パパラッチの稼ぎ場所でもある空港では、連日セレブたちが写真を撮られるのを意識して最新ファッションで現れてはおしゃれを競っている。ヤングセレブのなかには、デニムやジャージなどのラフなアイテムで、あえてハイファッションを着ないことで今風のスタイルを表現する人も。彼女たちの空港ファッションは、大げさに言えばセレブたちが自分は世間にどう見られたいのかを如実に物語っているのだ。
そうしたセレブの空港ファッションで、今なお完璧なる女優のオールドスタイルを貫いているのがキャサリン・ゼタ=ジョーンズだ。白いつば広の帽子にデカいグラデーションのサングラス。パンツスーツにハイヒール。手にはスカーフを結んだバーキン。ダイヤのついたシンプルなピアスとバングルはあくまでもエレガント。颯爽と空港に現れたキャサリンは、パパラッチの撮影を迷惑そうにしてうつむく様子はまるでなく、胸を張って“わたしゃ女優よオーラ”がびんびんだ。まるで往年のハリウッドスターそのもので、そのまばゆい輝きがなんだかありがたい。そう、セレブなんていうにわか作りの有名人ではなくて、私たちとは別世界のスター。キャサリン・ゼタ=ジョーンズには、そういう匂いがまだある。
思えば私が初めて生キャサリンを拝んだのは、15年前のアカデミー賞授賞式のレッドカーペットでのことだ。その年のオスカーは、いまや伝説となったビョークの白鳥ドレスに沸いた年だったが、私の中ではもうひとり、黒のコルセットドレスを着たキャサリンが正真正銘のスターのオーラを放っていて、圧倒的に美しく目立っていた。おお、スターとはこういう人を言うのだな、と実感したのを覚えている。彼女はその後、『シカゴ』(2002)でアカデミー賞助演女優賞を受賞してオスカー女優となり、実力のほどを証明した。夫のマイケル・ダグラスとともに美容整形に励み、夫婦仲も取り沙汰されているが、キャサリンのあの女優スタイルの王道を行く存在感は、いまや貴重だ。このまま強気で女優道を極めて、『何がジェーンに起こったか?』(1963)のベティ・デイヴィスやジョーン・クロフォードのようになっていただきたいと思う。