、ちょっと手を加えれば、理想の肌を再現することができます。

また、どんな質感の肌でも極めて大切なのが、透明感。その人自身の内面が透けて見えるような、生き方の芯が感じられるような透明感のある肌こそ、今の時代を生きる大人にふさわしい。内面的な魅力を高める方法のひとつは、自分に自信を持つことだと思います。そして肌に対する自信は、日々の地道な努力の積み重ねによってのみ、高めていけるもの。たとえば、毎朝ローションパックをする、表情筋トレーニングを習慣にする、ちょっと質のいい素材のスキンケアに投資してみるなどなど……。小さなことでもコツコツ続けることで、肌の状態もマインドも洗練されて、ベースメイクアップとの向き合い方も変わってくるはずです」

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_2
2024年春夏のコレクションから。BALLY(右)は額や鼻筋など骨格に沿ってハイライトを入れ、ふんわり広く入れたチークで自然な血色感を演出。TOD’S(左)は素肌を生かしてスーパーナチュラルに。ともにポイントメイクのカラーは色みを抑え、肌や骨格の美しさを際立てていた

カバー信仰を手放すことが  新しい肌への入り口に

「年を重ねるほど隠したい肌悩みが増えていきがちですが、大人こそ厚塗りは避けて、カバーはミニマムに。決してすべてを覆い隠そうとはせず、クマもシミもほんのり透けて見えるくらいのほうが、自然体で素敵に見えます。気になる肌悩みはあるけど、それもすべて受け入れることができる人は、チャーミングでオープンマインドな余裕が感じられます。逆に、躍起になってクマを塗りつぶそうとするのは、かえって逆効果のときもあるかも。仕上げのパウダーのつけすぎも注意しましょう。パウダーをたっぷりはたけば色ムラや毛穴などの肌のアラは隠せますが、粉っぽさが増すほど逆に老けて見えますし、不機嫌そうにも見えてしまうことがあります。

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_3
1 スキンケアのように、豊潤な潤いと輝きを。シェイド アンド イルミネイト ソフト ラディアンス プライマー SPF 25 SPF25・PA++(30㎖)¥12,100/トム フォード ビューティ 2 テカリも毛穴も気にならないソフトマットな肌に。アンリミテッド マティファイング ポアレス プライマー SPF25・PA+++(30㎖)¥5,720/シュウ ウエムラ

今シーズンのカギとなるツヤ感は、過剰なカバーや厚塗り欲求も抑えます。ツヤがあればくすみの印象も飛ぶし、肌ノイズから視線を逸らすことも可能。ツヤを上手に操ることで、透明感を損なうことなく、視覚的にもハリと若々しさをアップすることができるんです。まずは下地でツヤのベースをつくり、必要に応じてハイライターを足していくといいですね。トム フォード(1)のように、みずみずしいツヤを与えてくれる美容液タイプの下地を持っておくと、肌づくりの幅が広がります。ツヤのあるファンデーションを重ねてもいいし、あえてマットなファンデーションの下に仕込んでも。1枚のフィルターの奥からフワッと漏れ出るようなやわらかなツヤと、春らしい軽やかさも演出できます。一方で、マットな質感のシュウ ウエムラの下地(2)は、パウダーをつけすぎてしまう人におすすめ。あらかじめ下地でテカリを抑えておけば、肌がサラッと落ち着き、パウダーで仕上げる必要がなくなります。

このような個性豊かな下地をはじめ、今シーズンの新製品はとにかく密着力に優れ、肌になりきるかのようにピタッと薄膜状に仕上がる技巧派が揃っています。ファッションや季節の移り変わりに合わせて、テクニックもアイテムもマインドもアップデートして、新しい肌で春を迎えましょう」

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_4

「こんなにツヤッツヤでいいの?と驚くような発光感と、まるで恋に染まったような血色感。生命感と新鮮さに満ちた、春のはじまりにぴったりの肌です。チークまでもベースメイクアップの一環と捉えて、ファンデーションの前に仕込むこと、意外なくらい広範囲にのばすことが、リアルな血色を装うポイント。ツヤの効果で肌のアラも目立たせず、薄づきなのに整った印象の肌に。額だけはツヤを控えめにすると、軽やかな抜け感が残ります」

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_5
3 潤いを与えながら、艶やかなベール膜を形成。エッセンス スキングロウ プライマー SPF25・PA++(30g)¥5,280/SHISEIDO 4 マルチユースなリキッドハイライター。眩いほどの輝き。ディオールスキン フォーエヴァー グロウ マキシマイザー ピーチー ¥5,940/パルファン・クリスチャン・ディオール 5 贅沢なスキンケア成分が、にじみ出るようなツヤを演出。プリズム・リーブル・スキンケアリング・グロウ・クッション SPF45・PA+++(12g)全6色 ¥9,240/パルファム ジバンシイ[LVMHフレグランスブランズ]

How To Make-up

素肌のツヤを補うよう、3の下地を全体に薄くのばす。4のリキッドは「T字」に入れる。チップで「T」を描くように、目の下から指1本分下の位置に横線を、その中央から下に向かって縦線を引き、指でぼかし広げる。5はつけすぎに注意。クッションにパフを1回押しつけた量で、顔の中央&片側の頰を仕上げる。額はパフに残った分で軽く押さえる程度に。

ラグジュアリーに格上げする、唯一無二のシルキー肌

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_6
シャツ¥616,000・ニット¥858, 000(ともに予定価格)/プラダ クライアントサービス(プラダ)
なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_7

「ラテックスを思わせる、人工的な肌感。従来のマットとは一線を画す、新しい質感のファンデーションを主役にしました。肌に吸いつくようにピタッと密着するので仕上げ用のお粉は不要で、血色もあえてレスに。赤みが気になる部分はブルー系の下地でカバーして、ほのかなツヤも忍ばせました。シンプルな肌ながら、濃厚な色の口紅も受け止める上質さもあり、ラグジュアリーな服とも好相性。モード好きな人こそハマるルックです」

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_8
1 バイオレット&ブルーのパールが肌を補整しながら、やわらかなツヤをプラス。スキンプロテクター ソフトグロウ 001 SPF40・PA+++(30g)¥4,180/ADDICTION BEAUTY 2 美肌フィルターで加工したような美しさを追求。スキンケア成分を高配合し、肌表面はスルッとなめらかに保ちながら、内部では潤いを保持。リヴィール スキン ファンデーション SPF17・PA+++(30㎖)全8色 ¥10,450/プラダ ビューティ 3 ほどよい薄さと、しなやかな毛質が決め手。#190 ファンデーション ブラシ ¥7,040/M・A・C

How To Make-up

肌の赤みやくすみは、ファンデーションを厚塗りしてカバーするのはNG。気になる部分は1のブルー系の下地をごく薄くのばし、色ムラの存在感を弱めておく。2のファンデーションは、3のブラシの面を使って薄く塗る。顔の中央から外側に向かってスーッと広げていくと自然にグラデーションができ、顔立ちにもメリハリが。

素肌のような生っぽさに、立体的な躍動感を添えて

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_9
なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_10

「何も塗っていないかのようにナチュラルなのに、毛穴やくすみは目立たない。そんな理想を一本でかなえてくれる高機能下地は、時短にも役立つ頼もしい存在。ただ、大人の肌としてはそれだけでは物足りない。そこで、薄づきのコンシーラーを両頰から鼻をつないだゾーン一帯に広げて骨格を立たせ、立体感をプラスしました。このゾーンがきれいだと、肌全体がきれいな印象になるので、一石二鳥。粉感が出ないよう最小限のお粉で仕上げています」

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_11
4 肌タイプやジェンダーを問わずフィットする、新感覚の色つきベース。スッと肌に溶け込み、フォギーなツヤを宿す。スムースオペレーターハイパフォーマンスクリーム SPF50+・PA++++(30g)全3色 ¥4,620/THREE 5 ハイカバーなのに、心地よく薄膜状にフィット。自然な光沢があり、立体感も巧みに表現。ひと塗りで適量をかなえるアプリケーターも秀逸だ。オールアワーズ コンシーラー LN1 ¥5,940/イヴ・サンローラン・ボーテ 6 素肌そのものを美しく見せる、シースルーマットな質感。極上のシルクのように肌になじみ、粉感を残さない。ルース パウダー 06(20g)¥6,050・7 ふんわり粉を抱え込み、薄く肌にまとわせる。ブラッシュ ブラシ ¥4,400/コスメデコルテ

How To Make-up

4の下地は自分の肌に近い色を選ぶか、数色を混ぜて調整。顔の中央から外側に向かって、指でのばす。5のコンシーラーは頰の高い位置にスッスッと短い線を描くように入れて、頰から鼻を通って横長に広げる。6のお粉を7のブラシに含ませ、余分な粉を十分に払ってから、額や小鼻などテカリを抑えたい部分だけにのせる。

RIKA MATSUIプロフィール画像
RIKA MATSUI

その人が持つ本来の美しさを生かしたベースメイクアップが得意。自身のスキンケアブランド「セラリー」も、肌の透明感と内なる輝きを引き出すことをモットーに展開。

この春の"なりたい"をかなえる、私の推し肌・推しアイテム

卓越したセンスや独自の美学を携え、個性のあるメイクアップを楽しむ4人。この春の肌を託す、精鋭だけをピックアップ

石井美保さん

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_12
(右から)薄膜&高密着が特長。軽やかなナチュラルマット肌が続く。SPF48・PA++(30㎖)全14色 ¥7,590/ランコム 粉感や厚みを感じさせず、ピタッとフィット。小回りのきく極細チップも優秀。(4g)全4色 ¥1,320(編集部調べ)/コーセー

シンプルだけど品がある モダンな高級感を演出

―――― 石井美保さん(美容家)

キープロダクト

【LANCÔME】 タンイドル ウルトラ ウェア リキッド N
【Visée】 エクストラ スキニー コンシーラー

「ファッション界のクワイエット・ラグジュアリーの流れをくんで、主張しすぎず、気負いすぎず、でも洗練されていて美しいと思える肌にしたいと考えるように。また、最近気に入っている、色みを抑えたメイクアップとのバランスも考慮し、これまでのツヤツヤ肌から新しい質感にシフトしました。そこで選んだのが、ランコムのリキッド(右)。1日中、崩れも乾きも気にならず、究極の薄膜で見た目もつけ心地も軽やか。ヴィセのコンシーラー(左)は、ファンデーションの前に目の下に薄く仕込んでいます。ほどよい肌止まりで狙った部分を的確にカバーでき、粉っぽさもゼロ。どこに塗ったかわからないぐらい、肌と見事に一体化してくれるので、ベースメイクアップのクオリティが格段にアップします。価格を超えた、高い価値と機能性を誇る名品」

高瀬真奈さん(モデル)

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_13
(右)クリアなツヤと光を生み出し、メリハリ感も演出。SPF22・PA++(30g)全5色 ¥7,700/アモーレパシフィックジャパン (左)あらゆる毛穴をカムフラージュ。しなやかに密着し、毛穴落ちもしにくい。(13g)¥1,870/常盤薬品工業

ケアの成果が透けて見える、毛穴レスなセミマット肌へ

―――― 高瀬真奈さん(モデル)

キープロダクト

【HERA】 グロウ ラスティング ファンデーション
【SANA 毛穴パテ職人】 毛穴崩れブロックパウダー

「この春は揺らぎに負けないようにスキンケアにも力を入れて、素肌の美しさを高めたい。そしてそのきれいさを活かせる透明感と、クラシックなカラーメイクアップが映える上質さを兼ね備えたセミマットな肌が、今シーズンの目指すところ。そんなニーズにピタリと合ったのが、HERAのリキッド(右)。毛穴を目立たせず、軽やかなのにお直しがいらないほどの持ちのよさ。Tゾーン、鼻筋、目の下から頰の高い部分などのハイライトゾーンを中心にのせ、ブラシで広げてから、スポンジで叩き込むと、薄づきかつ素肌美が際立つ仕上がりに。毛穴パテ職人のパウダー(左)は、コスパも機能性も抜群。コンシーラーの上に薄く重ねると、ヨレを防ぎつつカバー力も補強してくれます。結果的にコンシーラーも薄づきで済むようになり、全体の印象が軽やかに」

GYUTAEさん(美容クリエイター・メイクアップアーティスト)

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_14
(右から)プロのメイクアップアーティストと共同開発。全体の86%が美容液成分で、素肌もみずみずしく保つ。(30㎖)全14色 ¥6,490・余分な皮脂を吸着しながら、毛穴をぼかす。水、汗、擦れにも強い。(18g)¥5,940/メイクアップフォーエバー テカリも乾燥も防ぎ、どんな環境下でも崩れを防止。美容液成分も配合。SPF50+・PA++++(25㎖)¥2,970/マキアージュ

崩れないことは大前提! 今は美容成分が決め手に

―――― GYUTAEさん(美容クリエイター・メイクアップアーティスト)

キープロダクト

【MAKE UP FOR EVER】 HDスキン ハイドラ グロウ ファンデーション
【MAKE UP FOR EVER】 HDスキン セッティングパウダー D0.2
【MAQUillAGE】 ドラマティックスキンセンサーベース NEO ラベンダー

ありのままの素肌から二次元レベルの麗人に変身するテクニックを披露し、鉄壁のカバー力と崩れにくさを両立した肌づくりにも定評があるGYUTAEさん。「以前はきっちりマットに作り込むのが定番でしたが、最近はストレスのない使用感を重視し、美容成分入りのファンデーションに注目。メイクアップフォーエバーのリキッド(右)が、まさにそれ。プロ仕様のカバー力と崩れにくさを備えつつ、のびもよく軽やか。同ブランドのパウダー(中央)は粒子が細かく、皮脂を継続的に吸収。『満月』というオリジナルの手法で、顔全体に大量につけてからブラシで余分な粉を払って仕上げると、アイラインや眉のにじみや消えも防げます。マキアージュの下地(左)は、崩れにくいのに高保湿。黒髪にしてからトーンアップ効果の高いラベンダーカラーを選ぶように」

森山和子さん (ビューティエディター・ライター)

なりたい肌から考える、2024春夏【ベーの画像_15
(右から)ソウル発のクリーン&ヴィーガンブランド。しっとり密着し、健康的なシルキー肌に。SPF50+・PA++++(15g)全4色 ¥2,970/アミューズ スキンケアした直後のような潤いと透明感をひと塗りで。SPF22・PA++(30㎖)¥4,400/RMK Division

ツヤ感で一歩先を行く韓国コスメも取り入れて

―――― 森山和子さん (ビューティエディター・ライター)

キープロダクト

【AMUSE】 デューパワーヴィーガンクッション
【RMK】 ルミナス メイクアップベース

韓国美容にも詳しい森山さんは、化粧品もマーク。「私の理想の肌は、自然なツヤとハリのある肌。肌にツヤがあると、自分の印象までもポジティブに見えるんです。ツヤ肌のパイオニアである韓国のベースメイクアップは、製品によってツヤの表現がさまざま。色の展開も日本とは違うようで、もともと黄み系やオークル系の色が主軸の日本に対し、韓国はピンク系が豊富。黄み系の色でもバニラアイスのように明るく、クリアな肌に見せてくれる絶妙な色が多いので、塗ったときのテンションの上がり方が全然違うんです! AMUSE(右)のメッシュクッションも期待以上の実力派で、均一な薄膜カバー力とみずみずしさにびっくり。国産ブランドのRMKの下地(左)は肌に生命力を宿し、ライブリーな印象を底上げ。寝不足でも疲れが見えない肌を偽装できます」

FEATURE