[vol.85] カッコつけてないのに、カッコいい! プラピ55歳、お気楽ムードでバリバリのハリウッドスターなのだ

クエンティン・タランティーノ監督が、ありったけの映画への愛を込めて世に送った新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの2大スターの共演とあって話題も沸騰。69年のハリウッドという激動の時代設定の中、レオとブラピのバディな関係が物語の核となり、映画の都が輝いていた日々を映している。

タランティーノ流のユーモアが散りばめられた作中で、私的におおいに受けたのは、ブラピが屋根仕事をするときに、いきなり意味もなく着ていたTシャツとアロハシャツをひとまとめに一気脱ぎをして、55歳のまだまだイケてるハリウッドスターのハダカを、これ見よがしのサービスショットとして見せたことだった。ブラピ、それを分かっていてセルフパロディのように余裕で見せるベテランの境地。いいわ〜、ブラピ、やっぱりスター! 惜しみなくおおらかで、最高!

レオとのバディな関係も、思えばブラピだからうまくいっている。本作ではブラピがTVスターのレオのスタントマンをやっていて、いわばレオに依存する形で仕事にありついている。ブラピは演技をしていて、レオを食うこともなく、かといってその独特に気楽なムードを出しながら、落ち目のレオを精神的に支え励ましてやる。彼は主張し過ぎることなく、自分を活かしてるのだ。これがトム・クルーズやジョニー・デップなどの強い個性のスターだったら、レオとのバディな関係の成立は難しいと思われる。

ブラピの気張らない(だが、映画への情熱はQTやレオとタメ)姿勢は、その服装にも表れているようだ。『ワンハリ』撮了後のプロモーション用フォトコールに、かなりラフなかっこうで登場したブラピ。そで口がべろんべろんに伸びたTシャツの重ね着に、夏だというのにウールの使い込んだハンチング。共演のマーゴット・ロビーなどロングドレスというのに、まったく気にしていない。でも、これだけチープなかっこうをしても誰よりもカッコいいって、それ、絶対かなわないでしょう。きれいな人ほど外見で判断されるのが嫌で、ファッションは構わないが、逆にしゃれなくてもマジにきれいなのがバレてしまうという例ですね。どこにでもブラピが現れると聞くと、女性スタッフがざわめく、という話を聞いたことがあるが、セックスアピールのある男、それがブラピなのでしょう。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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