偽ブラッド・ピットと恋に落ちて１億円以上を騙し取られた女性、詐欺師の巧妙な手口を明かす。ブラッド本人の広報担当者もコメント

米『CBS』によると、一部のオンライン批評家は、公になることによる影響に気づいていなかった弱い立場にある個人を守れなかったとしてTV局を非難。1月14日（現地時間）、『TF1』は再放送サービスから当該エピソードを削除すると発表した。

続く１月15日（現地時間）、ブラッドの代理人が『E! News』への声明で、これらの報道に反応。「詐欺師がファンのセレブとの強い結びつきを利用するのはひどいことです」と述べ、「しかしこれは、SNSのアカウントを持たないセレブについては特に、勝手に送られてくるようなオンラインの接触には応じるべきではないという重要な注意喚起です」とコメントした。

俳優ブラッド・ピットは、どのSNSの公式アカウントも持っていないと報じられているが、英紙『The Guardian』によると、なりすまし犯は偽のSNSアカウントやチャットアプリを使用。AIで生成した画像を使って、ブラッドの自撮り写真やパスポートのコピーまで作成していたそうだ。

米誌『Variety』によれば、2023年２月当時、19歳年上の裕福な実業家と離婚手続き中だったというアンヌさんは、子どもたちとスキー旅行中にインスタグラムのアカウントを作成して、写真を投稿したのが不幸の始まりだったと『TF１』の番組で告白。すぐにブラッドの母親だと名乗る人物から連絡があり、「息子はあなたのような女性を必要としている」と告げられたという。

『BBC』によると、翌日ブラッド・ピットを名乗る人物からも連絡があり、アンヌさんは「最初は偽物だと思った」ものの、「SNSにあまり慣れていない私は、何が起こっているのかよくわかりませんでした」と発言。

その後も連絡を取り続け、愛の詩の数々を受け取るうちに文通相手に恋をしてしまい、プロポーズまでされたのだとか。

ブラッドを名乗る人物が最初に金銭を要求してきたのは、アンヌさんが元夫との離婚が決まったことを打ち明けた後だったという。

"偽ブラッド”は、高価なバッグを贈り物として送ろうとしたが、アンジェリーナ・ジョリー（49）との離婚手続きにより銀行口座が凍結されているため、関税を支払うことができないと言い出し、アンヌさんは9,000ユーロ（約145万円）を送金することに。

その後、詐欺師は腎臓癌で入院しているため治療費が必要だと主張。病院のベッドに横たわるブラッドのAI生成写真を複数送ってきてからは、金銭の要求がさらにエスカレートしたそう。「人の命を救えるかもしれないと自分に言い聞かせた」と語るアンヌさん自身も、癌の寛解状態にあるのだとか。

一方、現在22歳のアンヌさんの娘は、『TF1』の取材に対し、「母親に現実を見てもらおうとした」が、信じようとしなかったと語り、母親が「いかに世間知らずかを見るのは辛かった」と続けた。

アンヌさんに疑念が生じたのは、本物のブラッドが恋人イネス・デ・ラモン（32）と写っている写真がゴシップ誌に掲載されたとき。

その際、詐欺師はAIが生成した偽動画を送って、アンヌさんに嘘を信じ込ませたのだとか。しかし2024年６月、本物のブラッドとイネスがヴェネチア国際映画祭で交際を公にしたことで、彼女は騙されていることを確信したそうだ。

そのときまでにアンヌさんは、元夫との離婚で受け取った和解金77万5,000ユーロ（約１億2,000万円）を含め、合計約83万ユーロ（約1億3,000万円）を詐欺師に渡してしまっていたとのこと。

『TF1』の番組によると、彼女は全財産を失い、３度も自殺を図ったという。「どうして私がこんな目に遭わなければならないのでしょう？」と涙ながらに語り、「あんな人たちは地獄に落ちるべきです」と訴えた。

なぜ詐欺にひっかかってしまったかについては、「自分の夫から聞いたことのないような言葉」を言われたら、誰でも詐欺に引っかかってしまう可能性があると付け加えたとか。

米『CBS』の報道によれば、恋愛詐欺は電子メールが登場して以来、横行しており、AIによるなりすましは詐欺のリスクをさらに高めていると専門家は指摘。2023年には６万4,000人以上のアメリカ人が恋愛詐欺で10億ドル以上を騙し取られたというデータもあるようだ。

仏紙『Libération』は社説で、アンヌさんを「内部告発者」と呼び、「現代の生活はサイバートラップだらけだ（中略）AIの進歩は、こういうシナリオをさらに悪化させるだけだろう」と述べているという。

なおフランスの警察はこの件を詐欺事件として捜査を行なっていると英紙『The Independent』が報じている。