トム・クルーズ #21

『バリー・シール/アメリカをはめた男』 10月21日(土)全国公開 © Universal Pictures
『バリー・シール/アメリカをはめた男』 10月21日(土)全国公開 © Universal Pictures
 

『タップス』(’81)と新作『バリー・シール/アメリカをはめた男』。トム・クルーズが出演した映画の中で「最もヘアスタイルをキッチリ決めていた1作」と「ボサボサ・ヘアにも程がある1作」だ。しかも少年陸軍学校の生徒を演じた前者は太っちょ少年なのに、後者は50代なのに相変わらずカッコいい身体のラインで。「レスリングをやったりしてたから、体を動かすと言ってもスレンダーなアスリート体形ではなかったな。フランシス(・フォード・コッポラ)の『アウトサイダー』の中でも一番チャビー(太っちょ)だったし(笑)」と、かつて語っていたトム。ちなみにこれ、「10代版『ゴッドファーザー』(’72)だよ」とコッポラ監督自身も言う『アウトサイダー』(’83)のこと。ちなみに「あのメンバーで『荒野の七人』(’60)をリメイクするとしたら、トムがユル・ブリンナーの演った主役だよ」とまで言っていた。大出世だね。

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そのコッポラ監督との強い絆を目撃したことがある。ピナ・バウシュの公演を観に、シチリアのパレルモに行った時のこと。テーブルが二つしかない鮮魚店兼トラットリアに入ったら、店主が1枚の写真を持って来て、「誰との2ショットかわかるかい?」。それは、その店で撮ったトム・クルーズとの写真で、「ちょうどここパレルモで撮影中の『ゴッドファーザーパートⅢ』('90)に来てたんだってさ」。
後年、トム自身に確かめたら、「ああ、あの鮮魚店(笑)。おいしかっただろ? フランシスが撮影するときはなるべくセット・ビジット(訪問)してるんだ。すべてが勉強になるし、もしかしたら突発的に役をもらえるかもしれないじゃないか(笑)」。ジョークもなかなか素敵。

トムが「スーパースターになるアシストをした」とエバっているのが 演出家ロバート・アラン・アッカーマン。日本でも二宮和也主演で『見知らぬ乗客』などを演出している。
4人の若者の青春を描いた。『スラブ・ボーイズ』をブロードウェイで上演した時、オーディションで無名時代のショーン・ペン、ケビン・ベーコン、ヴァル・キルマーを選んだ。4人目はトム・クルーズだったが、皆どこか似てしまうので、ジャッキー・アール・ヘイリーに代えたんだ。でもそのおかげで、トムは『卒業白書』(’83)に出演。大スターになったんだよ」。ただしトムいわく、「舞台でももっと経験を積みたかった」そうで、そんなものなのかもしれないな。

「自分の信念として、スタントは人任せにしないで自分自身がやる」と常々言っているトム。『ミッション:インポッシブル6』の大事故の映像は、本当に痛そうだった。「スタントをやる時は物凄く時間をかけて準備するし、周りは一流のスタッフばかりだから信頼しきっている。スタントのフリをして、シーンをさもそれ風につなげなければならない方が、僕には大変なんだよ」。そう言えば、トムの元嫁ニコール・キッドマンも「スカイダイビングぐらいだったら、自分でやっちゃうわ」と言っていたけど、エージェントや保険会社をもダマらせる迫力がスターにはあるのだろうか? ま、トムのことだ。リハビリとか超頑張っちゃいそうだけど。

ジャーナリスト佐藤友紀プロフィール画像
ジャーナリスト佐藤友紀

映画や舞台、ダンスに造詣が深く、独自の視点で鋭く切り込むインタビューに定評が。ジョニー・デップから指名されることも多々。

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