近年、アベンジャーズ・シリーズのブラック・ウィドゥ役の印象が強くて、すっかりアクション女優としての地位を確立した感があったスカーレット・ヨハンソン。だが、ここにきて『マリッジ・ストーリー』と『ジョジョ・ラビット』という各賞レースの最前線にある2作品に出演して、情感豊かな母親を演じ、充実の役者人生を送っている。
奇しくもその2本の出演作では、共にヨハンソンは小さな男の子の母親役だ。『マリッジ・ストーリー』では離婚問題に直面している母親で、夫と別居のときには彼が反対している息子との添い寝をする優しさがある。だがひとりの自立した女性として、女優の仕事を確立したいと願う志を持っているのだ。劇団監督である夫をサポートするだけの女優で終わりたくないと。他方、『ジョジョ・ラビット』では第二次世界大戦下のドイツで、ヒトラーを心の友とする10歳の男の子ジョジョの母親だ。ヨハンソンはシングルマザーという設定だが、作品がユーモラスでファンタジックな作風なので、状況に見合った悲惨さはない。彼女は素敵なセーターを着てジョジョとダンスを踊り、戦争が終わったら最初に自由に踊りたいと息子に話す明るいママなのだ。ところが、ジョジョには内緒で、家にユダヤ人の少女をかくまう大胆な正義感の持ち主。2作品はだいぶ毛色の違う作品ではあるけれど、息子想いの大甘な母親でありながら、強い意思の持ち主であるところはいっしょ。
美人で明るくてたくましいお母さん。こんなキャラクターがいつの間にか、ぴったりとハマる俳優になったスカーレット・ヨハンソン。彼女は35歳で2度の離婚を経験しているが、前夫のフランス人ジャーナリストとの間にできたひとり娘がいる母親でもある。持ち前のバイタリティと経験値が、今日の充実した仕事につながっているに違いない。今年『サタデー・ナイト・ライブ』の脚本家&コメディアンのコリン・ジョストと婚約して公私ともに絶好調。歳とともに増えていく彼女のタトゥーを見るにつけ、小さくまとまらず自由に広い視野で仕事の場を広げていくことだろう。