2月26日から3月1日まで開催された2024-25年秋冬パリファッションウィーク。シルエットやディティールなど、「潮目が変わった!」と感じるニュートレンドが満載でした。現地を取材したSPUR編集長NとエディターMが、キーワードとともにコレクションをプレイバック!
1. オータムパステル
エディターM(以下M): 怒涛のパリファッションウィーク取材、お疲れ様でした〜! 今季まず新鮮に感じたのが、パステルでした。思わず「秋なの〜に〜♪」というフレーズが頭をよぎったほど……。秋冬でお馴染みのグレーやボルドーカラーももちろんありましたが、あたたかみのあるパステルカラーが断然、フレッシュに見えましたね!
編集長N(以下N): 特筆すべきは、ドリス ヴァン ノッテンでしょう。一見スイートなラベンダーやピンク、ピスタチオグリーンなどのシェードは展示会で実物を見ると、絶妙にくすんでいたり、思いがけない色合わせをしていたり。そんな特徴的なカラーパレットをドリスさん自身は「ストレンジカラー」と呼んでいるらしい!
M: ワントーンで魅せる手法だけでなく、補色になる色を合わせたり、彩度の高い色と合わせたりしているのが新鮮でした。
2. 丸いフォルム
M: ミラノのレポートでもラウンドシルエットがトピックに上がっていましたが、丸い肩は本当に多かったですね。パリではサカイのようにもっと大胆な「マル」がちらほら。全体のシルエットにも少し変化があって、カーヴィーになった気がしました。
N: そうね、今回新しいフォルムの提案が多かったけれど、特にまあるい肩や袖が多かった。トップスだけでなくボトムスでもサルエルパンツやバルーンパンツのようなふわっとしたシルエットも増えたよね。
M: ロエベで見た、生地をたっぷり使ったバルーンパンツは、トップスがコンパクトな分、エクストリームな丸みがより強調されていました。
N: 丸い肩ならウエストはぎゅっと絞る、トップスにボリュームがあるならボトムはコンパクトにするなど、メリハリのあるシルエットにまとめるのが鍵になりそう。
3. トランスパレンシー
M: 「トランパレンシー」とは、サンローランのクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ヴァカレロさんが掲げたキーワードですが、どのブランドにも全身透け透けなルックがたくさんありました。
N: 一部だけでなく全身が、と言うのが今季のポイント。特にサンローランは服だけでなくバングルまで透明に。「肌をデザインの一部に」という流れから、もはや服を肌と一体化させる、もしくは女性の体そのものの美しさを讃えたい! という意図を感じました。
M: ドレスだけでなく、トップスとボトムの組み合わせだけど両方しっかり透けているというのが新しく感じました。実際にはどのように着たらいいか悩みますね〜!
N: ドリス ヴァン ノッテンのようにシャツと重ね着をするのは、リアルで素敵なアイディアだね。カルヴェンみたいに、インナーのカラーをブラックやベージュでなくカラーにすると“下着”っぽさがなくなり、オシャレだと思う。
4. 日常を祝福する服
N: MIUMIUの2023年秋冬コレクションの影響から、Tシャツやスエット、シンプルなカーディガンなど、一見なんでもないデイリーウェアをひねる、というアイディアが豊富に。フリンジやビジューなど装飾的要素を施したり、組み合わせで新鮮に見せたりする提案も引き続き多数。
M: ビーズなどのキラキラ素材からなるフリンジや、フラワーモチーフを使ったレースやスパンコールなど、歩くたびに揺れたりきらめいたりする様子が楽しげでわくわくしました。アイテムそのものやコーディネート自体はベーシックだから、普段のスタイリングにも取り入れやすそう。
N: アンダーカバーのショーで流れていたのは、女性の日常を描写した詩。ヴィム・ヴェンダースが自ら創作し朗読したもので、映画『PERFECT DAYS』に通じるストーリーを感じました。
5. 今またクロエが着たい!
M: トレンドキーワードとして、あえてブランド名を……というのも、これは今回のパリファッションウィーク一番のニュース。新クリエイティブ・ディレクターのシェミナ・カマリが就任して初めてのショーで、「そうそう、クロエってこうだった!」というルックがたくさんありました!
N: 原点回帰にファッションラバー歓喜の空気を感じました。ラッフルのドレスやブラウス、白いレースにデニムなどいかにもクロエらしいウェアに、カール・ラガーフェルド、ステラ・マッカートニー、フィービー・ファイロ時代のアーカイブスの要素がちりばめられ、キャッチーな仕上がりに。
M: 大ぶりのゴールドのジュエリーや再解釈された名作バッグも登場! これは争奪戦になりそう。「Chloe」という筆記体のベルトの文字は、カール・ラガーフェルド時代から。柔らかな書体がブランドの今のムードとフィットしていました。
6. ファーじゃないもふもふ
N: ニットをさまざまに駆使した量感のある「もふもふ」を表現していたブランドも気になりましたね!
M: ループ状の糸でブークレ加工したり、フリンジと組み合わせたり、複数色使うことで立体感を増したり……と、アプローチもさまざまでした。
N: スキニーなボトムやツヤのある素材と合わせてコントラストを出すのが旬なスタイリングだね。ファーの代替というよりは、今シーズンのトレンドである「ボリューム」の表現なのかな、と。
M: メリハリのあるプロポーションは、ベルトマークの提案などもあり、全体的に多かったですね。実際に購入できるのはまだ先ですが、今すぐにでもできそうなカラーパレットやバランスには挑戦してみたいと思います。2024-25年秋冬のファッションウィークをキーワードでお届けして来ましたが、本誌でも総力レポート記事を、今後掲載する予定です。お楽しみに〜!
冷たいビールと川遊びを愛する夏原理主義。首の詰まった服をよく着ています。