NY、ロンドンから続き、あっという間にミラノファッションウィークもスタート。NYと同様にフィジカルで開催される有観客ショーも多く、オフランウェイには久々にパパラッチの姿も。発表されたコレクションは長きに続くパンデミックという現実と冷静に向き合い、それぞれ前を向いていこう、というデザイナーの意思を感じるシーズンだと感じています。まずは前半戦をプレイバック。
【JIL SANDER】心地よさと緊張感が同居する、私たちが着たい服
JIL SANDERから感じたのは静的な癒しのムード。空間は、壁も床もスツールに至るまで、ライラックに染まっています。心地よいハープの音色に合わせ、ボックスシルエットのジャケットが目を引くファーストルックが登場。アシンメトリーに配された襟にはどこか貴族的なニュアンスも。ソフトなシャーベットカラーを基調としつつ、パンチのある“虎柄”が差し込まれていたり、ワントーンでも異素材を組み合わせて遊びを加えていたり。スタイリングの妙も随所に。実際に触れて、着てみたいというモチベーションが高まります。携えた三角形の筒型のバッグはキャッチーな存在感があり、ヒットの予感。ラストには、ルーク&ルーシー・メイヤー夫妻が手を繋いで登場しました。以前SPUR本誌でインタビューした際にもお互いへの信頼が感じられる関係性が印象的だったことを思い出しました!
【MM6 Maison Margiela】レストランで繰り広げられる“超現実”な服たち
会場となったのは、ローカルな人々御用達のレストラン、La Belle Aurore。待ち合わせ場所としても人気のスポットです。インビテーションとして届いたのは赤と白のチェックのナプキン。シートには軽食のボックスも用意され、軽快で楽しげなプレゼンテーションです。気軽なパーティのある日常こそ私たちが望むもの、というメッセージが伝わります。
日常生活が戻りつつあるミラノで、そんな当たり前が存在する喜びをシンプルに享受するムードがあったように思います。
JIL SANDERのアシンメトリーな襟に対して、こちらは“ピエロ襟”と呼びたい様な立体的なギャザーが寄せられた首もとが印象的。またレザージャケットの後ろ身頃から突き出したようなスリーブのディテールにも目を奪われます。不思議な位置から“生えた”ような袖に加えて、エコファーのトローリーや白地のバックパックをキャンバスに、黒バックパックの転写プリントを施したり、などのトリッキーなデザインに注目。トロンプルイユのような仕掛けも随所に。シーズンのインスピレーションは、Claude Cahun(クロード・カウン)をはじめとするシュールレアリズムを代表する女性芸術家たちの作品。アーティスティックなアプローチはとてもブランドらしくもあり「この服はどんな仕組みなんだろう?」と心をくすぐられました。
【ETRO】今こそ、楽園のムードが必要だ!
ここ数シーズン、ETROを象徴するペイズリー柄が気分です。ヴィンテージが流行していることもあり、装いにレトロなディテールを取り入れたいんです。今シーズンはそんな70年代をベースに、90年代のエッセンスを取り入れて表現。リゾートへと脳内トリップさせるかのような、現実からのエスケープへ誘うような。ポジティブな装いに元気を貰えます。
曼荼羅のような模様を描くフラワー柄に、繊細なペイズリー柄も健在。モデルのSoo Jooが着こなすテーラードのルックは、90年代らしいソリッドなシルエットです。足もとはサンダルでリラクシングに。パーティライクな輝くメイクアップも気になるポイント。数ルックで散見されたクロシェ編みのコンパクトなキャミソールも象徴的です。その上にさらりとジャケットを重ねて、リゾートと都会らしさを兼ね備えて。ジャージのようなラインが施されたボトムスのスポーティなミックスも今らしいスタイル。大振りな花柄のタイトなトップスに、メタルパーツを繋いだ装飾的なスカートを重ねるルックも、短いレングスがフレッシュな表情です。
華やかな柄を着るということは心に高揚感をもたらす栄養剤であり、マインドフルネスでもある。今こそポジティブで太陽を感じるウェアを着るときだ!というエネルギーをもらえました。
好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。