©Mary Evans/amanaimages
インタビューで、事前に用意していた質問ではない突然の思いつき質問に、「なるほどな」と感心させられる答えが返ってくることがある。『ある貴婦人の肖像』(’96)でニコール・キッドマンに会ったとき。タイトルにひっかけて、「あなたが一番好きな顔は?」と聞いてみたのだ。「人」じゃなくて、あくまでも「顔」。でも二コール、少しもためらわず、「ネルソン・マンデラ!! 」。こちらのびっくりした顔にキャッキャと大喜びして、「だって彼の生き方そのものが顔に出ているでしょ」。忘れられない一瞬だ。
ニコールの出演作に『バースデイ・ガール』(’02)というあまり知られていない作品がある。彼女の役はロシアからの花嫁なのだが、これには裏があって、という実は大のおすすめ作。「好きなのよ、こういうの。監督のジェズ・バタワースって演劇の方でも才能を見せているし、彼の『MOJO』という舞台には作家のハロルド・ピンターまで変態おやじの役で出ていたくらいで(笑)。それに、悪い女って『誘う女』(’95)もそうだけど、演じてて楽しいわ。もちろん大スケールの女のロマンも歓迎だけどね」。というわけで、新作『アラビアの女王 愛と宿命の日々』ではお望み通りの大ロマン。でも監督が玄人受けのヘルツィークというあたりが、やはりニコールの尋常じゃないところなんだけど。
一歩街に出るとたちまち大勢の人に囲まれてしまうスター。中でもニコール級ともなると「彼女、あんなに背も高いしゴージャスだからすぐ目立っちゃって可哀想」と同業者のヘレン・ミレンなどからも同情される始末。でも、「自分が気になる舞台や映画などは早めに観に行かないと」という好奇心がカッコいい。さらに「60歳になったら、『マスター・クラス』をやりたいわ。故郷オーストラリアの大先輩ゾーイ・コールドウェルの演技が素晴らしかったの」。なんか江戸っ子みたいに何事に対してもテンポの早い女性だ。
トム・クルーズとの結婚は「偽装」とか「ハリウッドでのし上がるための計算」とか言われていた二コール。ところが筆者ともう一人の日本人の女性ジャーナリストが既婚者だと知ると、「え? 夫を日本に置いて長期間留守にして寂しくないの?」と聞いてきた。携帯電話もメールもない時代の話。「私なんてそんなの耐えられないわ。トムと離れている時は、しょっ中電話かファックスで連絡を取り合っている。どんなに小さなことでもすぐ連絡するのよ。あなたたち、凄いのね」。ファックスというのが以外でもあり面白くもあり。
映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。