2025年3月2日(現地時間)、ロサンゼルスのドルビーシアターで開催された第97回アカデミー賞授賞式。オープニングでは、シンシア・エリヴォ(38)とアリアナ・グランデ(31)の『ウィキッド ふたりの魔女』(2024)で共演した歌姫コンビが登場し、またBLACKPINKのリサ(27)、ドージャ・キャット(29)、レイ(27)などの人気アーティストもステージを盛り上げた。
受賞結果はセックスワーカーを題材にした『ANORA アノーラ』(2024)が主演女優賞、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞の5冠に輝き、今回最多の受賞に。受賞スピーチから、再会を果たしたセレブたちまで、注目のハイライトをお届け。
『ANORA アノーラ』5冠で一人勝ち! ショーン・ベイカー監督は個人で4冠の快挙、アカデミー賞の記録を塗り替える

今回6部門にノミネートされていた『ANORA アノーラ』(2024)は、主演女優賞、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞の5冠を勝ち取り、今回最多の受賞となった。
若手俳優マイキー・マディソン(25)が受賞した主演女優賞以外はすべてショーン・ベイカー監督(54)が単独受賞となり、個人が1作品のみで4冠を達成したのは史上初のこと。第26回アカデミー賞(1954)でウォルト・ディズニー(享年65)は4つ受賞したが、別々の作品であるため、ショーンが記録を打ち破ったことになる。
同作は、ニューヨークのストリッパーが裕福なロシア人政治家の息子と恋に落ちるというストーリー。ストリップダンサーを演じたマイキーは、「セックスワーカーのコミュニティと出会えたことは、この作品を制作するうえでもっとも素晴らしい体験のひとつでした」「私はこれからもこのコミュニティの方々や女性たちのアライ(味方)として、彼らをサポートし続けます」などとスピーチ。
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また、クエンティン・タランティーノ監督(61)から監督賞を授与されたショーン監督は、「あなたのおかげでマイキーをキャスティングしました」と感謝。クエンティン監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)でマイキーは端役を担っており、それが今作のキャスティングに影響を与えたようだ。
またスピーチでは、「私たちが映画に恋をしたのはどこでしょう? それは映画館です。映画館で皆が一緒に映画を見ることは、かけがえのない体験なのです」などと映画愛について語り、「特に経営の厳しい独立系映画館の閉館を止めなければいけない。そうでなければ、私たちは文化の大切な一部を失ってしまう。これが、私の戦いの叫びです!」と熱弁をふるった。
シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデの感動ステージで幕開け
2025年3月7日から日本でも公開される『ウィキッド ふたりの魔女』(2024)でW主演を務めたシンシア・エリヴォ(38)とアリアナ・グランデ(31)がオープニングに登場。スペシャルメドレーを披露した。
アリアナは、ドロシーが履いていた赤い靴を彷彿とさせるスキャパレリのカスタムドレスを着用。背中にも「ルビーの靴」がデザインされていたことなどから、絶賛する人が続出。うっとりするような歌声で『虹の彼方に』を歌い上げた。
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次に登場したシンシアは、ミュージカル映画『ウィズ』(1979)からダイアナ・ロス(80)の『ホーム』を圧巻の歌唱力でパフォーマンス。そして最後は、シンシアの元へ駆けつけたアリアナと共に『自由を求めて』を完璧に歌い上げると、「最高の瞬間!」「大トリのような幕開けだった」などとSNSが沸いた。
同曲のクライマックスでは、シンシアを引き立てるようにステージから少し離れた場所に移動し、目を輝かせてシンシアを見つめていたアリアナ。映画のプレミアで世界を回っていたときから二人の仲の良さは話題だったが、シンシアに対して尊敬の眼差しを向けるアリアナにも、多くの視聴者が惹きつけられたよう。
主演男優賞のエイドリアン・ブロディ、ハル・ベリーと22年ぶりにキス!

『ブルータリスト』(2024)で2度目となる主演男優賞を受賞したエイドリアン・ブロディ(51)。授賞式前にレッドカーペットで取材を受けていると、笑顔でそばにやってきたハル・ベリー(58)から突然キスをされるという珍事が発生した。
しかし、ハルの行動に驚かなかった人が続出。なぜなら22年前、主演男優賞のプレゼンターを担当したハルに対して、『戦場のピアニスト』(2002)で同賞を受賞したエイドリアンが抱きついてキスをするという、同じ行動をしていたのだ。
エイドリアンはのちに「受賞した感激のあまりキスをしてしまった」などと話したが、この件は2017年にハリウッドから世界に広がった「#MeToo」運動のときにも掘り起こされた。
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また、エイドリアンは今回の授賞式でも、主演男優賞を受賞した際の行動が問題視されている。エイドリアンは自分の名前が呼ばれると、ステージに上がる直前、同席していた恋人ジョージナ・チャップマン(48)に向かって口に入れていたガムを投げたのだ!
スピーチをするのにガムが邪魔だったからと思われるが、SNSでは「ガムを投げつけた後に感動的なスピーチなんてできる?」「ウィル・スミスのビンタよりも衝撃だった」などの批判が寄せられた。(3年前の授賞式で妻ジェイダ・ピンケット・スミスに失言したとして、ウィルは司会者のクリス・ロックに平手打ちをして出禁になった)
エイドリアンはこの日、5分40秒というスピーチ最長記録を更新。恋人ジョージナとその元夫で、現在は刑務所に収監されているハーヴェイ・ワインスタイン(72)の間に生まれた二人の子どもたちに、「ジェットコースターのような人生だったことは分かっています。あなたたちの人生に私を受け入れてくれてありがとう」などと語り、スピーチの内容も話題を呼んだ。
ティモシー・シャラメが賞を逃した瞬間、恋人のカイリー・ジェンナーがキス!
Timothée Chalamet and Kylie Jenner kiss after the Best Actor #Oscar was announced. #AwardsSeason pic.twitter.com/gTpuchT5sa
— E! News (@enews) March 3, 2025
撮影準備に5年かけて臨んだ『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』でボブ・ディラン(83)を好演するも、主演男優賞には届かなかったティモシー・シャラメ(29)。サラ・バートン(51)が手がけたジバンシィのイエロースーツに身を包み、恋人のカイリー・ジェンナー(27)を連れて出席した。
カイリーは胸元のカットアウトが特徴的なミュウミュウのブラックドレスをチョイス。レッドカーペットでのツーショットは叶わずも、会場ではキスをしたり手を繋いだりと終始ラブラブだったよう。また、賞を逃したティモシーにカイリーがキスをする姿もキャッチされた。
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カイリーといえば、先月に親しかったヘアスタイリストのヘスス・ゲレーロ(享年34)が亡くなったばかり。インスタグラムには、「ヘススは友達以上の存在だった。私の人生の光であり、笑いの源であり、慰めであり、愛であり、揺るぎない支えだった」などと、ヘススを失った悲痛な思いを投稿し、葬儀費用も負担していたことが話題に。また、時期が重なってしまったために、ティモシーが史上最年少で主演男優賞を受賞した第31回SAG賞(全米映画俳優組合賞)の授賞式は欠席した。
授賞式後、カイリーのメイクアップアーティストであるアリエル・テハダ(29)は「準備するのが大変」だったとインスタグラムでシェア。「今日はあなたがいなくて本当に辛かったけど、カイリーがオスカーに出席することを、あなたがどれだけ楽しみにしていたかは知っている。今日はあなたのエネルギーが私たちを導いてくれたのでしょう」などとコメントし、ヘススを追悼した。
日本人初のノミネート! 伊藤詩織監督の『Black Box Diaries』は受賞ならず

ジャーナリストの伊藤詩織(35)が監督を務め、長編ドキュメンタリー部門にノミネートされていた『Black Box Diaries』は受賞を逃す結果に。本作は、2015年4月に元TBS記者の男性から性被害を受けて民事裁判を起こしたことを発端に、その後、自身に起きたことなどを記録している。
授賞式で伊藤は、ピンクと赤が交差する華やかなドレスを着用し、同作のプロデューサーを務めたエリック・ニアリとハンナ・アクヴィリンとともにレッドカーペットに登場。今回のノミネートについては「最高の思い出になりました」と話した。
受賞を逃すも、SNSでは「(プレゼンターを務めた)セレーナ・ゴメス(32)が彼女の名前を呼んでくれたことが良かった」「ノミネートまでされたのに、日本で見る方法はないのか」などの意見も見られた。本作は、許可を得ずに監視カメラの映像を使用したなどの理由で、現在日本で上映の目処が立っていない。伊藤氏は以前、「日本で上映できれば、それこそがオスカー以上に値します」と話していた。
受賞を逃したデミ・ムーア、ウーピー・ゴールドバーグと35年ぶりに再会!
‘Ghost’ costars Demi Moore and Whoopi Goldberg reunite on the #Oscars red carpet. pic.twitter.com/ErXoSHlDEM
— VANITY FAIR (@VanityFair) March 2, 2025
この日、『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)で共演したデミ・ムーア(62)とウーピー・ゴールドバーグ(69)が35年ぶりに再会! 二人はレッドカーペットで対面すると、デミの手を強く握りしめたウーピーにデミが「あなた、とっても美しいわ」などと話しかけるなど、愛に溢れたやり取りが注目を集めた。
ウーピーは今回、オプラ・ウィンフリー(71)とともに登壇し、音楽界の巨匠クインシー・ジョーンズへのトリビュートを行った。一方、『サブスタンス』(2024)で主演女優賞の最有力候補だったデミは、まさかの受賞ならず。アカデミー賞前哨戦であるゴールデングローブ賞、クリティクス・チョイス賞、SAG賞で主演女優賞を受賞していただけに、アカデミー賞を逃したショックは大きかったよう。
SNSでは、「デミ・ムーアこそが受賞すべきだった」「ハリウッドはまた若手を優遇し、ベテランの才能を無視した」などとデミが受賞を逃した現実を受け入れられなかったファンのコメントが相次いだ。
エマ・ストーン、舞台裏での行動に注目が集まる
前回、『哀れなるものたち』(2023)で主演女優賞を受賞したエマ・ストーン(36)がプレゼンターとして登壇。授賞式前に、BLACKPINKのリサ(27)と初対面を果たしたエマは「今夜パフォーマンスするの⁉︎ アメージングすぎる!」と話しかけた後に、集合写真をパチリ。
また、リサがステージに登場する前にジェームズ・ボンドのトリビュートで先陣を切ったマーガレット・クアリー(30)には、舞台裏でドレスの裾を持ってあげるというマネージャーのような行動も。エマは別の人と会話ている間もマーガレットのドレスの裾を持ち続け、お人好しな一面がキャッチされた。
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また、会場を映した動画には、夫のデイヴ・マッカリー(39)にお姫様抱っこをされて移動する様子が収められていたとか。2019年12月に婚約を発表して以来、夫婦仲は相変わらず良好のようだ。
27年ぶりにカムバックしたメグ・ライアン、ビリー・クリスタルとステージで再共演

アカデミー賞の晴れ舞台に、27年ぶりにカムバックしたメグ・ライアン(63)。太ももあたりまで深くスリットの入ったバーガンディのベアトップドレスを着こなしたメグは、『恋人たちの予感』(1989)で相手役を演じたビリー・クリスタル(76)と再会を果たし、名コンビが復活した。
同作で使用された楽曲『It Had to Be You』が流れ始めると、メグとビリーが作品賞のプレゼンターとして登壇。トーク中には、ビリーと同作の名台詞をオスカーバージョンにアレンジするなど、会場を盛り上げた。
この二人は、先月に開催された第59回NFLスーパーボウルのCMにも登場し、世間を騒がせたばかり。『恋人たちの予感』の初公開から35周年(今年7月まで)となる記念イヤーに会場やファンたちを大いに楽しませた。
BLACKPINKのリサ、ドージャ・キャット、レイがコラボ! スペシャルなパフォーマンスを披露

『007/ダイ・アナザー・デイ』(2002)でボンドガールを演じたハル・ベリーに紹介され、マーガレット・クアリーがタキシード姿の男性たちとのタンゴで魅了した後に登場したのが、K-POP歌手として初めてアカデミー賞でパフォーマンスをしたBLACKPINKのリサ。深くスリットの入ったブラックドレスに身を包んだリサは、『Live and Let Die』を熱唱。
リサに続き、新曲『Born Again feat. Doja Cat & RAYE』でコラボレーションしたドージャ・キャット(29)とレイ(27)もそれぞれのステージで『Diamonds Are Forever』と『Skyfall』を熱唱し、3人は『007』に敬意を表した。
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リサは、レッドカーペットでは、中国発のファッションブランドのマーク・ゴンの、ロング丈の白いシャツドレスと黒いタキシード、フレアの黒いパンツを組み合わせた装いを披露。「初参加とは思えないほど堂々とした着こなし」と称賛された。
助演男優賞に輝いたキーラン・カルキン、受賞スピーチで兄マコーレー・カルキンに触れず

『リアル・ペイン~心の旅~』(2024)で助演男優賞に初ノミネートされ、初受賞となったキーラン・カルキン(42)。受賞スピーチでは、「受賞したら4人目の子供を作ると約束したんだ」などと妻のジャズ・シャルトン(36)への愛を爆発させた一方で、兄のマコーレー・カルキン(44)や家族については一切ノーコメントだった。
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ちなみにマコーレーは、アカデミー賞前夜に行われたパーティで、パリス・ジャクソン(26)と微笑ましいツーショットを披露。マコーレーはパリスのゴッドファーザー的存在で、パリスを赤ん坊の頃から知っているという。そんな二人が、マイケルの死後16年が経過した今なお、仲睦まじい関係性を築いていることに感動したファンもいたようだ。
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マコーレーはオスカー後、米誌『Vanity Fair』が主催したアフターパーティに参加。レッドカーペットで弟の受賞を祝福され、「授賞式をすべて観ましたか?」と聞かれると、「助演男優賞だけ見ました。本当の話です。泣いてしまいました」とうれし泣きしたことを明かした。さらに、「彼は最前列に座っていたし、舞台の階段に一番近いところにいました。勝たないわけがなかったんですよ」とジョークも飛ばした。
しかし、キーランにお祝いメールを送ったにもかかわらず、返信がないとも告白。「彼は今多忙だから仕方ないさ」と話していたものの、SNSでは兄弟の確執を疑う声も見られた。