【2022AW NYコレクション放談・後編】現地ジャーナリストに聞いた、いま注目のデザイナー&今季ベストコレクション

先月開催された2022年秋冬NYコレクション。後編ではコレクションに限らずファッションウィー中にジャーナリスト森さんが気になった若手デザイナーと、最も印象に残ったコレクションについて聞きました。日本ではまだあまり知られていない注目ブランドはぜひチェックしたいところ。必読です!

SPUR編集部(以下、S):今回のNYファッションウィークでは若手デザイナーがコレクションを発表する場も多かったと聞きました。

森さん(以下、M):もともとNYのファッション界は少数のロットでも対応してくれる工場が多いということもありパリやミラノよりも新規参入がしやすい。さらにコロナ禍で小規模なショーが増えたことも関係して「自分たちもとにかくデビューしてみよう」、「初めてショーをやってみよう」というブランドが多かった印象です。

S:若手デザイナーが増える中で、森さんが注目しているブランドはありますか?

 M:AKNVASはとても良かったと思います。日本ではまだ取り扱いがあまりないですが、NYでは既に人気が上がってきていて、様々なメディアで取り上げられているブランドです。手掛けるのはデンマーク出身のChristian Juul Nielsen。北欧が出自のデザイナーらしいきれいな色使いやシンプルなデザインが評価されています。

今回のプレゼンテーションでの1コマ、中央がデザイナーのChristian Juul Nielsen。Photo by Teruyo Mori
今回のプレゼンテーションでの1コマ、中央がデザイナーのChristian Juul Nielsen。Photo by Teruyo Mori

S:ディオールやニナ・リッチなどのデザインチームにいた方ですね。カラフルで華やかだけど派手すぎないワードローブはデイリーにも使いやすそうです。

M:最近、NYの若手デザイナーには2つの傾向があります。ひとつはECKHAUS LATTAの影響を感じるアヴァンギャルドなデザインを好む人たち。一方で90年代のヘルムートラングを彷彿とさせるテーラーリングの中にスラッシュやカッティング要素を取り入れたデザインを好むデザイナーも多い印象です。そんな中でAKNVASは独自の世界観を打ち出していますし、ラルフローレンやマイケル・コースなどを好むNYの大人たちも好きそうで、セールス的にも成功するのではないかと思っています。

S:もうひとつInteriorもおすすめしていただきました。Jack MinerLily Miesmerが手掛ける昨年スタートしたばかりのブランドです。

M:以前はBODEのデザインチームにいたそうです。今回の会場は古いレストランで、モデルたちがそこで食事をしているという設定で用意されたのはキャンドルの明かりのみ。だから写真ではわかりづらいのですが(笑)。後日行われた展示会でみて、一見すると普通の服なのだけど少しひねりがあって面白いコレクションだと思いました。

レストランに登場したモデルたち。Photo by Teruyo Mori
レストランに登場したモデルたち。Photo by Teruyo Mori

S:インパクトはあるけど奇を衒いすぎないバランスは、日本の若者にも人気が出そうです。

M:確かにこのブランドは日本のマーケットでもウケがよさそうですね。NYでもかなり人気が出るのではないかと予想しています。

S:今回御覧になった中ではオートクチュールデザイナーにも注目の方がいらっしゃるとか?

M:メゾン・マルジェラでガリアーノの第1アシスタントを務めていたBach Maiです。展示会を行っていたのですがアメリカのマガジンでは既にプッシュされている有望株です。

(左)白衣を着ているのがデザイナーのBach Mai。(右)会場に展示されたドレスたち。Photo by Teruyo Mori
(左)白衣を着ているのがデザイナーのBach Mai。(右)会場に展示されたドレスたち。Photo by Teruyo Mori

S:マルジェラの前はプラバル・グルンに在籍していたようですね。フランスで最も権威があるとファブリックメゾンのひとつと言われるヒューレルとパートナーシップを結び、2019年から自身のブランドをスタートしたようです。

M:彼は素材の使い方が素晴らしくて。今回はメタリックやホログラム加工を施した素材を多用していましたがその取り入れ方が新鮮でした。クチュールならではの華やかさとモダンなアイデアが光るデザインで、次世代を担うクチュールメゾンとなることを期待しています。

S:前編で伺ったおなじみのNYブランドから今回伺った若手デザイナーまでたくさんお話を伺いましたが、今回、森さんにとってベストコレクションはどのブランドでしたか?

M:ピータードゥでしょうか、周りのジャーナリストの間でも評価が高いです。今回多くのブランドが力を入れていたテーラードアイテムを彼も発表しましたが、スラッシュディテールやスーパーオーバーサイズを取り入れた非常に洗練された作品でした。ベーシックなアイテムの大胆な再解釈にも関わらず、クリーンに仕上げたのも彼らしいですね。

Photos by iMAXTREE/AFLO
Photos by iMAXTREE/AFLO

S:セリーヌで培ったテーラーリング技術を存分に発揮したコレクションでしたね。フィービー・ファイロのファンが多い日本でも注目されています。

M:ショーの演出もよかったです。韓国系自動車メーカーのショールームという無機質な空間を舞台に、2~3分ごとに照明の色を変えていました。なんてことないように思える仕掛けに見えるものの、カチッとした服もどこか柔らかい印象に変化したりして洋服の様々な魅力を引き出していたように思います。既に中国では20軒以上のショップを展開していますし、グローバルにファンを増やしています。

S:先シーズンも評価が高かったですが、秋冬コレクションでさらに人気が拡大しそうですね!

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エディターHA

ワードローブの中心はデニムとメンズのシャツ。『スターウォーズ』シリーズに出てくるイウォークに似た犬と暮らしています。

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