“東コレ”の愛称で知られる「Rakuten Fashion Week TOKYO」の2023-'24年秋冬シーズンの発表が、3月13日(月)〜3月18日(土)の6日間で開催された。海外のブランドやジャーナリストなどの参加者も増え、先シーズンよりもさらに活気が戻った今シーズン。エディター注目の3ブランドと、多くのブランドで見られた気になるトレンドアイテム、そして記憶に残ったベスト演出をレポート。
カオスで自由な世界で生きる-TANAKA(タナカ)
2017年のブランド設立以来、初となるショーを開催したタナカ。碁盤の目のように配置された座席は、ブランドの拠点でもあるNYの街並みを想起させた。さまざまな人種や性別のモデルたちは、足早に、そして縦横無尽に客席の間を通り抜ける。エッセンシャルなデニムから、ヴィンテージのバンダナや古着のファーを再構築したアイテム、アーティストのFAILE(フェイル)がペイントを施した一点もののショーピースまで、モデルたちがまとうのは、カオスで自由なパーソナリティだ。
タナカが掲げるのは「これまでの100年とこれからの100年を紡ぐ衣服」。会場中央には、ブランドのものづくりを支えるカイハラデニムの原料である原綿を配置。ショーのラストには織機の映像を映し出すことで、ものづくりの根幹であり、タナカが大切にしている生産背景を演出に溶け込ませた。今シーズンのテーマは「生きる」。デニムという素材をキャンバスにして自由に表現するタナカの服からは、湧き立つ生命力を感じるだろう。
Photos courtesy of brand
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空気と余韻をまとい踊る-Chika Kisada(チカ キサダ)
元バレエダンサーという異色の経歴をもつデザイナーの幾左田千佳によるチカ キサダは、舞台公演さながらの開演ブザーと共にショーをスタート。本公演を彩るのは、オペラ歌手とオーケストラによる生演奏、バレエダンサーの二山治雄によるパフォーマンスだ。そして主演はチカ キサダのアイテムをまとったモデルたち。グレーやベージュといった曖昧なトーンのチュールを使い、大胆なシルエットを巧みに構築したウェアで、現実と空想がないまぜになった世界を作り上げた。
今季は「マスキュリン・フェミニン ・センシュアル」という柱のうち、マスキュリンの表現の幅を広げるべく、メンズのパターンを用いたデニムパンツやデニムジャケットも登場。身体にフィットするデニムと、それを空気と共に包み込むチュールに、人間が内包する二面性の魅力を感じた。
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秘密の“ハグ マイセルフ”-pillings(ピリングス)
「答えはないけど一所懸命に向かっていく、そんな姿に意味があると思った」。デザイナーの村上亮太は、街灯に群がる蛾の姿についてそう語った。ひたすらに光源へと集まる習性を持つ彼らに、ある種の希望を見出したという。道路のようなランウェイに設置された照明は、数本の街灯のみだった。
泣き腫らした後のようなメイクで、どこか悲しげな表情を浮かべたモデルたちが、その道をゆっくりと進んでいく。縦方向ではなく横向きに穴が開けられたポケットは、自分の手で身体を包み込むためのもの。パワーショルダーの四角いケープは、その下でこっそりと自分自身を抱きしめることができる。ピリングスはいつだって優しい。光に向かって進むしかない私たちに、“ハグ マイセルフ”の休息時間を提案してくれた。
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兎にも角にも、今気になるのはデニム! ワードローブにひとつはある永遠の定番アイテムだからこそ、自由な着こなしで楽しみたい。そんなお手本を見せてくれたショールック・アイテムをチェック!
レイヤードで魅せる-INSCRIRE(アンスクリア)
Photo courtesy of brand
ほんの少しのひねりを加えた上質なリアルクローズで人気のアンスクリアは、ブランド初となるショーを開催。ベーシックなアイテムは「ランウェイ映えしない」と言われがちだが、レイヤードの技が効いたスタイリングで観客を魅了した。大胆にスリットが入ったデニムのロングスカートからは、センタープレスを施した端正な顔立ちのデニムパンツがのぞく。クローゼットの奥にしまっていたデニムスカートに、新しい光が差した瞬間。
マニアックなこだわりがチラリ-stein(シュタイン)
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シュタインのルックはどれもエッセンシャルなアイテムで構成されているが、目を凝らすとそこにはとんでもないこだわりが見えてくる。二重にして穿いたかのようなジーンズは、腰回りだけ重ねたデザイン。外と内でそれぞれ1960年代、1990年代のジーンズを再現した作り方をしているという。なんと繊維や織り方、リベットといった細部まで! 色落ちの仕方も外と内では異なるらしく、長く穿いて自分だけの一本に育ててみたい。
差をつける変化球スカート-FETICO(フェティコ)
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1920年代のフラッパーや、キャバレーで働く女性など、舞台に上がる“ユニーク ビューティ”な人物をミューズにしたフェティコ。ブランド開始当初から「脚が長く美しく見える」と評判で“隠れ名品”だったデニムシリーズに、スカートが登場!
ブランドが得意とするフェティッシュな肌見せが叶う、大胆なスリット入り。脚はもちろん、腰回りをすっきりと見せてくれる美シルエットに一目ぼれ。V字に施されたステッチもフェティコらしさ全開。
ボディジュエリーのようなデニムを提案-Chika Kisada(チカ キサダ)
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チカ キサダはブランド初となるデニムアイテムを披露。デニムで作るエレガンスを追求し、デニムパンツのベルトループを活用したビスチェや、身体を美しく見せるボディスーツがラインナップ。ビーズやチェーンなど、毎シーズンさまざまな素材で作る人気のビジューシリーズのように、身体を飾るデニムアイテムは作れないかと考え、誕生したという。
一見タイトに見えるボディスーツは、ウルトラストレッチ素材なのできつい締め付け感がなく、元の身体のラインを生かしながら整えてくれる。 デニムonデニムのスタイリングで楽しみたい。
生で見られるショーだからこそ感じられる、ロケーションや音楽を含めた空間演出。東コレできらりと光った、ナイス演出をピックアップ!
ワンちゃんに首ったけ!-SEVESKIG / (un)decided (セヴシグ / アンディサイデッド)
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セヴシグ / アンディサイデッドのショーに登場したのは、大きなウルフドッグ! テクノロジーによって世界が崩壊するふたつのストーリーに着想を得た今季。その終末の世界の扉を閉じるのがコヨーテと言われており、今回のショーにも登場させたかったという。しかしコヨーテは登場させられないので、ウルフドッグが代役を務めたというわけだ。(おそらく)初ランウェイでも堂々としたウォーキングを見せたウルフドッグに拍手!
登った先に見える景色とは?-MURRAL(ミューラル)
ショー会場に行くまでのスロープ
ブランド設立10周年のメモリアルイヤーを迎えたミューラルは、来場者を「山頂」へ招待した。東京国際フォーラムのガラス棟を6階まで昇ると、ようやく会場への入口となる、長いスロープが見えてくる。
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「フラジャイル」と題された今季の着想源のひとつは、デザイナーが登った富良野の雪山だ。会場までの道のりには、「登って初めて見えてくる景色を見てもらいたかった」という思いを込めたという。肩に降り積もる雪をイメージしたパールのハーネスや、実際撮影した吹雪の写真をプリントしたドレスなど、デザイナーが感じた“儚い一瞬”を服として永遠に閉じ込めた。
デザイナーの私生活を覗き見る-YOHEI OHNO(ヨウヘイオオノ)
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インスタレーション形式で発表したヨウヘイオオノ。フォルムに対する熱量と探求心をぶつけた前シーズンに対し、今回は自分自身の視点や生活そのものを反映させた、パーソナルなコレクションに。会場に並べられているのは、コレクションの世界観を投影する家具やオブジェだ。それらの中にはデザイナーがさまざまな土地で収集した私物も多く紛れ込んでいる。前シーズンに登場した謎のオブジェバッグも!
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会場で一際目を引いたのは、一瞬ドキッとしてしまうトロンプルイユのラグ。アーティストのSakura Sugiyamaが本コレクションのために制作作したものだという。モデルがランウェイを歩くショー形式ではなく、観客が自由に動いて鑑賞するインスタレーションだからこそ表現できたもの。ブランドらしさ満点のウィットに富んだ演出は、目まぐるしいファッションウィークの中でもしっかりと記憶に刻まれた。