デヴィッド・ボウイ#1

「デヴィッド・ボウイに演ってもらいたいと思ってるんだ」。大島渚監督が作家ヴァン・デル・ポストの『メリークリスマス Mr.ローレンス』を映画化する企画があり、主役の一人をボウイと考えていると聞いた時は唖然とした。もの凄く魅力的な企画だけど絶対無理だな、と原作を読んでもいないのに決めつけて。いや、原作を読んだら、そこに描かれている敵味方を超えた男同士の官能に、もっと難しいだろうな、と。これが『戦場のメリークリスマス』だ。

 

『戦メリ』の企画に懐疑的だったのは私だけじゃない。映画ではトム・コンティが演じたもう一人の捕虜役でオファーされていたジェレミー・アイアンズも「台本を読んだら、同性愛色が強すぎるような気がして断ったよ。でも完成した映画を観て死ぬほど後悔した」。彼がそれ以降『M.バタフライ』など妖しい役も好んで演じるようになったのは『戦メリ』のおかげ!? ちなみに坂本龍一、ビートたけしを役者として初起用したのも大島監督だ。

『戦メリ』以前のボウイは、『地球に落ちて来た男』には出演していても、普通の男の役には縁がなかった。「僕の映画をよく観てくれていたみたいで(笑)」と大島監督の嬉しそうな顔が忘れられないが、日本映画のみならず、大島監督の出身地、京都が好きだという共通項も。くしくも『地球に落ちて来た男』は今年ブロードウェイでミュージカル化される予定。ボウイも関わっていたというから、せめてオープニングまで生きていてほしかったな。

ボウイと同じ69歳で亡くなったアラン・リックマン。『ダイハード』の悪役や『ハリー・ポッター』のスネイプ先生の役で知られるが、彼も日本のクリエイターと深い関わりがある。蜷川幸雄が英国俳優を使って演出した舞台『タンゴ 冬の終わりに』がとても良かったのだ。日本公演も予定されていたが予算の関係で頓挫。映画監督としても優秀で、取材中、主演女優エマ・トンプソンとキャッキャ喋っていたら「うるさいぞ!」と怒られた。怖かった。

 

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ジャーナリスト佐藤友紀

映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。