2023-‘24年秋冬ファッション・ウィークのハイライトのひとつ、新チーフ・クリエイティブ・オフィサー、ダニエル・リーが手がけるバーバリーのファーストコレクションがついに発表された。
ショー当日の夜、ロンドンのソーホーエリアから南下し、トラファルガー広場、ビッグ・ベンとウェストミンスター寺院を通り過ぎて辿り着いたのは、バラ園があるケニントン・パーク内に設置された特設テント。
中に入ると、英国の街を象徴する霧が立ち込めるような会場内の座席に、青いチェック柄のブランケットが敷かれ、その上に同素材で包まれた湯たんぽが置かれていた。
さらにホットウィスキーのサービスも。緊張感をほぐしてくれるような温かさだ。
観客は300人ほど。、ダニエル・リーが敬愛するクリストファー・ベイリー(2018年3月までバーバリーの最高クリエイティブ・ディレクターを務めた)も見守る中、メガブランドらしいスペクタクルなものとは一線を画す、インティメイトな雰囲気の中でショーの幕が開いた。
フェイクファーのラペルが印象的なトレンチコートに湯たんぽを抱えたファーストルックから始まり、バーバリーチェックの変形ダッフルコート、イングリッシュ・ローズ柄のカーコートなど英国の伝統的なアウターが多数登場。創設者トーマス・バーバリーの哲学「衣服は英国の天気から身を守るもの」をグランジ風味に味付けし、アウトドア文化に着想した提案だ。
その中に、アクセントとしてユーモラスなカルガモモチーフを取り入れ(時にはまんまカルガモの形をしたニット帽を差し込み)見るものの笑みを誘う。
アーガイル風のニットやキルトスカートなど、懐かしく親しみのあるウェアも登場したが、それらが新鮮に映るのは、黄色とブルーを主軸に据えた彼らしい配色の賜物。
デビューショーに先立ってロゴを刷新し、バーバリー プローサムのエンブレム「馬上の騎士(EKD)」がリバイバル。それらに使っている色と同じブルーが目に焼き付く。
そして黄色は、招待状と一緒に届いたイングリッシュ・ローズの色。前職でグリーンをイットカラーにしただけあって、色の持つ力を巧みに操るセンスは健在だ! ヨークシャーに生まれ育ったダニエルだからこそ引き出せた、英国のフレッシュな魅力が詰まったコレクションだ。馴染みのあるものの中に新しさを見出すこと。これこそがモードの未来図かもしれない。
また「ROSES AREN’T ALWAYS RED(バラはいつも赤ではない)」「THE WINDS OF CHANGE(変化の風)」など、彼にしては珍しいスローガンTシャツも目を引いた。インパクトの強いグラフィックに柄のボトムを合わせながらもモダンに、エレガントにまとめる手腕はさすが。
そしてやはり、アイコニックなアクセサリー類は見逃せない! バーバリーチェックのフード付きマフラーは、いますぐコーディネートに取り入れたい捻りの効いた実用品。
野暮ったさギリギリのラバーブーツは次シーズンのウィッシュリスト入り確実のアイテムだ。イニシャル「b」がアクセントになったサドルバッグやサッチェルは機能性を重視するブランドのDNAを感じさせる。その一方で、バッグについたしっぽのような飾りや、ボリュームがあり過ぎるスニーカー、フェイクファーやシアリングをトッピングしたシューズは実にアイキャッチーでユーモアたっぷり。9月以降、ストリートスナップで目にする機会が増えそうだ。
4年前、ミラノの路上でダニエル・リーと立ち話をしたことがある。控えめな印象があったが、クラフツマンシップの話になると、少年のような笑顔で語ってくれた。
フィナーレで登場した彼が充実した表情で深々とお辞儀をする姿を見て、世界に誇る英国ブランドを心から楽しみながら牽引していくのだろうと思うと、ますます期待が高まってくる。