[vol.30] トム・クルーズ、ジョニー・デップ、ブラッド・ピット。妻には負けても映画界ではシブトく勝者

80年代に映画デビューしてトップスターの座を走り続けてきた50代の男優が、ここにきて心身ともに疲れたような外見になってきていた。トム・クルーズ、ジョニー・デップ、ブラッド・ピット。トムが54歳で、ジョニーとブラピが53歳。いうまでもなく、3人とも女優の妻との離婚を経て太ったり痩せたりしているわけだ。
トム・クルーズの場合は、そのワーカホリックなまでの仕事好きとガッツで離婚の傷もあっという間に癒えた感があるけれど、アップになったときの老いは隠しようもなく、一時は顔面にボトックスを打ったのではというほどパンパンに腫れて、本人もかなり気にしていることをうかがわせたものだ。

 


今年になってからは、泥沼離婚劇でセレブ界の話題をさらっていたジョニーとブラピが相次いで激やせして、やれ若返ったとか、逆にしわしわになって老けたとか、いろいろといわれている。私の見たところでは、2人とも私生活のごたごたから立ち直るべく、この大スターたちは再生へ向かっているのだとふんでいる。
急激に痩せた分、シワになるのは当たり前。なんといっても53歳なのだ。結婚当時の2人の肥えっぷりは、ちょっとだらしがないレベルだった。酒と不摂生で付いた中年の肉。それはまるで、ストレスが肉になったとしか思えない有り様だった。

それがどうだろう。この激やせぶり。彼らの肉体を変えたのは、やっぱり大スターをキープしている大衆の支持と、仕事への意欲ではないだろうか。続々と新作のオファーが後を絶たないジョニーは、今後2年のうちで9本の新作の契約を交わしたといわれているし、ブラピは自身の製作会社「プランBエンターテインメント」のCEOでプロデューサーでもあり、手掛けた『ムーンライト』が今年のオスカーの作品賞に輝くなど、充実した仕事ぶりを発揮している。役者としても、元妻のアンジーにはばからず何でもチャレンジできる。トム、ジョニー、ブラピ以後も多くのスターは誕生したが、この世代の3強はレベルが違って、不動の存在感がある。妻には負けたが、映画界では相変わらずの勝者なのだ。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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