楽天ファッションウィーク東京期間中にあたる3月14日(月)、トモ コイズミによるランウェイショーが開催された。会場は東京エディション虎ノ門。昨年の7月に京都の二条城で開催されたショーに続き、綺羅星の如くセレブリティたちが集結した。
今回、人生初のランウェイを経験したのが、俳優の中山咲月。昨年フォトエッセイ『無性愛』を出版した彼は、これまでSPURでもモデルとして誌面に登場するほか、昨年のインタビューでは自身のパーソナリティについて語ってくれた。リハーサルを終え、ショーの開始まで一息つくタイミングで、その心中を聞いた。
── デザイナーの小泉智貴、改めトモ・コイズミとの出会いは?
トモさんと初めて出会ったのは昨年末。マーク ジェイコブスとのコラボレーションのローンチイベントでお会いしました。もともとインスタグラムでトモ コイズミのドレスを見ていたのですが、トモさんも私のことを知ってくれていたようで、即座に意気投合しました。
── ランウェイ出演のオファーがきた時、どんな気持ちでしたか?
驚いたと同時に、ワクワクしました。やるからには徹底的にやりたいと思い、ウォーキングの練習もしました。
── トモ コイズミといえば、ボリュームのあるボールガウンが特徴的ですが、普段の自分のスタイルとの違いに違和感はありませんでしたか?
確かに、これまでトモ コイズミが作ってきたドラマティックなスタイルは、私の普段の格好とは違いますが、オファーの段階で私のためにスーツを作ると言ってもらえたので心配はありませんでした。逆に、トモさんが思い描く人物像を通して、新しいスタイルに挑戦できることが楽しみでしたね。
── 昨年上梓された『無性愛』では、ご自身がトランスジェンダーでありアセクシュアルであることを公言されています。出版後、周囲からの反応はいかがでしたか?
はじめは厳しい反応を予想していましたが、予想外に好意的な受け止め方をしてくれるファンの人が多いことに驚きました。もっと早くカミングアウトしても良かったのかもと思ったり。
── 最近ではアセクシュアルやアロマンティックを題材にしたドラマも公開されるなど、ジェンダー、そしてセクシュアリティの話題が引き続き関心を集めています。そんな中で、中山さんの発言力がより一層高まるのではないでしょうか?
セクシュアルマイノリティと十把一絡げにしてしまうと簡単に聞こえますが、実際は違う。トランスジェンダー者同士でも、微妙な認識の差異みたいなのがあるはず。でもこういった話って、当事者との接点がない人にとっては複雑で分かりづらいんじゃないかと思うんです。だからこそ、私自身の体験を通して、少しでもジェンダーとセクシュアリティに関心を持って、理解して欲しい。そのために、これからも発信を続けていきたいです。
── 今後のビジョンについてお聞かせ頂けますか?
その上で、先ほどのジェンダーやセクシュアリティに関する発信は自分のライフワークだと思っています。これは以前の取材でも同じことを言っていると思うんですが、将来的にはジェンダーやセクシュアリティのカテゴリではなく、中山咲月というひとりの表現者として見てもらいたい。あとは、俳優としてももっと積極的に作品に関わっていきたいです。
中山 咲月 プロフィール
1998年、東京都生まれ。ローティーン誌のモデルとしてデビュー。モデル活動のほか、俳優としてTVドラマや映画、舞台でも活躍し、『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)などに出演。自ら手がけるブランド「Xspada」も人気。2021年9月17日、ファースト・フォトエッセイ『無性愛』(ワニブックス)を発売する。
photo: Kyohei Hattori text: Shunsuke Okabe