「何を今更」と思いながらも、やっぱり気になって観てしまうに違いない巷で話題の『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下、SATC)の続編『And Just Like That…(原題)』。HBO Max配信の今後の目玉になる新作は、全10話のミニドラマシリーズとなる模様だが、なんといっても驚いたのは、主要出演者のギャランティだった。1エピソードにつき、なんと100万ドル!日本円にして、およそ1億円強が出演料として支払われるのだという。ということは、10話で約11億円ってことよね。泣くぞ、日本のテレビドラマ製作者たちが。
そこで私が気になったのは、その11億円もの大金を蹴ってまで出演を固辞したサマンサ役のキム・キャトラルの心情だ。
いや、もちろんお金だけの問題ではなくて、こんな話題作に出演しないとなると、キャリア的にも女優としてのデメリットが大きいはず。キャトラルは主演級の女優ではないが、『SATC』でもダイナマイトな肉体と押しの強い個性で、アンサンブル演技の面白さを一気に高めた、なくてはならない存在だった。はっきりいって、サマンサのいない『SATC』なんて、セックスが抜けて、シティの小話ばかりになるんじゃないのか。オサレな50代がその歳なりの悩みを抱いて、昔とは様変わりした現代のニューヨークで右往左往する。もちろん、かねてから批判のあった白人女性ばかりではなくLGBTQにも配慮した幅広い人間関係を絡めての物語ね。
キャトラルが新シリーズに参加しない話に戻るが、彼女がキャリー役のサラ・ジェシカ・パーカーとどんな確執があったのか、真実は誰にも分からない。ひとついえるのは、彼女たちの間にあったのは、画面の中で観たような友情ではなく、プロフェッショナルな女優同士の仕事相手であっただけのこと。その仕事相手としてさえも、キャトラルは我慢できなくなっていた。11億円もらっても絶対に嫌だと。それほどのストレスなら、もう断って当然ですね。2人の不仲説を否定するサラが「サマンサは(新シリーズでは)物語の一部ではないけれど、彼女が私たちの一部であることに変わりはない」とファンにコメントを返したということだが、分かっちゃないね。こういうのが、またキャトラルをイラつかせるんだと思うよ。アナザー『SATC』の物語。