やることなすことすべてがうまくいかず、いらつきと葛藤でイッちゃってる行動に走る大学進学直前の女子高生。私はこんな文化のない田舎じゃなくて、ニューヨークの大学に行きたいの!!『レディ・バード』の主人公レディ・バード(彼女は勝手にそう自分の名前を決めているのだ!)をまったく嘘くさくなく、自分勝手でかわいくて、実にみずみずしく演じたシアーシャ・ローナン。彼女はこの演技で本年度のゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞した。先日、発表されたアカデミー賞にもノミネートされて、23歳ながら、すでにこれが3度目のオスカー候補。最初のノミネートは『つぐない』(2007年)で13歳のときだった。
出てきたときから「この俳優は、ただもんじゃないぞ」と思わせる役者がいる。俳優学校で教えるような芝居じゃなくて、なんだか本能レベルで役柄を理解しているようなコワさを出す役者。『つぐない』でのシアーシャがそういう役者だった。いかにもアイリッシュな女の子らしい透き通った肌と、アイスブルーの瞳が特に印象的だ。彼女の透明感のあるルックスが、純粋さや裏腹の怖さを表現して、シアーシャじゃないとキャラクターをここまでリアルに持っていけなかったんじゃないかと思わせたものだ。いずれにしても、いつかはオスカー俳優になるはずの女優だと思う。
さて、幸運にもゴールデン・グローブ賞のプレパーティでシアーシャ本人と遭遇した私だが、彼女の飾らない人柄とファッションにもびっくり。ほんとに肌も瞳も色素の薄い美しさ。メイクアップでいかようにも変化のつく顔というんでしょうか。事実、授賞式本番ではヴェルサーチのブラックドレスでエレガントに変身。遠目に見ても、シアーシャの並外れて輝く白い肌には驚くばかりだった。受賞スピーチでの興奮ぶりがまたレディ・バードしていてかわいかった。「ママとフェイスタイム(ライブビデオ電話)でつながっているの!だから、ハーイ!マーム」と、第一声。監督のグレタ・ガーウィグの役者を選ぶ目の確かさも讃えたい。