キアヌ・リーヴスがサンローランの19年秋冬キャンペーンモデルに起用されたのは、私にとって今年のファッション界の事件だった。ジョニー・デップがディオールの香水のCMに出演したときにもちょっと驚いたが、私服がかなりラフで個性的な彼らも50代の半ばとなり、シブさも身につき、フランスのラグジュアリーブランドのイメージを表現する存在になったのだなぁと感じ入った次第。
そんなわけで、彼らが新作の披露イヴェントやレッドカーペットに登場する際には、以前よりもずっと「普通」なフォーマルスーツで現れるようになってきた。デップなど、若い時に首からジャラジャラとぶら下げていたネックレスの類いもぐっと少なくなり、彼にしてはシンプルに変身しているのだ(ロックシーンにおいては、依然ジャラジャラぶら下げているが)。だがしかーし、靴だけは別!彼ら、靴だけは決してスーツにあわせたフォーマルタイプを履かないのだ。まるで、それを履いたらオレらしさが消滅するとばかりに、スーツには不釣り合いなゴツい靴を合わせている。
キアヌは先日、初めてオフィシャルにガールフレンドを同伴したLACMA Art+Film Galaでは、ブラックのスリーピースのスーツにスエードのハイキングブーツをスタイリング。いや、これをファッショナブルと言いくるめるのは、カニエ・ウエストくらいのオサレ達人でないとちょっとムリ。ここはやっぱり、このブーツがバイク好きで飾らないキアヌらしさの最後の砦とみるべきだろう。デップの方もタキシードにはロカビリー愛好者の履くラバーソールの厚底靴をあわせて、基本ロック野郎なオレを保持しているのだ。両者とも今やベテランの域に達してきたAリストのスターだが、ハリウッドの常識にとらわれず、好きなものを貫き通す精神の自由さは筋金入り。その心意気が、こだわりの靴に表れているような気がしてならない。