ディズニー・チャンネル出身の俳優は大きく化けることが多い。これ、以前から映画を観まくっている柳楽優弥の名言で、この時はザック・エフロンを念頭に置いて言っているんだけど、今さらながら「なるほどな」である。というのは、ライアン・ゴズリングも10代の頃からディズニー・チャンネルで活躍していたから。ただし、筆者が初めて彼と言葉を交わしたのは『完全犯罪クラブ』('02)でのインタビュー時で、若さよりもある種の落ち着きの方が印象的だった。後に十何歳も年上の主演女優サンドラ・ブロックと恋に落ちたと聞いて、妙に納得したものである。
『ラ・ラ・ランド』のプロモーションでデイミアン・チャゼル監督と一緒に来日したライアン。年下のチャゼルの映画オタクぶりもなかなかだったが、「撮影に入る前に古今東西のいろんな映画の話をした。特にどうしたらこのジャンル(ミュージカル)に貢献できるかということを」というライアンの真摯さも印象的だった。だからこそ、当方がチャゼルに質問した「今まで語られなかった映画で本作がインスピレーションを受けたものは何?」という問いに「鈴木清順監督の『東京流れ者』('66)だよ」なる答が返って来た時、ライアンも我々と共に「そうだったんだ!!」という反応をしたのだろう。延々、映画の話ができそうな人だ。
正直に言って、サービス精神があるスターというわけではない。が、ツボに入るとその熱演ぶりに唖然とさせられることも。例えば『ドライブ』('11)で、キャリー・マリガンと2人、エレベーターに乗っているシーン。もう1人の乗客も含め、皆無言でよくある日常の一場面のはずなのに、ある瞬間からとんでもない緊張感が伝わってくる。
「あのシーン、僕が演じたキャラクターは初期の段階から次の動きに備えるポーズを取っている。それも相手に気づかれないように。とっさにキャリーを守るのに最も適した動線をとれるように」
インタビュー中、突然立ち上がってそのシーンを再現してくれるものだから、同じフロアで他のインタビューをやっていた人たちもびっくりしていたっけ。
ミュージカル通を自認する人でも「ライアン・ゴズリングの役は、もっとブロードウェイのスターのような実力派が演じるべきだった」と言ったりして、わかってないなぁと心の底から思う。オスカー歌曲賞に輝いた“City of Stars”に代表されるライアンの歌唱のせつないこと。やはり「歌える」スターじゃなく「演じられる」スターだからこそのものだ。「ずっと前からピアノは習いたかったけど、いい機会だから大特訓したよ」というピアノ演奏の凄さもまた然りで、TV「カルテット」の4人ももっと頑張ろうと思ったのでは?
さあ次はいよいよ今年最大の話題作『ブレードランナー』。3回観て、その哲学性に気づかされた『メッセージ』(5月公開)。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督と組む。数分間の予告編だけでも凡百のSFと違うのがわかる出来!!
映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。