パリ・ファッション・ウィークもフィナーレを迎えましたが、その前に、中盤戦の注目ルックにフォーカス。トレンドを牽引するブランドがひしめく中、リアリティがありながらちょっと変、ユーモアがありながら、着てみたい! そう思える絶妙なバランスを披露したのは? 一歩も二歩も先ゆく提案に、モードのパワーを実感します。
【LOEWE】ジョナサン・アンダーソンの新章始まる
これは、なんだ?と2度見、3度見してしまったこちらのドレス。前見頃を覆うゴールドのメタルプレートを組み込んでおり、一瞬メタヴァース的世界を見せられているのかと錯覚してしまいました。しかし、現地ジャーナリスト乗松美奈子さんから届く動画では、確かにリアルなモデルが着用して歩いている。どうやら、「作り変えられたボディを描いたもので、着飾るという現実を別の次元へと拡張する」ものだそう。ウォーキングを見ていると、伸縮性のいい生地で仕立てていて、袖を通してみたい気持ちに駆られます。見たことがあるようで無い、新感覚のルック。ルネサンス期の画家ポントルモの感情的なマニエリスムの世界に着目したという今季のジョナサン・アンダーソン。古典様式の殻を破るように、既存のコードに囚われることなく挑戦したいという意気込みを感じます。
そして、サンダルのヒールをご覧ください。チャーミングな遊び心に、日頃の疲れも吹っ飛びます。
また、スケルトンのスニーカーもいい!堆肥化可能 なプラスチックを採用している一足。未来の定番になりそうな予感です。
【BALENCIAGA】 ファッションと娯楽・文化・テクノロジーをミックス
映画祭のレッドカーペットを模した演出で幕開けしたランウェイは、エンターテインメント感満載。新しいコレクションを纏ったゲストたちが短編映画「The Simpsons I Balenciaga」を上映する劇場に入っていきます。アニメーションの中では、バレンシアガのアーカイブスを着用したキャラクターが登場し、あのシーズンのあのルック!と当てるのも楽しい。そして肝心の新作は、クチュールを発表しただけあって、メゾンの技巧を凝らしたドレスが特に素晴らしい!
そんな中でもストリートを忘れていないデムナ・ヴァザリア。フーディとクチュール的なスカートを合わせているルックなら、自分でもチャレンジできるかもしれないと夢を見させてくれます。
毎シーズンアイコニックなアクセサリーが登場しますが、個人的にはオーソドックスなローファーをスリッパに変換したシューズが一押し。この一足で、旬なモードスタイルが完成しそうだと期待しております! そしてもちろん、サステイナブルな素材を使っている。常に革新するバレンシアガから今季も目が離せません。
【STELLA McCARTNEY】 キノコが地球を救う!
サステイナブルなアプローチといえば、さすがのステラ・マッカートニー。球体状の天井が特徴的なエスパス ニーマイヤーで披露されたコレクションは、新時代のセンシュアリティを再定義するようなものでした。既存のフェミニンとは一線を画し、スポーティで軽やか。知的でエフォートレス。まさに目指したい人物像です!! サイケデリックな模様に、歪みがユニークなカットアウト。タイトシルエット&ネオ・肌見せという来春のビッグトレンドを確信しました! ここで特筆すべきは、キノコです。まず、プレゼンテーションの着想源がドキュメンタリー映画『素晴らしき きのこの世界』。菌類の変幻自在で超越的な性質に魅せられ、キノコから奏でられる異世界的なシンセサイザー音楽でショーがスタートしました。そして、今季ついにデビューしたマッシュルームレザー製のバッグ「フレイム マイロ™(FRAYME MYLO™)」!
ステラは2017年以来、ボルトスレッズ社と組んで開発に力を注いでいましたが、ついに日の目に! 再生可能で、完全にアニマルフリーなレザー代替素材による製品が、ファッションと地球の未来を救う一役を担いそうです。
顔面識別が得意のモデルウォッチャー。デビューから好きなのはサーシャ・ピヴォヴァロヴァ。ファッションと映画を主に担当。