10/30(金)よりジャン=ポール・ベルモンドの傑作選ロードショーがいよいよ公開される。彼の主演作『勝手にしやがれ』が私にとってのオールタイムベスト作で、ベルモンドが92年に来日公演を果たした『シラノ・ド・ベルジュラック』に駆けつけたほど彼の大ファンの私にとってもうれしい企画だ。ただし、今回公開される8作品は、60〜70年代にアクションスターとなったベルモンド。ベルボトムのジーンズをはいてモミアゲ野郎になってからのベルモンドだ。
正直、『勝手にしやがれ』、『気狂いピエロ』、『冬の猿』(名作です!)あたりの彼が好きな私としては未見の作品もあり、興味津々。この際なので8作品全て鑑賞したが、いや〜、特撮技術がさほどなかった時代に、ベルモンド自身がスタントなしでヘリコプターから吊り下ろされるわ、空中から高層ビルの窓を蹴破って突っ込むわ、ギャラリー・ラファイエットのデパートの屋上ギリギリのところで格闘するわで、今でいったらトム・クルーズやマット・デイモンが目一杯の見せ場としてやってることを、60年くらい前に既に実践していたのよね。でも、今のアクション映画と比べると、さすがにスピード感はゆるい。ゆるいが、逆にごまかしが効かない生身の迫力があるのだ。それにしてもベルモンド、元ボクサーで体を動かすのがよほど好きらしく、案外ガッチリした体でひょいひょい身軽に飛んだり跳ねたり走ったり。デビュー当初はゴダールやトリュフォーなどのヌーヴェルヴァーグ監督に愛されたが、本人は体を張ってのアクション映画の方が性に合っていたのだろう。なんたって、撮影時に台本のないゴダールに腹を立てたというんだから笑ってしまう。
それでもゴダール作品で発揮された彼の飄々として愛嬌たっぷりの魅力は、アクションスターになってからさらに分かりやすく増強。私のオススメ作品は『恐怖に襲われた街』と『ムッシュとマドモアゼル』。特に後者はラクエル・ウェルチと共演したアクションコメディで、ベルモンドが2役を演じて笑わせる。なにかと比較されるアラン・ドロンがバラだとすると、ベルモンドはチューリップ、といったのは友人の中野翠だが、実際『ムッシュと〜』には、ベルモンドがウェルチにチューリップの花を持って訪ねて行き、思いっきり拒否される爆笑シーンがあるのだ。画面に彼が出ているだけで、作品にユーモアをもたらすベルモンド愛は止まらない!