[vol.74] キャメロン・ディアスが抜けた穴は以外と大きかった。オシャレな熟年女優として、いつかカムバックしてくれ〜っ!

キャメロン・ディアスは本当に引退したのだろうか。映画『ANNIE/アニー』(2014)を最後にスクリーンからぱったりと姿を消してしまったけれど、いまだにパパラッチの目からは逃れることができずに、普通の生活をしている様子が度々報じられている。出るところに出ればまだ十分ゴージャスに変身できそうな片鱗は残しつつ、スーパーマーケットにスッピンで行くキャメロンは、リアルな46歳。頬の肉もたるんできて、髪の毛もお手入れなし。だが、本人は当然パパラッチが狙っていることなど承知だろうから、素顔で普通に生活する自分に納得しているのだろう。

さて、公開中の『シンプル・フェイバー』を観ていたら、マニッシュなスーツを着こなしたブレイク・ライブリーが出演していて、ふと、15年前ならこういうファッショナブルなコメディにはキャメロン・ディアスがうってつけだったなぁと思いを巡らせた。ブレイク・ライブリーは大柄でうねった豊かな金髪がゴージャスだが、なんだかもうひとつ重い印象がある。作中のオシャレで高飛車なキャラが、ガタイからくる圧でちょっと怖い。その点、アヒル口で笑顔がはじけたキャメロンにはコメディエンヌ独特のキュートな魅力があったし、彼女が画面に出ただけで陽気な雰囲気を作り出していた。40も過ぎて、陽気でキュートだけでは通用しなくなるのがコメディエンヌの辛いところ。ましてシリアス路線には向かないキャラと顔であるのもダブルで辛かった。

キャメロンが抜けた穴は、意外と大きい。私は彼女が普通の生活を経て、日常のいろんな感情を身につけた後に、いつかはスクリーンに戻ってくるような気がしてならない。だが、キャメロンの後釜は一体誰が担っているのだろうと考えると、時代は一気に多様化していて、ブラックにアジアンにプラスサイズ、LGBTQの役者など様々。ゴールディ・ホーン→メグ・ライアン→リース・ウィザースプーンと続いてきたロマコメのブロンド白人女優の系譜は、ここにきて途絶えた。キャメロンには、オシャレな熟年女優としてカムバックしてもらいたいものだ。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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