「発酵」が肌にもいいのは、肌の土台を整え、肌自体を活性化させるから
発酵を取り入れたスキンケアについてもっと知りたい! ということで、発酵成分を活用した話題のスキンケアアイテムを開発・発売されている3社にアプローチ。昨年下半期、発酵コスメ市場に参入し話題をさらった「良品計画」。米発酵の力=ライスパワー®︎を活用し、さまざまな肌悩みを根本から解決するアイテムをリリースし続ける「コーセー」。そして、スキンケアにおける乳酸菌の可能性を探り続けてきた「ヤクルト」。発酵スキンケアの基本から、肌悩みごとの発酵成分の選び方まで教えていただいた。
ヤクルト 湘南化粧品工場 開発課 主任研究員森田 明里さん
乳酸菌を活用した化粧品の開発に携わり、「ラクティフル」の開発では「ヤクルト」のような香りやボトルにこだわった。
コーセー 研究所 皮膚・薬剤研究室 主任研究員平 昌宏さん
皮膚の仕組みと美容成分を長年研究し、多くの商品を世に送り出してきた。開発した化粧品の効果を試験で実証することが何よりも楽しみ。
良品計画 生活雑貨部 H&B担当 カテゴリーマネージャー 鳥川 行雄さん
無印良品のスキンケアやヘアケア、メイク用品などの商品企画を担当。シンプルで分かりやすい、考え抜かれた商品のネーミングも、社内のメンバーで考案している。
Q1.売り切れが続いた無印良品の〈発酵導入美容液〉。なぜ発酵成分を配合?
昨年8月の発売後、オンラインでも店舗でもSOLD OUTが続き話題を集め、“発酵コスメ”の注目度アップに貢献した、無印良品の〈発酵導入美容液〉。運よく手に入れた人たちの間で、「何をつけても潤わなかったのに、これをつけたら乾燥知らずに!」「つけてすぐに肌がふっくら、モチモチする!」と瞬く間にレビューが増え、ますます人気に拍車が。そんな〈発酵導入美容液〉は、米ぬかを麹菌で発酵させた成分がベースだけれど、なぜそれを配合しようと考えたのだろう?
「敏感肌シリーズが20数年ぶりにリニューアルするにあたり、無印良品のケアアイテムはどうあるべきか考えました。世代、ジェンダー、国籍を問わず安心して使っていただけるよう、天然由来成分100%にしていこうと方向性が固まり、その中で古くから日本でも美容に使われていて、肌への効果もしっかり認められている『米ぬか』に着目。さらに、より肌への効果を高めるために、そのまま配合するのではなく、発酵させてから配合することにしました」(良品計画 鳥川さん)
Q2.そもそも、化粧品に含まれる発酵成分ってどうやってできる、どんなもの?
化粧品に配合されている発酵成分とは、「米ぬか」や「豆乳」、「牛乳」などの天然成分を、「麹菌」や「乳酸菌」などの菌で発酵させたもの。
「菌は天然成分をエサとして食べ、代謝物を生み出す働きをしています。その働きのうち、人間によってよいものができる場合を『発酵』よくないものができる場合を『腐敗』と呼んでいます。菌がつくった代謝物の中から働きを終えた菌を取り出し、肌にいい働きをする成分だけを抽出したのが、発酵成分です」(ヤクルト 森田さん)
Q3.天然成分にも美容効果があるのに、なぜわざわざ発酵させるの?
例えば「米ぬか」は、お米からお酒をつくる杜氏の手がキレイ、ということで、スキンケアアイテムに古くから使われているし、「豆乳」も、抗酸化力が高いポリフェノールが配合されたイソフラボンを含み、美肌効果が期待できると言われている成分。天然成分のままでも肌にいいのに、なぜわざわざ発酵させるのだろう?
「発酵させることで天然成分に含まれる栄養素が格段に増えたり、細胞に働きかける機能的な成分がたくさん生まれたりすることがわかっています。私は発酵成分だけでなく、さまざまな成分を研究しているのですが、発酵することによって生まれる成分は、人工的にいろいろな成分をかけ合わせても作れないほど複雑で、魅力的な成分といえます」(コーセー 平さん)
「発酵する過程でさまざまな代謝物がつくられるので、天然成分のままでは存在しなかった成分が生まれたり、新しい効果が得られたりします。また、天然成分が持っていた成分を、よりよい状態に変えてくれることもあります。例えば豆乳に含まれる不活性型のイソフラボンは、乳酸菌で発酵すると変化。活性化して効果を発揮するようになります」(ヤクルト 森田さん)
Q4.発酵成分は肌にとって、どんな効果が期待できる?
ざっくりと「発酵することでそれぞれの成分のパワーがアップする」ということがわかったけれど、具体的に肌にどういいのかも知りたい!
「『米ぬか』自体、ビタミンやミネラル、肌の保湿に欠かせないアミノ酸が豊富なのですが、発酵させることで特にアミノ酸の量が増えることがわかっています。アミノ酸は肌のうるおいを守っている天然保湿因子(NMF)の構成成分。発酵する前よりも発酵したあとの成分を配合する方が、より保湿効果が高まるというエビデンスもあります」(良品計画 鳥川さん)
「米を発酵してつくられる成分には、NMFの40%を占めるアミノ酸や、保湿に欠かせない糖類、細胞に指令を与えて活性化するペプチドなどがたくさん含まれます。これらが肌細胞に働きかけて肌が本来持つ機能をアップさせたり、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促したりもでき、保湿力を高めることができます」(コーセー 平さん)
「牛乳を乳酸菌で発酵すると、アミノ酸や乳酸がたくさんつくられるのですが、これは肌のNMFの約半分を占める成分。これを補うことができるので、高い保湿効果が続きます。また、保湿成分として知られるヒアルロン酸、以前はニワトリのトサカから抽出されることが一般的でしたが、今は乳酸菌でも作れるようになったんですよ」(ヤクルト 森田さん)
Q5.肌悩みごとに知っておきたい、発酵成分の選び方はある?
天然成分を発酵させることによって、高い保湿効果が期待できるアミノ酸やヒアルロン酸が増えて「しっかり保湿し、肌の土台を整える」ことができたり、ペプチドなど細胞に働きかける成分が作られて「肌そのものを活性化できる」のが発酵成分。それを踏まえて、肌悩みに応じた発酵成分の選び方も聞いた。
「悩み別に取り入るというよりは、毎日のベーシックなスキンケアに取り入れるのがおすすめです。とはいえ、乳酸菌は角質をやわらかくする乳酸をつくってくれるので、肌のゴワつきやキメの乱れが気になるときに活用するのもいいですよ」(ヤクルト 森田さん)
「米の発酵液である『ライスパワー®︎』には、表皮細胞に働きかけてセラミドの産生を促し、肌の水分保持能を改善する成分(ライスパワー®︎ No.11)や、コラーゲンの産生を促進したり、分解を抑制したり、基底膜の成分に働きかけてシワを改善したりする成分(ライスパワー®︎ No.11+)、そして過剰な皮脂の分泌を抑制する効果のある成分(ライスパワー®︎ No.6)もあるので、肌悩みに合わせて選ぶこともできます」(コーセー 平さん)
発酵成分を取り入れると、肌自体のボトムアップが期待できそう! ということで、早速取り入れてみたいけれど、発酵系スキンケアと一口にいえどさまざまなブランド、製品が。それもそのはず、発酵する天然成分、発酵させる菌、さらには発酵条件の組み合わせ次第で発酵成分は無限に作れるのだから! そのため、おすすめの一部ブランドをご紹介。発酵スキンケアを始める際の参考にチェックして。
【ONE BY KOSÉ】セラム ヴェール、バランシング チューナー、セラム シールド、
〈セラム ヴェール〉
●配合されている発酵成分
ライスパワー®︎ No.11
●こんなお悩みに
乾燥や肌荒れなど、なんとなく不調がち
“うるおい成分を与え、乾燥を防ぐ”という一般的な保湿ケアの一歩先を行き、 “肌の水分保機能を改善する”効果が認められた、ライスパワー®︎ No.11を配合。肌の中でうるおいを抱え込む「細胞間脂質」の半分以上を占めるセラミドは、保湿に欠かせない成分。ライスパワー®︎ No.11によって、その量だけでなく密度も上げることで、“肌の水分保機能の改善”を実現。
〈バランシング チューナー〉
●配合されている発酵成分
ライスパワー®︎ No.6
●こんなお悩みに
皮脂が多く、テカリが気になる
皮脂腺に直接働きかけ、その肌の皮脂量に応じて油水分バランスを整えてくれるライスパワー®︎ No.6により、皮脂量は調整しつつ、乾燥しにくい肌に。皮脂を取り去ったり、抑えたりするだけの瞬間的なケアではなく、過剰な皮脂分泌が起こらないように根本からコントロールすることで、テカリの少ない肌へと導く。
〈セラム シールド〉
●配合されている発酵成分
ライスパワー®︎ No.11+
●こんなお悩みに
乾燥やシワが気になる
前述の、“肌の水分保機能を改善する”ライスパワー®︎ No.11に、シワ改善の効能がプラスされた、ライスパワー®︎ No.11+が配合された、高保水密封バーム。肌の表皮、基底膜、真皮にアプローチし、セラミドやコラーゲンの産生を促進することでシワを改善。うるおいをしっかり密封するバームでありながら、みずみずしくベタつかないテクスチャーとハリツヤ仕上がりはやみつきに。
コーセー
kose.co.jp/onebykose/
0120-526-311
【ラクティフル】モイストアップ ローション、モイストアップ ミルク
●配合されている発酵成分
高浸透乳酸菌エキス ※乳酸菌発酵エキス、乳酸菌発酵ヒアルロン酸(すべて保湿成分)
●こんなお悩みに
乾燥ケアを中心とした、肌全体のボトムアップをしたい
乳酸菌の働きによって生まれた成分がスーッと肌に馴染んでいく「乳酸菌発酵エキス」と、濃密ヒアルロン酸と浸透ヒアルロン酸を混合し、肌表面をうるおいのヴェールで包み込む「乳酸菌発酵ヒアルロン酸」を配合。その二つを合わせた「高浸透乳酸菌エキス」は、角質層までの高い浸透力と水分保持力によって、乾きがちな肌をスピーディに満たし、ふっくらもっちり肌に仕上げる。ドリンクの「ヤクルト」を思わせるほんのり甘酸っぱい香り。
ヤクルト本社
https://www.yakult.co.jp/cosme/lactiful/
0120-8960-81
【無印良品】発酵導入美容液、発酵導入化粧液
●配合されている発酵成分
米ぬか発酵液
●こんなお悩みに
乾燥肌かつ、化粧水の浸透具合に満足できていない
〈発酵導入美容液〉は、米ぬか発酵液を配合成分の65%に配合。米ぬかを麹菌などを用いて発酵させたこの発酵液は、肌にハリとうるおいを与えてくれる。もちろん導入液としても化粧水の前に使用することで、角質層まで保湿成分を行き届きやすい肌に整える働きも。敏感肌用シリーズのリニューアルに合わせて刷新された〈発酵導入化粧液〉にも、米ぬか発酵液、そしてセラミドも配合。化粧液のほうが美容液に比べてライトなテクスチャーと使い心地。
無印良品 銀座
https://www.muji.com/jp/ja/store
03-3538-1311
【SK-Ⅱ】フェイシャル トリートメント エッセンス、スキンパワー アドバンスト エアリークリーム
●配合されている発酵成分
ピテラ™️(酵母発酵成分)
●こんなお悩みに
くすみがちで、全体的な透明感・ハリ感をアップしたい
ブランド独自の酵母発酵から生まれた発酵成分・ピテラ™️は、NMFと同様の成分を抱えている。それゆえ、ピテラ™️を全量の90%以上も配合した〈フェイシャル トリートメント エッセンス〉はじんわり肌に馴染んで肌本来の働きを促進し、潤いを角質層の奥まで届けることによって明るく、ふっくらとした透明肌作りをサポート。一方、〈スキンパワー アドバンスト エアリークリーム〉は肌老化の根本的な原因である、炎症老化プロセスに着目。ピテラ™️に加え、パワフルなキンレンカエキスや、肌にハリを与えるシャクヤクエキスなどを配合することで、エイジングの火種を鎮める。
SK-Ⅱお客様相談室
https://www.sk-ii.jp/
0120-021325
【HACCI】発酵液ローション、発酵液ミルク、発酵液クリーム
●配合されている発酵成分
はちみつ発酵液
●こんなお悩みに
乾燥やくすみが気になる
発酵母液に、花々のパワーが集結されたはちみつを加えた、はちみつ発酵液を配合したスキンケアライン。〈発酵液ローション〉はみずみずしくしっとりしたテクスチャーで高浸透ゆえ、はちみつ発酵液の力をダイレクトに感じられる処方。使用したはちみつは、ラベンダーはちみつ。〈発酵液ミルク〉はふっくらとハリ感のある仕上がりを目指し、角質層のうるおいキープに欠かせないセラミドやNMFにフォーカス。使用したはちみつは、アカシアはちみつ。そして〈発酵液クリーム〉には、角質層のバリア機能を強化すべく、高山に咲くエーデルワイスやカミツレ花のエキスをセレクト。使用したはちみつは、オレンジはちみつ。
HACCI
https://hacci1912.com/
0120-1912-83
【KINS】ブースター、セーラム
●配合されている発酵成分
乳酸菌生産物質(乳酸桿菌/豆乳発酵液)
●こんなお悩みに
肌トラブルが起こりやすく、ゆらぎがち
肌を健やかな状態に整えることを重視し、その働きをサポートする乳酸桿菌/豆乳発酵液を保湿成分として配合した〈ブースター〉。さらにアミノ酸や酵母エキス、米発酵液、米ぬかエキスなどの植物由来成分の力を借りて、うるおいとツヤのある肌に整え、肌トラブルの少ない状態に導く。〈セラム〉も〈ブースター〉同様、肌トラブルの少ない肌を目指し、6種類もの菌や2種のヒト型セラミド等を配合。さらに弱酸性にこだわったフォーミュラで、優しく確かに、健やかな肌へ。
KINS
https://yourkins.com
0120-125-511