『光をくれた人』5月 TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー ©2016 STORYTELLER DISTRIBUTION CO.LLC
初めてナマ(?)のアリシア・ヴィキャンデルを見たのは、『リリーのすべて』('15)が発表されたベネチア映画祭の記者会見で。後にアカデミー賞最優秀助演女優賞にも輝く、主人公の妻役があまりに素晴らしかったので、他にどんな作品に出ていたっけ?とチェックしてみるとガ〜ン。『コードネームU.N.C.L.E.』('15)など観ているはずなのに顔の印象が全くない。実際記者会見に現れたアリシアも、一緒に座った共演者のアンバー・ハードなんかと同じで、フツーに美しい女性で、アンジェリーナ・ジョリーのように一発で覚えられる顔じゃないなと思ったのを覚えている。つまり、良作に出演し続けるのが映画ファンに記憶される必須条件だな、と。
マイケル・ファスベンダーと共演したデレク・シアンフランシス監督の『光をくれた人』もベネチア映画祭に出品され、アリシアのベネチア入りは、ジャーナリスト、映画ファンたちから熱狂的に受け入れられた。
「世界で一番歴史のある映画祭に参加できるなんて。もうここが第2の故郷みたい(笑)」
『リリーのすべて』『光をくれた人』ではクラシカルな装いが素敵だが、『エクス・マキナ』('15)はガラリとイメージが違う。
「だから俳優の仕事は面白いのよ。私の場合スウェーデン人というのもハンデにはならずにいろいろな役がやれる。オファーを受ける度に興奮しているわ」
『光をくれた人』のグループ・インタビューでアリシアを大笑いさせた質問は、「撮影現場の灯台のある崖とふもとの家までの行ったり来たり、ロングショットで撮られていたけど体力的にキツくなかった?」というもの。
「アハハ、確かにあれはかなりの重労働だったわね。しかも彼女は毎日何度も往復することもあるわけだから慣れた感じにしなければならない。でも、監督のデレクが世界中から最高のロケ地を探してくれたから、あの場に立ったら、スーッと彼女の気持ちになれた。そういう意味では、この映画、風景も重要な登場人物よ!」
インタビューの場にはマイケル・ファスベンダーと連れ立ってやって来たアリシア。鈍い筆者は、彼らに恋の噂があることにすら気がつかなかった。
「マイケルの仕事の選び方は尊敬しないでいられないわ。大作を引っ張っていく実力がありながら、ちゃんと『ハンガー』('08)<日本未公開のスティーブ・マックィーン監督作。傑作!>みたいなインディーズ系でも素晴らしいし」
『光をくれた人』で描かれた男女の愛については「胸がつぶれそうになるくらいせつない役だったけど、マイケルのサポートでやってのけられた。こんな愛の形もあるのよ」
映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。