「えっ、またダイアナ妃の映画が作られるの?」と軽めに驚いたのは、クリステン・スチュアート主演でダイアナ妃の伝記映画『スペンサー(原題)』が来年、製作されると発表されたからだ。今までも36歳で不慮の死を遂げたダイアナ妃の数奇な生涯は映画やドラマになったけれど、なぜこの時期なのだろう。もともと英国ロイヤルファミリーはスキャンダルにこと欠かない存在だが、ダイアナ妃の生前、そして没後に渡って綿々と続くお家騒動は、様々な角度からドラマ化するのに格好の材料なのだと思う。
今回、クリステン・スチュアートが演じるダイアナ妃の物語は、彼女がチャールズ皇太子との結婚の破綻を見極めて離婚を決意したといわれた90年代初頭、ノーフォークのサンドリンガム・エステートで家族と過ごした最後のクリスマスの3日間を描いたものだという。偽りの結婚生活を終わらせて、一人の自立した女性としての彼女の決意。というと、チャールズとカミラの密会→皇太子妃で妻で母親としての苦悩→ノイローゼ&自殺未遂→自身のラブアフェアを回想しつつ、決意&自立にたどりつく、みたいな展開が浮かび上がってくるが、ありきたりなダイアナ美化にならない構成を期待したいものだ。
それにしてもダイアナ妃にまつわる物語となると、無尽蔵にあるような気がしてくる。ヘレン・ミレンにアカデミー賞の主演女優賞をもたらした『クィーン』は、ダイアナ妃の交通事故死当時のエリザベス女王の心中を描いていたが、例えば、今では女王も好意的に接しているカミラ夫人側からダイアナ妃を見たらどうなるだろう。さらには、ダイアナ妃の忘れ形見の2人の息子から見た母親としての彼女。今なら、幼いころに母親と死別したことが精神に強く影響していたと告白したヘンリー王子とメーガンの王室離脱の物語にも、ダイアナ妃の影を見ることは容易いだろう。若くして劇的に亡くなったダイアナ妃の物語は、繰り返されるに違いない。