[vol.98] ハリー・スタイルズのパールのネックレスが気付かせてくれた、私たちのジェンダーに縛られた固定観念

ジェンダーレスなファッションが謳われている今日では、男性がスカートをはくのも別に驚きはしない私たちである。だが、ハリー・スタイルズがパールのネックレスを普段使いするのを見て、ハッとした。彼のコーディネートはとても洒落て見えたし、モード的にも進んでると思えた。パールって改めて清楚な女性がつけるアクセサリーのイメージがあり、それを男性が身につけることの意外性とジェンダーレスな効果を知った思いなのだった。1本のパールのネックレスが持つ固定観念。それをぶち破ったハリーを取り巻くデザイナー、スタイリスト、おしゃれに自分のものとしたハリー自身。いいじゃないですか!

ハリー・スタイルズは昨年のMETガラでグッチの透け透けシアーの黒いブラウスを着て以来、男女のファッションの垣根をとっぱらったような格好をするようになった。リボン結びのブラウス、指先のネイル、先日は裸に網タイツというスタイリングでビューティマガジンの撮影に挑んでいる。アンドロジナスというか中性的というか、そういうイメージで先端のファッショナブルさをアピールしているのかもしれないが、私が思うに、網タイツ一丁のような極端なスタイルよりも、Tシャツにパールのネックレスをどーってことないように使うカジュアルな格好にこそ本当のジェンダーレスを感じるのだ。

だって、彼のパール使いはまさに私たちのそれと同じなんだもの。正統的なパール使いのお手本といったら、やっぱりエリザベス女王の三連パール。ヒッチコック監督作品でグレース・ケリーが首に詰めてつけた短めのパール。それらは上品で美しい永遠のイメージではあるけれど、現代風にパールを使うならば、やっぱりカジュアルに使う方が断然おしゃれ。そして、そんな女性独特のパールコーデをささっとやってしまったのがハリー・スタイルズなのだった。まあ、彼に似合っていたというのが最大の勝因ではあるのですがね。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

https://twitter.com/michikaishikawa

 

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