photography:Masato Seto hair&make-up: Naoki Hirayama (Wani) 『ザ・ダンサー』6月3日公開
SOKOと書いてソーコ。一度聞いたら忘れられない名前は、自分でつけたのだという。
「親がポーランド系で、本名はステファニー・ソコリンスキというの。音楽活動もソーコ名でやっていたから、演じる時もそうしたのよ」
ショパンの昔からフランスとポーランドは密接な関わりがあり、映画界でもジュリエット・ビノシュがポーランド系で、ゆえに『存在の耐えられない軽さ』('88)のヒロインのように同じ東欧系のチェコの女性を演じても違和感もなかった。
「でも『ザ・ダンサー』で私が演じたロイ・フラーは活躍した場所こそフランスだったけど元々はアメリカ人だから、むしろその辺りはあまり意識しなかった。英語もある時期アメリカに住んだりもしていつの間にか喋れるようになっていたし(笑)」
ボーダーを軽々と越えている。
ロイ・フラーのダンスは独特で、『魅せられて』のジュディ・オングのドレスの裾の2倍以上もあるような、つまり長〜い棒にたっぷりの布をからめてエンドレスに回転したりするというタフなもの。
「ステファニー・ディ・ジュースト監督は当然ダンスシーンにはスタンドイン(吹替え)を使うつもりでいたみたい。でも私は絶対にそれはイヤだった。ロイ・フラーという女性を演じるのなら、彼女が創り出した芸術も自分でリクリエイトしたいと思ったから。映画の中には彼女が体を酷使しすぎてアザができたり氷で冷やしたりする場面があるけど、あれ本物よ(笑)。肉体的にも物凄く大変だったけれども、ロイが感じた過酷さを追体験できて良かったわ」
「ボルドーという地方育ちだけど、母親は私がやりたいことを何でもやらせてくれた」
ソーコはこう言うが、その一つ、演技は自分の方から「演劇学校で習うのは何か違うような気がして、途中でやめた」とか。
それでもヴァンサン・ランドンやキアラ・マストロヤンニなどと共演した『博士と私の危険な関係』('12)は、高名な精神科医の患者となる19世紀末の女性を自慰シーンも厭わずに体当たりで演じ、高く評価されている。
「自分がしっかり役の準備が出来て、監督との信頼関係が構築されていれば、リミットを設けることなく演じられる。他人の評価は関係ないわ」
元々ロイ・フラーが創ったダンス、締めつける衣装を脱ぎ捨てたイサドラ・ダンカンのダンス、と近代の女性の舞踊はフェミニズムの精神と関連づけて語られることが多い。あのマドンナが、ソーコを起用して国際女性デーのための短編映画『Her Story』を撮ったというのも、そういう意味では大納得だ。
「そうなのよ!マドンナの方から私にアプローチしてくれたの。『ザ・ダンサー』を見てピンと来るものがあった、と。彼女自身、小さい頃はダンサーを目指していたというし、体も心も解放することの意義を知り、今も闘っている女性だから、声をかけられて光栄だったわ。これからも新しい地平を拓けるよう、頑張りたい!」
映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。