NYファッションウィーク前半のムードは、今も街でリアルに流行中のピンクを筆頭に、気分を明るくさせるようなカラーパレットが勢ぞろい。トム フォードがピンクのルックで先陣をきると、続くカルバン・クライン 205W39NYCはカラーブロックのシャツをはじめ、色が効いたコレクションを発表。人気上昇中のシエ・マラヤンは、今季も継続して淡いミルキーカラーを提案した。香港の旅から着想を得たアディアムは、服もメイクもソフトなピンクが印象的だ。
他にも、彩り豊かなプリーツを使ったトーメ、クリア素材をポイント使いしたティビなど、濁りのない明るい色が目立つ。また、アフリカに着想を得てビビッドカラーを取り入れたサイモン ミラーや、ダイアン フォン ファステンバーグのようにパワフルな色と色の組み合わせも。こうした色の波は、今のアメリカ社会の状況に対して、「前を向いていこうよ」というメッセージのようにも感じられる。
アイテムでは、ゆったりしたワイドパンツが優勢。ハイウエスト、オールインワン、デニムなどバリエーションは存在するけれど、どれも着心地がよさそうなのが共通項だ。ドレスやスカートの丈は長めで、バイアスカットや、プリーツ、シルクサテン素材など、歩くたびに揺れるような軽やかさが目をひく。
象徴的なのは、緑に囲まれたガーデンでショーを行ったトリーバーチで、ソフトな生地をロングアンドリーンのシルエットに仕立て、休暇を楽しむようなリラックスした雰囲気を作り出していた。また、生地をたっぷりと使ったカルバン・クライン 205W39NYCのテント状のスカートほど極端ではないにしても、裾まわりがゆったりと広がるAラインのスカートもみかける。こうしてみると、色もアイテムも、明るく、優しく、柔らかくというのがキーワードになりそうだ。
そして、もし旬のモデルをみたいならアレキサンダー ワンをチェック。#WANGFESTとハッシュタグが書かれた黒塗りのバスから、突如、豪華モデルが降り立ち、マンハッタンの路上でゲリラファッションショーを敢行した。今季一番のイットモデルのカイア・ガーバーや人気のベラ・ハディッド、日本からは水原希子の姿も。この試みは伝統的な形式で美しいショーを見せたトム フォードとは対照的で、ちなみに地元メディアでは賛否両論。各デザイナーがコレクションをどのように誰に向けて発表するか、それぞれのブランドの立場で考えて異なる選択をしているのが印象づけられた出来事だった。
EDITOR'S MEMO
- トム フォードのアフターパーティは、オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブローのヴァージルがDJ。会場には、どこからこんなにと思うほど大勢の半裸のマッチョメンが集結してドリンクやフードをサーブしていた。
- カルバン・クライン 205W39NYCのウォーホルの作品をプリントしたデニムは今季のマストバイ。同じシリーズのキャンバスバッグも物欲を刺激される。
- アレキサンダー ワンの豪華モデルを乗せたバスは、ゲリラショーのあと、事前に招待状で告知されていたブルックリンの倉庫街の会場へ移動。集まったメディアとセレブリティがともに狭いスタンディング席で待つなか、1時間遅れでショーがスタートした。そしてあっという間に終了。観覧したキム・カーダシアンは、ショーが終わった瞬間、出口へ大股で歩いて行った。