世界で初めてゲイであることを公表したインドのマンヴェンドラ王子、転向療法の廃止を訴える

ゲイであることを公表しているインドのマンヴェンドラ・シン・ゴーヒル王子(56)が、自身の経験を語り、インド国内の転向療法の廃止を強く訴えた。

ゲイであることを公表しているインドのマンヴェンドラ・シン・ゴーヒル王子(56)が、インド国内の転向療法(同性愛者への矯正治療)の廃止に向け、決意を語った。

Photo : Getty Images
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世界で初めてゲイであることを公表した王子として知られる、マンヴェンドラ王子。2008年まで同性愛が違法だったインドで、2006年にゲイであることをカミングアウトした彼は今、祖国での転向療法の実施禁止を目指して闘っている。

転向療法(コンバーションセラピー)とは、同性愛者への矯正治療のことで、主に同性愛者を異性愛者に矯正、転換させるために行う一連の行為を指す。2022年3月にはイギリス政府が転向療法を禁止する法案を発表するなど、昨今、転向療法についての議論は世界的に広がりをみせている。

マンヴェンドラ王子がゲイであることを両親に初めて告白したのは2002年のこと。両親はその告白を受け入れられなかったといい、「(両親は)文化的に豊かに育ってきた私が同性愛者であることはあり得ないと思っていました。彼らは、人のセクシュアリティと生い立ちには何の関係もないことを知らなかったのです」と、王子は当時を振り返る。

その後、両親は王子のセクシュアリティを変えようと、医師やスピリチュアルガイドのところへ王子を連れて行ったという。王子は「彼らは私を異性愛者にするために脳を手術するよう医師に頼み、私は電気ショック療法を受けさせられました」と語り、その結果うつ病を患い、自殺を考えたこともあると告白。

また、カミングアウトをした時のインド国内の反応について「私がカミングアウトした日、私の肖像画が燃やされました。多くの抗議があり、人々は通りに出て、私が王室とインドの文化に恥と屈辱をもたらしたと叫んだ。殺害の脅迫もあったし、私の肩書きを剥奪せよ、という要求もありました」と、国民からも大きくバッシングされたと語った。

両親や国民から大きな反発を受けながらも、カミングアウト以降、王子はLGBTQ+の人権を守る活動に積極的に取り組み、2007年にはアメリカの人気番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』に出演、国内外で広く注目を集めることとなる。そして2018年、マンヴェンドラ王子は宮殿を改装し、LGBTQ+の国民のための支援センターにすることを発表した。

Photo : Aflo
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王子は宮殿の改装に踏み切った理由について「宮殿をLGBTQ+の支援センターに変えるという決断は、私が(カミングアウトにより)両親に勘当された経験から思いついたことです」と説明。

続けて、「これは、インドではどのLGBTQ+メンバーにも起こり得ることです。カミングアウトすると異性との結婚を強要されたり、家を追い出されたり、家族から大きなプレッシャーを受けることになる。彼らは居場所がなく、その状況と闘う術もないことが多いのです」と、インド国内でLGBTQ+の置かれた環境の厳しさを指摘した。

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マンヴェンドラ王子は、自分のような人々がLGBTQ+を取り巻く生きづらさや転向療法に反対を表明し、その廃止を求める運動を続けることが最も重要であるとし、「同性愛、相続権、養子縁組の権利など、さまざまな問題を解決していかなければなりません。それは終わりのないサイクルです。それでも、私は闘い続けなければならないのです」と、決意を語った。

自身の経験とLGBTQ+を取り巻く人権問題を世界に発信し続けるマンヴェンドラ王子の活動は少しずつ、だが確実に国内外へ広がっている。今後も彼の活動と発言に注目したい。

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インドのマンヴェンドラ・シン・ゴーヒル王子
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LGBTの社会運動を象徴するレンボーフラッグが飾られたマンヴェンドラ王子の宮殿内
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マンヴェンドラ王子は2006年にゲイであることを公表
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