2020.02.18

[vol.96] ティモシー・シャラメの長いまつ毛は、場面を一気にドラマ ティックに変えて、少女漫画の胸キュン状態にする

アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞した『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(3/27公開)は、19世紀に生きる4人姉妹の若き日々を、グレタ・ガーウィッグ監督が彼女自身のスピリットと、現代の女性の生き方を重ねあわせるように活き活きと描いた作品だ。かしましくおしゃべりしていたと思うと、取っ組み合いのけんかをして、いつもべたべたと体を寄せあい、泣いたり笑ったりの4人姉妹と聡明な母親。男勝りで小説家になるのを夢見る次女のジョー(シアーシャ・ローナン)を中心に、物語は姉妹がそれぞれの選択で少女時代に別れを告げる。

 

それにしても女の娘が4人集まると、こうもやかましく、それがまた平和の象徴のように映るものだから、ここに登場する男子という存在はとても重要になるのだ。はい、ここでティモシー・シャラメの登場です。シャラメは4人姉妹の家の隣に住む資産家のひとり息子ローリーを演じている。この時代に、すでに革新的な女性の考え方をしていたジョーの強さに惹かれるおぼっちゃまのローリー。2人はまるで遊び盛りの子犬のようにじゃれあい惹かれあう。当然、ローリーはジョーに想いのたけをぶつけたくなるのだ。ここのシーン、いきなりドラマティックになります。シャラメ(ローリーね)がもう子どものつき合いは止めにしようと言わんばかりに、愛の告白。「僕の気持ちはわかっているはずだ。愛してる!」

 

しかし、ジョーの返事はキツイ。彼女は結婚して小説家の夢を断たれるのを恐れたのだ。このときのシャラメのアップの顔。長いまつ毛の美少年が失恋する悲しみを表すのに、これほどふさわしい顔があるだろうか!!と思ったものです、わたくしは。ポイントは彫刻のような横顔。耳まで赤くなる色白な肌。そして決定的なのは、その美しい顔に影を落とす長いまつ毛、これですね。長いまつ毛は場面を一転、少女漫画の胸キュン度を一気に高めます。というわけで、ジョーの物語ではあるが、シャラメのまつ毛の効果にえらく感心したのでした。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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