ジャン=ポール・ゴルチエによる最後のオートクチュール、2020年春夏コレクションがパリで発表された。会場はテアトル・ドゥ・シャトレ。
オーケストラが奏でる、エイミー・ワインハウスの名曲『バック・トゥ・ブラック』に合わせて幕が上がると、そこにはズラリと並んだモデルたち。皆オールブラックのルックに身を包み、喪に服しているよう。5分程度の "ストライク・ア・ポーズ" の途中で、歌声の主がボーイ・ジョージだと分かると、会場は割れんばかりの歓声で包まれた。
ランウェイに登場したのは、ゴルチエがこれまでに発表してきたアイコニックなルックの数々を復刻させたメモリアルピース。テーマ毎に照明が変わり、その都度ライブパフォーマンスが加わる。ディータ・フォン・ティース、ロッシ・デ・パルマ、エリン・オコナー、ファリーダ・ケルファ、アマンダ・レアなど、メゾンのミューズが登場する度に拍手。ある種の伝統芸能だ。
1時間弱という、前代未聞のロングショーのフィナーレでは、再びモデルが全員集合し、ボーイ・ジョージのパフォーマンスに合わせてダンス。デザイナーが姿を表すと、会場全体にスタンディングオベーションが起こる。オートクチュールという文化を体現してきたレジェンドの功績を称え、鳴り止まぬ拍手喝采の中で幕を下ろした。
photos and text:Shunsuke Okabe