横槍 私が香水にハマったきっかけは、友人と一緒に“概念香水”を探していたことです。キャラクターや作品のイメージに合う香りを見つけたくて、どんどん沼に引き込まれていきました。
中森 それは面白いですね。今回のテーマは香りのレイヤードですが、自分だけの香りをつくるという点では似ているかもしれません。普段から重ねづけはされますか?
横槍 お砂糖のように甘い香りに、お茶系の香水を合わせるのが好きです。でも、自分で組み合わせを考えるのは難しい部分もありますよね。
中森 そうですね。レイヤリングする上で重要なポイントは、「相乗」か「補完」か。主役級のものを二つ重ねると、うまく調和しないので、主役と脇役に分けて考えるといいですよ。同じ部位に2種類重ねると一体感を楽しめますし、手首×首もとなど別の場所につければ、香りに奥行きが生まれます。
横槍 なるほど。絵の具と似ているかもしれないですね。強い色同士だとうまく混ざらない。
中森 「相乗」という考え方では、同じ香調同士で合わせるのがシンプルです。たとえばオレンジ×レモンなど、シトラス系で揃えたり。もしくは、オレンジの香りに、チョコレートのようなグルマンノートを合わせる、という相乗効果もあります。
横槍 おいしそうですね(笑)。
中森 「補完」という考え方だと、温度感や質感を補完し合う、という方法もありますよ。
横槍 香水の温度感というと?
中森 たとえばアンバーやバニラのような香りは、ぬくもりを感じさせますよね。対してミントや柑橘などは、フレッシュな冷たさがある。
横槍 正反対な二つを重ねるんですね。
中森 そういうことです。一方、質感という点では、ソフトなものとハードなものがありますね。たとえばムスクやアイリスなどのパウダリーノートは、やわらかい。そこに、ジンジャーなどのピリッとシャープな質感を合わせることで、異なる要素を補い合うことができます。
横槍 普段つけないタイプの香水でも、重ねることで自分らしくアレンジできますね。
中森 まさにそうですね。さらに、香りの拡散性で選ぶという重ね方もあります。
横槍 広がる範囲ということでしょうか?
中森 はい。香料の分子にはさまざまなサイズがあるんです。香りの成分の分子が小さいほど広がりやすく、大きいほど広がりにくい。たとえばシトラス系のものは遠くまで飛びやすく、香りが残りづらいんです。逆に、ムスクなどの分子が大きいものは飛びづらく、肌の上に残る。
横槍 確かに。近くにいる人だけに香らせたいときはムスク系を選びますし、遠くにいる人にも届けたいときは、フルーティな香りをまとうことが多いかもしれません。異なる距離感で重ねるのは、上級者向けで面白いですね。
中森 さらに上級者には、フレグランスの物語や世界観で重ねづけするのもおすすめ。
横槍 香水の物語に惹かれて購入しがちなので気になります!
中森 今までに説明したテクニックをもとに、それぞれの香りのストーリーやコンセプトをつなげるんです。たとえば恋愛をテーマにしたロマンティックなものを合わせたり、〝パリを舞台にした香水〟など、コンセプトを合わせたり。
横槍 それは素敵! ちなみに、「何にでも合わせやすい香水」はありますか?
中森 「スキンフレグランス」と呼ばれるような、肌そのものに自然に溶け込んでいく香りは万能です。主役級の香水に重ねても調和する。
横槍 色塗りに使う「コピック」のブレンダーに似てるかも? 何でも和らげてくれます。
中森 香りのレイヤリングは、絵を描くことにも近いかもしれないですね。
横槍 香水が画材で、それをもとに絵を描いていくようなイメージ。クリエイティブだし、自分だけの香りになりますよね。長く愛用していた香水に別のものを重ねて、新しい側面を見つけるのも面白い。調香師になったような気分で楽しみたいですね。