[vol.31] 世の中には、整形して欲しくない女優がいる。キム・ベイシンガー、あなたもか!

人気商売のセレブが整形手術をすることに対して、今さらとやかく言ってもどうにもならないが、それでもこの人だけは顔をいじって欲しくなかった、というスターがいる。『フィフティ・シェイズ・ダーカー』に出演していたキム・ベイシンガーを観たときに、私はそう思った。

 

『フィフティ・シェイズ』シリーズの第2章である本作は、前作に続き劇場で女性が堂々と観れるソフトポルノで、30代だったキム・ベイシンガーが主演した『ナインハーフ』(1985)を彷彿とさせるが、物語も官能度も非現実的でちょっと笑ってしまうレベルの作品だ。すんごい金持ちで大企業のCEOであるクリスチャン・グレイ(ジェイミー・ドーナン)に、「いつ仕事してんだ?」とか「裸の胸に描かれた口紅の線を消してから、シャツ着たら?」とかのツッコミを入れつつ作品を観るのも一興。だが、私をツッコミも出ないくらい驚かせたのは、なんといってもキム・ベイシンガー63歳のテラッテラした整形顔だった。歳を重ねて小さくなった目を思いっきりつり上げていたのもコワかった。『あの日、欲望の大地で』(2008)あたりの50代になったキムは、人生の経験を積んだその歳なりのきれいさがあり、シワがあってもとても素敵だった。すでにオスカー女優だった彼女は、ずっとありのままの顔で勝負できる女優だったし、そうするものとばかり思っていた。

ニコール・キッドマンもしかりだが、あれほど映画に対して真摯に取り組みオスカー女優として自信もあるはずの彼女たちなのに、やっぱり若き日の美貌に固執してしまう。わからないでもないが、ニコールやキムには整形して欲しくなかったというのが、こちらの勝手な気持ちなのだ。元々きれいな人なんだから、きれいな老女になれるのにね。とはいえ、実力派のベテラン女優ヘレン・ミレンやメリル・ストリープでもバレない程度のプチ整形はやっているという話だから、やっぱり言っても仕方のない話なんでしょうね。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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