映画『ボヘミアン・ラプソディー』の余韻が止めどなく続く今日この頃。ラミ・マレック演じるフレディ・マーキュリーの歌声を聴いていると、自然に涙がにじんで来た。これって、音楽そのものが持つ力。音楽で自由とはこういうことなんだ、と表現したクイーンに胸が熱くなった。
それにしても、臨場感たっぷりのライブパフォーマンス・シーンでのフレディといったらない。朗々と歌い上げる圧倒的な歌唱力!こぶしを突き上げ、イナバウアーのごとく上体を反らし、ぶった切ったようなスタンドマイクを自在に操り、キレッキレの動きで観客をくぎ付けにする!そして、フレディの進化とともに変わりゆくコスチューム!キモさとグラムな魅力が絶妙なバランスでファンを楽しませてくれた70年代のタイツ時代から、80年代の黒レザー時代を経て、男は黙ってランニング時代へ。スタイルが変わっても、脚長強調と胸毛アピールはお約束。何をやっても美しいボウイとは違って、何をやっても笑わせてくれるあなたが好き。「好きなんだ〜っ!」とフレディばりのつばきを飛ばしながらウェンブリー・スタジアムの真ん中から抜けた天井に向かって叫びたいくらいだ。
映画で最初に若きフレディ役のラミ・マレックを見たときは、正直言って「いくら何でも、歯茎盛り過ぎじゃない?!」と極端に出っ歯な役作りが気になったが、実際、フレディの上顎の歯は通常より4本も多かったという。それがずっと彼のコンプレックスだった訳だが、フレディがすごいのは、口の中が人よりも広くて発声するときの響きに有益だからと、出っ歯を治さなかった。それどころか、デビュー当時は歯が出ないように気をつけていた口元が、バンドの成功とともに口ひげも生やして(それは公言なしでも見るからにゲイのカミングアウトだった)思いっきり大口を開いて熱唱するようになる。コンプレックスを隠さずに、ありのままに自分を表現して自由を勝ち得たフレディ。音楽に身を捧げ、歌うことで自身を解放したのだ。その歌声が私たちの心にダイレクトに響いてくる。彼から受け取るものは美しいのに、見た目でおもしろがらせてくれるって、ここがフレディの最高なとこ!