[vol.17] ケイト・モスのヴィンテージジャケットを見て、自分のワードローブの処分のしどきを考えてみた

最近、とみに加齢を感じさせるケイト・モスが、香水のイベントに登場したときのことだ。彼女は今シーズンのトレンドでもあるレオパード柄のジャケットを着ていたのだが、どことなく漂う古くささが気になった。肩パッドが大きく張り出したビッグサイズも今年の傾向だが、何かが違う。そうだ、シルエットだ!ケイトが着ていたジャケットは、ウエストが思いっきり絞ってあり、今年の全体にゆったりめなシルエットとはまるで別ものだったのだ。

彼女が着ていたジャケットのクレジットを見ると、それは懐かしのスウィンギング・ロンドンを代表したブランド、BIBAのヴィンテージだった。ボトムにレギンスとグッチのチェーンがついたサンダルをコーディネートして、今っぽいグラマラスさを出したかったのかもしれないが、バカンスで日焼けして疲れた肌を、レオパード柄はけっしてきれいには見せていなかった。それどころか、そのタンスの奥から引っぱり出して来たようなボディコンのシルエットのジャケットはやっぱり時代を感じさせて、私にあることを考えさせた。

それは、自分のワードローブの捨てどき、という問題だ。どうも私は好きで買った洋服をなかなか処分できないタチで、特に値段が張ったジャケットなどは未練がましくとっておいたりする。でもねー、ジャケットほど古いのは使えないってのも分かっているのだ。肩、ウエスト、アームホール、丈、どこをとってもジャケットは時代によってシルエットが大きく違ってくる。そして、そのズレを無視して着たときのかっこ悪さ。ヴィンテージなんてものは、そのジャケットが流行ったリアルタイムを知らない若者が着てこそ輝くもの。本人がまた着たところで、人間の古くささだけが浮き彫りとなるのだ。気をつけよう、ヴィンテージという名の古くささ。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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