[vol.115] シュワちゃんの息子、麗しきパトリック・シュワルツェネッガーは、とことん悪役で2世の壁をぶち破ってほしい。

偉大な親を持つ子供は、人知れず精神的な苦労が多いことだろう。どの職種に就こうとも、有名人の子供ゆえに入り口は安易だと思うが、真の成功を持続するのは難しい。常に親と比べられるプレッシャーを跳ね除けて、独自の道を開発しなければ世間は認めてくれないからだ。それでも、ゼロから始めなければならない普通の人よりは、スタート時点からチャンスが待ち受けている彼等の方に分があるのは間違いないと思ってしまう。

 

 

ボディビルダーからハリウッドのアクションスターとなり、のちにカリフォルニア州の知事まで務めたアーノルド・シュワルツェネッガーと、ケネディ家出身のジャーナリスト、マリア・シュライヴァーを両親に持つ、パトリック・シュワルツェネッガー。生まれた時からセレブな環境に育ち、その端正な顔立ちと体格の良さで10代からモデルとして活躍。ピザビジネスなどにも手を出し成功したが、やはり俳優業に進出した。これがね〜、やっぱり難しい。完璧な外見が、必ずしも役者にとって有利になるとは限らない。余程の演技力がない限り、その美しさだけが浮いてしまい巷の人々のリアル感は出しにくいのだ。妙な青春映画に出演しても鳴かず飛ばずのパトリック。偉大な親を持つ2世の壁は乗り越えられるのか?

そんな折、Netflixオリジナル映画『モキシー〜私たちのムーブメント〜』に、なんとイケメンだが意地の悪い高校生役でパトリックが出演していたのだ。この作品、かなり分かりやすい形で校内の性差別を描き、主要な配役にもアジア系、アフリカ系の俳優を配したエイミー・ポーラーの監督作だ。アメフト部のキャプテンで、女性校長のお気に入りの美男子パトリックのサイテーシーンがマンガ的で印象に残る。利発な転校生のコーラ缶に、彼がつばを吐くのだ。その目つきの露悪的なところに、彼の綺麗さが活きてる。パトリック・シュワルツェネッガー、とことん悪役で活路が開けるかも。

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イラストレーター&エッセイスト 石川三千花

映画、ファッションを独自の視点からイラスト+エッセイで斬る!著書に『石川三千花の勝手にシネマ』、『勝手にオスカー』など。

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