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奇跡的に千秋楽に間に合ったシアーシャ・ローナン出演のブロードウェイの舞台『クルーシブル』。1692年のマサチューセッツ州を背景にした魔女裁判の話だが、今最もホットな演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェは、物語の鍵を握るシアーシャ扮するアビゲイルなど若い娘たちを、まるで現代の女子学生のような格好で演じさせていたのが印象的だった。アーサー・ミラーの原作を始め、'96年の映画版にしてもアビゲイルがすべての原因?といった描かれ方なのに、シアーシャが演じると一度関係を持ってしまった既婚男性への思いが断ち切れなかったのね、という別の側面を持つ。しかもその相手役をベン・ウィショーが演じているものだから! 演技の巧さが際立って、たぶんシアーシャ、これからも舞台の魅力に取り憑かれ続けるだろうな。
舞台と言えば『ハンナ』('11)でシアーシャと共演した時、彼女の才能を大絶賛していたケイト・ブランシェットが年末ブロードウェイの舞台でチェーホフ劇に出演する。演出はジョン・クローリー。そう、『ブルックリン』('15)でシアーシャにオスカー・ノミネートをもたらしたイギリスの演出家・監督だ。
このクローリー、かつて日本人の俳優を起用して別役実の『マッチ売りの少女』を演出。そのうちシアーシャにも、日本の戯曲を薦めてくれたら面白いのに。
「故郷のアイルランドの小さな町に戻ると私は普通の女子高生なの。お芝居と言っても文化祭でやるくらいで」と言っていたシアーシャの初々しさが懐かしい
例えば『17歳のカルテ』('99)で主演とプロデューサーを兼ねたウィノナ・ライダーもそうだが、作品の高さを求める時は、自分よりも目立ってしまう共演者の存在を受け入れなければならない。同作ではアカデミー賞の助演女優賞に輝いたアンジェリーナ・ジョリー。そして『つぐない』('07)では、主演のキーラ・ナイトレイではなく当時13歳のシアーシャがオスカー候補となってしまった。
「この映画では、やっぱりキーラが輝いていなければならないと思う。そうでないと私の演じる女の子の役の嫉妬心に説得力がなくなってしまうでしょ。キーラの役は難しいのよ」13歳にしてこの分析力。大したものです。
シアーシャの凄さは、自分と同じか近い世代の俳優たちと共演した時ももちろんオーラを放つが、相手がベテランの名優であっても臆することなくぶつかっていく点にある。
「スタンリー(・トゥッチ)はオフ・カメラではとても楽しくてフレンドリーで優しい人なのに、カメラが回り始めると一変するの。ああ、私、この男に殺されるんだわ、とゾッとするぐらい(笑)」とは、かつて『ラブリーボーン』('09)で共演したトゥッチについて。この作品のシアーシャの演技も絶賛された。
『ブルックリン』で要注目なのは、物語の後半、シアーシャ扮するエイリシュがある決意をするきっかけとなったいけ好かない商店主を演じる女優。かなり老けメイクをしているが、アトム・エゴヤン監督作などで知られるアイルランドの女優ブリッド・ブレナンでシアーシャにまた新たな刺激をもたらしたに違いない。
映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。