[vol.35] 皮膚呼吸はできているのか!? キム・カーダシアンの芸術的なメイクアップにカンドーする

梅雨明けしないこの時期は、出掛ける前のメイクアップがおっくうになる。なにしろ湿気で肌はじめじめ。メイクしたところで化粧崩れもハンパなく、不快指数はピークに達する勢いなのだ。そんな折、いくらカラリと乾燥しているカリフォルニアとはいえ、カーダシアン一族が実践しているコントゥアーメイクやベイキングメイクとかの、顔面にクリーム状のスティックファンデやコンシーラーをこれでもかと重ね塗りしてはブラシとパウダーでぼかしていくメイクテクが、度肝を抜く絵ヅラでびっくりなのだ。

その化粧方法は、よくドラァグクイーンがする厚化粧のテクに似ているのだが、そこはセレブなカーダシアン一族。ゴージャスでオサレな仕上がりになっているのだ。しかし、お面にも似たその仕上がりへの過程はメイクアップというより、絵描きとか左官・塗装を思わせる。立体感を出すために、または小顔に見せるために「ここの肉はなかったことにして下さい」といわんばかりに、陰にしたいところに茶色のスティックでガシガシと線を入れてゆくのだ。その線は大胆で、ぱっと見アバウト。次にその線をひたすらぼかす、この繰り返しだ。私の見たところ、毛穴は完全に死滅。あ、死滅ってことはないでしょうが、皮膚呼吸はできているのか心配になるレベル。イラストレーターの性でしょうか、ピカソの肖像画にも似た仕上がり途上の動画に目はくぎづけになる私なのだ。

それにしても、普通は線画の入ったメイク途中の顔なんて見せたくないと思うが、そこはビジネス感覚に長けたカーダシアン一族。あなたもキム・カーダシアン顔になれるという新たなコスメ用品の売り出しプロモ動画なのだった。それと感心したのは、商売とはいえ顔を削ったり詰め物をしたりして、おまけに、これだけ肌に過酷なメイクを施して、本当に皮膚が強いな!ってことですよね。顔面芸術は一日にして成らず!

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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