【PFW 19SS】ファッションサーキットを締めくくる、パリコレクションのハイライトをおさらい

ファッションウィークならぬ、ファッションマンス(月間)を締めくくるのは、もちろんパリのビッグメゾン。毎シーズン話題を集めるスペクタクルは、見ているだけでもため息をつくこと間違いなし。年末にかけてのホリデーシーズンのセレブリティスタイリングの予習、そして来シーズンのワードローブ計画のために、話題を集めたコレクションをおさらいしてみよう。

 

【エルメス】秋空を背景に駆け抜ける、極上のファンクショナルスタイル

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静かで強い服でした。ロンシャン競馬場の新しくお披露目となったスペースで行われたショー。背面のミラーに青空が映し出され、清々しくドラマティックなステージとなりました。テーマはセーラー&サドラー(馬具職人)。エルメスらしい乗馬のディテールを随所に配しながら、今回は海辺のワークウェアとスポーツのテイストをふんだんに取り入れています。柔らかなレザーやスウェードが、フーディのコートになったり、つなぎになったり。たっぷりと布を使って量感を出し、ドローストリングを用いてギャザーを寄せることで、張りのある素材から柔らかな表情が生まれます。足元は全て、履き心地の良さそうなフラットシューズ。今、モードな服に女性が求めるクオリティの一つに、「機能的であること」があると思いますが、エルメスの服はまさに、「上質なファンクショナル」でした。

 

【バレンシアガ】世界最大級のLEDパネルとビッグシルエットが生み出す、鮮烈な“デムナ=イズム”

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リュック・ベッソンが手がけたという映画施設で開催されたバレンシアガのウィメンズ、メンズ合同SUMMER 19コレクションショー。何よりまずインパクトを放っていたのが、LEDパネルをトンネル状に配したランウェイ。こちらなんと、ピクセル数、面積ともに世界最大級とのこと。カナダ人アーティスト、ジョン・ラフマンによるコンセプチュアルな映像作品に包まれて登場したモデルたちが身を包むのは、デムナ・ヴァザリアが得意とする、オーバーサイズのジャケットやアウター、そしてボディコンシャスなドレス。ストリートシーンを席巻するバレンシアガですが、今季はいつになくストイックな印象。終盤に登場したエレガントなサテンのドレープドレスに、次なるトレンドの片鱗を垣間見ます。

 

【ヴァレンティノ】軽やかなボリュームと見事なカラーパレットが紡ぎ出す、女神たちのデフィレ

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ファッションが与えてくれる高揚感に満ちたショーでした。キャンバスとなるのは、バルーンスリーブやプリーツなどゆったりとフェミニンなシルエット。ボリュームをもたせゆとりを作ることで体と服の間にパーソナルスペースが生まれ、女性の体に自由が生まれる。そして自分自身に戻れる、という意図です。フェザーやプリーツが軽やかさを添えます。まずは黒の一連から始まります。黒だからこそ際立つ、ボリュームの遊戯や、ドレープの美しさ。これを牽引したのはクリスティン・マクメナミーです。銀髪を風になびかせながら堂々と歩く姿は神々しいほどの美しさ。その後をマリア・カルラが続きます。黒のコレクションはやがて鮮烈な赤へ、そしてピンク、オレンジ、青、紫、茶といった色のエクスプロージョンに。マラケシュに着想を得た花鳥風月のプリントが、さらに華やかさを盛り上げます。羽のような細工が施された大きなラフィアハットを見れば、夢の世界に引き込まれるよう。新しさがあるのに、奇抜でなくロマンティック。今季もスタンディングオベーションでした。

 

【ステラ マッカートニー】柔らかなパステルカラーが映し出す、現代女性のしなやかさ

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女性らしくやわらかなムードに包まれたコレクションでした。ファーストルックは、ネオプレン素材のコンビネゾン。このサイクルジャージ風アイテムにノスタルジックな花柄がのり、コントラストを描きます。もう一つキーとなっていたのはタイダイ柄。洗いをかけることでパステルカラーに仕上げ、優しい表情に。ブランドのアイコン的アイテムであるテーラードのセットアップも、今回はいつにも増してソフトな風合いです。ラストルックは、肌が透ける小花柄のドレス。細かいフリルを裾と身頃に曲線的にあしらい、花弁のような一着に。ガーリーモード好きにはたまらない、可憐なルックでした。

【サカイ】もはや安定感すら漂うサカイ、注目はヴィンテージ風のフローラルプリント

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確固たるサカイのスタイルをベースに、今回は左右不均衡というギミックを効かせてコレクションを発展。ミリタリーケープやフィッシャーマンズベストは、その機能性を保ちながら装飾を加え、形を変えていきます。白と黒から始まり、徐々に色と柄が濃厚になっていく様は、とてもドラマティック。抽象的なフローラルプリントは、Henri Kvanskiによるヴィンテージデザインへのオマージュだそう。

 

【シャネル】グランパレがビーチに!開放的なムードに包まれた珠玉のサマーワードローブ

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今回はなんと会場に海が誕生しました!しかもちゃんと波が寄せては返しています。砂浜の上を歩く際には、モデルは裸足。サンダルは片手に持ち、ウッドデッキのランウェイに着いたら履きます。そのサンダルは、クリア素材のシンプルなミュールでした。ファッションにも、海の香りが。ツイードジャケットにはパステルカラーやネオンカラーが織り込まれ、ポップな表情を生み出します。ジャケットは80年代風のビッグシルエット。スイムウェアが出てきたり、タオルを首に巻いているようなスタイルがあったり、ラフィアハットを被ってきたり。ビーチに出かけたくなる、ハッピーなムードに溢れたコレクションでした。

 

【ミュウミュウ】今季も絶好調、ミウッチャのダークロマンティシズムとパランス感覚

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ミュウミュウのコードがたっぷりと散りばめられたコレクション。始まりはシルクタフタのビッグリボン、コサージュがポイントとなったドレス群。膝丈スカート×ハイソックスにサンダルという、ミュウミュウ定番のバランスで進みます。そこからテーラードジャケットが加わりレディな雰囲気に。黒を通って、デニムドレスの一連へと流れます。スタイリングやひとつひとつのアイテムはベーシックですが、クリスタルのイヤーカフやカチューシャなど、小物使いでクァーキーな味付けを施していきます。黒、赤、紫といったカラーパレットも相まって、ほんのひとさじの闇が感じられます。だからミウッチャが生み出すガーリーはふわふわとは無縁で、尾を引くように心に残るのですね。

 

【ルイ・ヴィトン】過去、現在、未来。時空を超えたニコラ・ジェスキエールのスペース・オディッセイ

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パリコレクションの最後を飾ったのはルイ・ヴィトン。ルーヴル美術館の噴水を囲むようにスペーシーなランウェイを設営。来場者を近未来の旅へと誘いました。このコレクションから想起されるのはスティーヴン・スピルバーグ監督のSF映画『レディ・プレイヤー1』。現実ではなくまるでゲームの中のバーチャル空間に生きているような、冒険家のための服。80年代を感じるシルエット、宇宙服を思わせる肩の張り、ラバーやネオプレンなどハイテク素材、そしてメンフィスグループを思わせるプリント……。洗練されたサヴォアフェールが、ノマド的な味付けをほどこしていきます。ハイパーだけれど、どこか懐かしさも感じる。未来を見つめているようでいて過去を振り返っているようでもある不思議なコレクションでした。

 

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