【シドニー・スウィーニー】CM炎上の物議を誘発!? フェミニズム作品で出世した「お色気」スターの仕事術

「共和党員シドニー・スウィーニーのCMは最高にホット」「頑張れ、シドニー!」。米大統領公認の「トランプ派」に勝手に任命されたハリウッドの新星が話題になっている。これまでも数々の物議を醸してきたシドニーとは、一体何者なのか。

「共和党員シドニー・スウィーニーのCMは最高にホット」「頑張れ、シドニー!」。米大統領公認の「トランプ派」に勝手に任命されたハリウッドの新星が話題になっている。これまでも数々の物議を醸してきたシドニーとは、一体何者なのか。

困窮からフェミニズム俳優に

シドニー・スウィーニー Sydney Sweeney

photo:Getty Images

1997年シドニー・バーニス・スウィーニーが生まれたのは、ワシントン州の保守的な地域の敬虔な中流家庭。俳優の夢を実現すべく、事業計画をねって両親を説得し、13歳になるころには家族総出で芸能都市ロサンゼルスに引っ越した。しかしなかなか芽が出ずモーテル暮らしに。16歳で両親が離婚し破産してしまうと、責任を感じ、大金を稼いで家族を元通りにしようと誓ったという。

シドニーのキャリアを軌道に乗せたのは、リベラルなフェミニズム作品だった。20代になったころ、女性主演映画で著名な故ジャン=マルク・ヴァレ監督に見出されたことをきっかけに、反トランプ運動のアイコンとされた有名シリーズ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』(2017〜)への出演を果たした。のちの主演映画『リアリティ』(2023)にしても、トランプ政権のスキャンダルを暴いた女性の伝記となっている。

炎上「お色気」タレントの道

シドニー・スウィーニー 『ユーフォリア/EUPHORIA』 Sydney Sweeney

 "Euphoria" Season 2 Photo Call  photo:Getty Images

過激ティーンドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』(2019〜)でのセクシーな高校生役でブレイクを果たすと、女性映画プロデュースの意欲を掲げ、制作会社を立ち上げた。しかし、このころ業界に幻滅したようで、ハリウッドは裏切りだらけで共演者すら信頼できない 、とまで漏らすようになっていった。

シドニー・スウィーニー Sydney Sweeney Baskin-Robbins

Baskin-Robbins the "Sweet on Sydney" menu shot photo:Getty Images

そこで、精を出すようになったのが広告タレント業。本人も語るように、近年のハリウッドでは中堅俳優の稼ぎが減っているのに経費は高額なため、広告仕事がますます重要になっている。それでもトップスターには「映画館でしか会えない」希少性が重要とされるため、シドニーほど露出する人気者は珍しい 。

タレントとしてシドニーが確立したのは、男子を喜ばせる「ブロンドのお色気巨乳」キャラ。お笑い番組に出た際、成功計画の一つは「ブーブス(胸を見せること)」だったとネタにしたこともある。映画スター候補がブランド毀損とみなすポジションを堂々主張することで一気に注目を集めていったのだ。

ある種の炎上商法として成果もついてきた。製作・主演した恋愛映画の宣伝期、お互い婚約中でありながら相手役と露骨に絡んでいって偽の不倫ゴシップをしかけ、話題性を喚起することで作品をサプライズヒットに導いたのだ。のちに男性側の元フィアンセが「あの商法の屈辱が婚約破棄の一因だった」と告白し、シドニーも長年の恋人と破局するなど、現実のゴシップも次々と展開されていった。

親から心配されるほどビジネスに入れ込んでいったというシドニーは、2025年、自分が浸かったお風呂のお湯でつくった石鹸を男性向けに販売。流石に反発を呼んだこの頃には「反フェミニズムな男子向けタレント」のイメージを持たれるようになっていた。

炎上CM騒動

こうして、2025年の夏、トランプ大統領が絶賛したアメリカン・イーグル社によるジーンズのCMが発表された。これもシドニーが熱心に企画に参加して物議を醸す意図があったと伝えられている。実際、広告のなかには、シドニーが喋っている最中に彼女の胸にズームしていく、セクハラ気味な無礼をネタにする映像もあった。 

なかでも物議を呼んだのは、ジーンズを穿いたシドニーがカメラに語りかけるCM。

「遺伝子は親から子へと受け継がれ、ときに髪の色や性格、さらには瞳の色まで決める。私のジーンズはブルー」

──シドニー・スウィーニーは最高の遺伝子〈ジーンズ〉を持っている

簡単に言うと、これは言葉遊びだ。英語だと「遺伝子(Genes)」と「ジーンズ(Jeans)」は似ている。そして「最高の遺伝子」という表現は、美形や大きな胸への称賛にもなる。一方、こうした表現は差別用語としても使われる。とくに最近では、大統領が「多くの不法移民に殺人を犯す『悪い遺伝子』が刻まれている」旨の発言をして批判を集めたばかり。普通の企業広告なら審査でカットされる表現と言われている。

こうして、左派の人々がCMを「白人が金髪碧眼の遺伝子を誇るナチス的プロパガンダ」として糾弾していった──という説が流布されたものの、追跡調査によると、リリース当初、火元とされるXで明確な批判は少なかった。「左翼がこんな狂ったことを言っている」と唱えていった人気右派アカウントによる「批判への批判」の方がずっと多かったのだ。

SNSのごく一部の批判を「党派全体の意見」として誇張するインターネット炎上は珍しくない。しかしながら、今回の分岐点は、共和党の大物たちがCMを政敵たる民主党叩きに利用したことだった。シドニーが共和党員という噂を耳にした大統領が加勢したこともあり、保守派マスコミも「民主党が白人女子をナチス呼ばわり」と報じていく大騒動に発展したのだ(実際にこのCMをそのように批判した民主党議員は観測されていない)。

キャリアの将来は?

全国ニュースになったことで良くも悪くもタレントの知名度と企業の株価は急上昇したが、それぞれのキャリア、業績への影響はまだわかっていない。沈黙を貫くシドニーに対して「炎上商法で政治に手を出したのは愚かだった」と苦言する業界人も出てきている。

ともあれ、シドニー・スウィーニーの興味深い点は、すっかり「トランプ派」のイメージがつけられた今でも、俳優としてリベラル寄りとされる作品を選んでいることだろう。13キロの増量をして挑んだ新作『Christy』(2025)は、民主党を支援したこともあるレズビアンボクサーの伝記だ。制作中の『Scandalous!』では、異人種結婚が禁忌とされていた時代に黒人歌手と交際して物議を醸した白人スター、キム・ノヴァクを演じる。

変身するのが好きだというシドニーは、元々黒髪なため「お色気ブロンド」キャラも役柄のようなもので、本当の自分は世間に見せたことがないと語ったことがある。さまざまなイメージを持たれる存在だが、結局、本業は俳優。真価を問うなら、演技で評価すべきだろう。

辰己JUNKプロフィール画像
辰己JUNK

セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をメディアに多数寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)

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