ヴィヴィアン・ウエストウッドといえば、2015年にシェールガス開発に反対して、キャメロン首相邸に戦車(!)で乗り付けた抗議デモの報道写真が強烈だった。ファッションデザイナーに留まらず、環境保護や人権保護の活動家としてもますますのパワーを発揮している77歳のデイム・ヴィヴィアン。そんな彼女のドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』(12/28公開)を観た。
ヴィヴィアンといえば、パンクファッションの生みの親だが、作中でセックス・ピストルズのジョニー・ロットンのことを「彼は社会現象になったけど、過去の栄光にまだ酔っているのよ。もういい年なのにね」とズバリな発言。いや〜、ヴィヴィアンの方がよっぽどパンク。というか現役パンクね。パートナーだったマルコム・マクラーレンだって、結局、ヴィヴィアン頼みのその後で、ずいぶん彼女のビジネスの足を引っ張ったようだ。今ではアンドレアス・クロンターラーという公私ともに彼女を支える夫が、ヴィヴィアン・ウエストウッドのブランドを共同で継続させている。ここにくるまでに色々と困難なことに直面した彼女だが、一貫して自分の好きなものしか売らない、作らない、という信念はマーケティング至上主義の今の時代すごいことだと思う。
事業を拡大しないのは、身近な問題に対処できなくなるから。仕事が多くなり最高のものを作るという行為が手薄になる。拡大ではなく、顧客のハートをつかみたいというヴィヴィアン。ショーの前に、出来上がった洋服を見て「こんなクズ、ショーに出せないわ。ゴミみたいで大嫌いよ」と憤る彼女は常に闘う戦士そのものだ。周りのスタッフは困惑するだろうが、夫アンドレアスのヴィヴィアンを見る目が的を得ている。
「彼女はズバズバ言いすぎることもあるが、この種の人間が物事を変えていくんだ」。率直で、思い立ったら即行動のヴィヴィアンのパンクな生き方は終わらない。