ピンクメイクアップの新章
森山 メイクアップのトレンドを語るうえで欠かせないのがコレクションですが、2066SSはどんな流れがきていますか?
早川 全体的なトレンドとしては、ベーシックカラーを基調としたブランドもたくさんありましたが、シャネルやバレンシアガ、ロエベなど久々にいろんなブランドから彩度の高いものが出ているなと感じました。メイクアップでいうと、モデルの人種やその人のキャラクターにあったメイクをしているブランドが多かったように思います。モデルの個性を生かしていて、みんなが同じメイクをしているというのはあまりなく、それも今季らしさのひとつではないでしょうか。特に2026年のキーカラーとなるのが、青みピンク。
Rie クロエなど、80年代のショッキングピンクがモダンにアップデートされたような、彩度の高いピンクのチークやリップが印象的でしたよね。といいつつ、鮮やかな服を引き立たせるミニマルなメイクアップや骨格を生かす自然なシェードを入れたようなブランドもたくさんありました。コレクションからのメイク分析でいうと、彩度の高いワンポイントか、ヌーディトーンの大きく2軸でしょうか。洋服の傾向とも少し似ていますね。
森山 春の新色でいうと、ピンクトーンのアイテムは本当に多かったです。見た目はキャンディピンクだけれど、実際はほんのり透けるように色づくから使いやすい。チークにしてもリップにしてもバキッと色づかないからリアリティがある。プラダのルックみたいに、気配としてじわ〜っときかせるピンクのチークも気になりました。
早川 プラダはその人らしい肌のノイズをあえて残して、メイクアップが前に出すぎない感じも素敵でしたよね。ちなみに今季らしいキャンディピンクのチークを日常に落とし込むにはどうつけたらいいですか?
Rie たっぷりつけず、全体的に薄くなじませるだけで顔の印象を十分もち上げることができます。目の下あたりから頰にのばして、最後に鼻筋、鼻先、あご先にもちょこっとのせると統一感が出ると思います。
早川 さっそくやってみよう。そういえばここに、下地などのベースからカラーメイクアップまで春の新プロダクトがずらりと並んでいますが、肌作りのトレンドも知りたいです。
リアルに叶うバーチャルスキン
森山 肌はどんどんバーチャルがリアルになっている! ディオールのメイクが印象的でしたが、まさにフィルターでエフェクトをかけた肌が現実でかなうようなアイテムが出ています。肌にのせると液状パウダーがサラッと変化して毛穴をブラーにするなど、テクスチャーもユニークなものが話題になりそう。リアルなバーチャルスキンの派生で、偏光パール系のキラキラハイライトもトレンドだと思います。スマホの写真フィルターでかけるエフェクト風の仕上がりがひと塗りで実現するという。
早川 ドリス ヴァン ノッテンにあったみたいなハイライト使い、私も惹かれました。マルチユースのリキッドとかだと、頰や目もとなどどこにでも取り入れやすくていいですね。ちなみに下地もどれがいいのか気になります。
Rie 下地は透明感を出すブルー系がきていますよね。韓国のK-BEAUTYあたりの流れからファンデーションはピンクトーンのものが増えてきていますし、ボッテガ・ヴェネタのショーでも見られたけど、肌は黄みではなく全体的に青み傾向。ピンクの下地であっても肌にのばすと、ブルーのパールがうっすら入っていたりして。
肌のブルーマン化現象
早川 肌のブルーマン化現象! でも、のばすとすごく自然に透明感を引き上げてくれますね。ブルーの下地もピンクのパールを少し感じるので、顔色が悪くなることはなく計算されている。しかも薄づきです。
Rie 自分自身の肌を隠すというより、黄みやくすみをナチュラルにとばしてくれるという感覚です。
早川 肌ってカバーすればするほど、なんだかおしゃれじゃなくなりますしね。
顔のどこかに「もっと光を」
森山 消えてしまいそうなほど、肌を透けさせたい欲がますます加速してますよね。でもそれと個人的に拮抗しているのが、〝生きたい欲〟(笑)。ディープベリーカラーをワンポイントにしてライブリーに見せたいという意味なのですが、スポーツマックスのようにベーシックカラーの服にベリーカラーを差し色として入れるのも素敵だなと思いました。こんなふうに意外性のある遊びの色も、2026年の春ラインナップには多い気がしています。
Rie ディープベリーカラーは、青みの肌がトレンドというところともリンクしますよね。たとえばチークなら、肌に溶け込ませるようになじませて使うのがいいと思います。血色と同時に透明感も出せますし。
早川 なるほど。ちなみにアイシャドウだと、何をチェックしておくべきですか?
Rie どちらかというと今まではベージュやブラウンに代表されるようなコンサバっぽいムードが続いていたので、少しグレーがかったトープのような色が流行る予感。といってもダークなグレーに沈ませたいわけではなく、黄みを消して、いい感じの影を出すためのグレートーンです。カラーブロックのルックを多く展開していたロエベのメイクアップがまさにそんな目もとでした。
自分生かしのツヤ
森山 あと注目すべきは、自分の素材を生かして透けるように色づくツヤアイシャドウ。コレクションを見ていても、たとえばシャネルなど生っぽい質感で素肌らしさがありつつ、ちょっとだけまぶたにツヤを忍ばせる、みたいなルックが多いなと思って。リキッドやジェルの質感で塗りやすいけど、ピタッと密着する新しいプロダクトも登場しますし、そこにラメが入っていたりして「自分の肌生かしのニュアンス」がちょうどよく出せるんです。目もとを囲むように上下まぶたにつけても、めちゃくちゃ可愛い。
Rie 上まぶたにちょっと幅狭めにつけたりしても、絶妙な存在感が出せます。
早川 のせてみるとシアーで想像以上になじみますね。そもそもリキッドアイシャドウっていう存在を知らなかったのですが、モード感もあって素敵。
Rie 唇の色が透けるようなクリアなリップグロスもいいですよね。濃い色でも見た目ほどはつかないから、深い色でもヌーディ系でも。
加速する"スキニマリズム"信仰
森山 この春は顔のどこかに、さりげなくみずみずしい光を宿す人が急増しそうです。
早川 その透けたツヤが生きるのって、きっとスキンケアでちゃんと肌を整えることが大事ですよね。ショーのバックステージにエステティシャンやフェイシャリストたちが入り、モデルのコンディションを整えることが主流になっているという話も聞きました。そういうスキニマリズム(スキンケアとミニマリズムを掛け合わせた造語)も2026年らしさなのかなと。
Rie 今後ますますそういった傾向は増えていくでしょうね。
早川 新しいディオールも、主張しないメイクアップでした。ネイルもあえてバフするだけにしていたみたいで、素爪のように見えるネイルカラーが塗られたそう。
森山 確かに。コレクションのメイクアップは、全体的にリアルな感じに落ち着いてきましたよね。キャンディピンクなどのカラーも気になったけれど、どれも取り入れやすい範囲内での使い方で、いい意味でインパクトが強すぎないメイクアップがメインストリームなのかも。結論、「自分の顔の素材を生かそう」ってことなんでしょうか。
早川・Rie まさに!
森山 では、自分生かしのためにわれわれが選び抜いた新作を次ページから見ていきましょう!