NYコレクション後半戦。トレンド要素満載のリアルクローズに、物欲を刺激されたSPURエディターを迎えるのは、モードシーンの新たなスターデザイナーと、ベテラン勢によるスペクタクルなショー。大幅なスタート時間の遅れで物議を醸したデザイナーとは?
【プラバル・グルン】ネパール出身のベテラン、プラバル・グルン。TASAKIによる新作ジュエリーも
プラバル・グルンのショー会場に足を踏み入れると、そこは彼の出身地であるネパールの伝統的な5色の旗「タルチョ」が天井から大胆に飾られ、NYにいることを忘れてしまうほど。カラフルな配色は、新作コレクションにも通じます。多数登場したフェミニンでタイトなリブニットも鮮やかなピンクやグリーンに染められ、会場を彩りました。TASAKIのクリエイティブ・ディレクターを務める彼。残念ながら上手に写真を撮れませんでしたが、大ぶりの耳飾りがスタイリングをモダンに引き締めていました。
【シエ・マラヤン】NYきってのライジングスターが提案する、トーン・オン・トーンのリアリティモード
次世代のNYモード界をリードするサンダー・ラックが手がける、シエ・マラヤン。今回は特に、センシュアルでモダンなトーン・オン・トーンが冴え渡っています。カーキのコットンシャツにレザーのスカートとパンツを合わせたり、プリーツ素材のセットアップに一枚インナーを差し込んだり、同色でまとめたスリーピースのスタイリングは今すぐにでも取り入れたいアイデア。アナ・エワースやマルゴシア・ベラなどトップモデルと共に、彼の母親もランウェイに登場し、エモーショナルな一面も。今後の活躍に期待が高まるコレクションでした。
【3.1 フィリップ リム】得意のクリーンなスタイルを新鮮に見せる、レトロなプリント使い
小雨が降る中、アートスクールの屋上で披露された3.1 フィリップ リムの新作。ロング&リーンなシルエットをベースに、全身オフホワイトのクリーンなルックが登場したかと思えば、フリンジやカフタンドレスでエスニックなスパイスも。異国情緒とフューチャリスティックなムードがコンバインした美しいコレクションは、リアリティを忘れないロマンティシズムが漂っています。後半登場したレトロなプリントが目を引く可愛さ!
【アナ スイ】注目すべきはランウェイだけにあらず。来場者が目を輝かせた、ファッションエトセトラ
魅惑的なグランドバザールが出現したアナ スイのランウェイ。しかも、アナオススメのヴィンテージベンダーが出店しており、ショー前から本気のショッピングが楽しめるとあって、ソフィア・コッポラも真剣に物色していました。異国の旅人のような気分に浸りながら見たコレクションでは、サイクリングジャケットやフィッシャーマンベストなどユーティリティウェアが登場するも、アナスイらしいゴージャスなジャカードやブロケードなどで仕立てられ、唯一無二の存在感を放ちます。モデルたちもいつもよりリラックスムード。毎回アナのショーを見ると感じるのですが、モデルたちが本当に楽しんで歩いていて、アナの服には纏える喜びが詰まっているようです。
【コーチ 1941】ハリウッド映画さながらの舞台演出に興奮、タフな女性像で我が道を行く
ここはまるで、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に登場するウェイストランドじゃないかー!とひとり興奮を隠せなかったコーチ 1941のショー会場。砂漠化した土地に、廃棄物で作られた巨大な恐竜のオブジェ。さらに興奮したのが、ランウェイで打ち出された女性像。ファーストルックもクロージングルックも、まるで前述の映画に登場するキャラクターのフェリオサのようなスキンヘッド。同じく映画内の5人組、ワイブスたちのワイルドな佇まいを彷彿とさせるヴィクトリアン調のプレーリーガールドレスも印象的。スチュアート・ヴェヴァースが思い描く、タフでしなやかな女性像が、ハリウッド映画さながらの世界観を一層引き立てました。
【カルバン・クライン 205W39NYC】名画のギミックが交錯する、ラフ流ビーチスタイル
ウォールスクリーンに海を泳ぐ女性の映像が流れ、恐怖心を煽る『ジョーズ』のテーマ曲とともにスタートしたカルバン・クライン 205W39NYCのランウェイ。ヘアスタイルだけでなく、肌もびっしょり濡れています。テーラードジャケットやドレスの下にスキューバダイビングのウエアを差し込むスタイルが特徴的。後半になるにつれ、映画『卒業』にちなんだルックも登場。ラフ・シモンズ的アメリカの再解釈はなんともユーモアたっぷり。『ジョーズ』Tシャツはかなりキャッチー。個人的には、シャープなラバーブーツがレインブーツとして使えるんじゃないかと、ショッピングリストに加えました。
【マイケル コース】NYファッションウィークといえばこの人。トロピカルなプリントで、常夏の陽気を表現
時にはカリブの海、時には南仏のビーチ。今季のマイケル コースはさまざまな海辺へと誘います。トロピカルな花柄ドレス、メキシカンパーカ、マクラメ編みのウエアなどビーチサイドで映えるスタイルがランウェイを彩ります。特に、マドラスチェックのガーリーなワンピースにフサフサキャップというスタイリングに胸きゅん!
【マーク ジェイコブス】ファンタジー溢れるクリエイションに感動、1時間半の遅刻もご愛嬌?
ニューヨークのフィナーレはマーク ジェイコブス!ここ10年間は必ずオンタイムで始まっていたため、15分前には着かなくちゃ!と急いで会場へ。ところが、予定時刻を過ぎても始まらず、場内騒然。かの”プラダを着た悪魔”も痺れを切らしてどこかに電話をかけている様子。そんなドラマがありながら、結局1時間半押しで始まったショーは、一言で言って感無量でした。待った甲斐があったと思わせる説得力。ロマンティックでエッジィで、過去へのオマージュが感じられる、エモーショナルな瞬間でした。ファッションが叶えられる夢という夢を服に詰め込んだようなパステルトーンのドレスたち。特に10月号にインタビューが載っているリリー・ノヴァがピンクのドレスで歩いている瞬間は、おとぎ話の世界に誘い込まれたような摩訶不思議な気持ちに。いつまでも余韻に浸っていたい。そう思わせてくれるマーク・ジェイコブスはやはり天才です。