SPURエディターのトレンド速報!【2024-’25秋冬】

ここ数シーズンのトレンド、"デイリーウェア"は今季、新しいフェーズに突入した。今までよりも感情的で包容力があるものに。現地で目撃したプロフェッショナルの肉声を交え、次なるキーワードをレポートする

「クワイエットラグジュアリー」という言葉が定着して久しいが、今季SPURエディターが注目したのは、やわらかなムードのルック。各都市の取材を担当したエディターの鼎談から潮流を分析

編集M:パリ取材担当 
編集A:ミラノ取材担当 
編集K:ニューヨーク取材担当

やわらかさ、温かさこそ次なるラグジュアリーの要

トリー バーチ

トリー バーチ

編集K(以下K) トップバッターのNYで現地取材したファッションジャーナリストの森光世さんからは、「頭を守るものが多い」という報告がありました。世界情勢が不安定なときは、開放的だったりギミックをきかせたりした服が少なくなる傾向にありますよね。実際にコレクションを見ても首まわりを守るボリュームのあるマフラーやバラクラバなど「守られたい、くるまれたい」という気持ちを感じました(1)。

ジル サンダー

ジル サンダー

編集A(以下A) 頭まわりの提案は多かった。ジル サンダーのルックにはヘッドピースがついていて、頭を守るようなデザインでした(2)。

ボッテガ・ヴェネタ

ボッテガ・ヴェネタ

ジャケットのような本来直線的なものも、腕や肩まわりに丸みを帯びていることが多く(3)、包み込むという方向性はミラノにも反映されています。

ロエベ

ロエベ

編集M(以下M) 丸いフォルムはパリでもよく目にしましたよ! たっぷりと生地を使ってバルーンシルエットに仕上げたボトム(4)や、もこもこしたボリュームあるアウターも散見されました。さらにやわらかさ、というキーワードが配色から浮かびました。秋冬らしい落ち着いたカラーは定番ですが、そこに差し込まれる優しいペールトーン系も目を引きました(5)。

シャネル

シャネル

バーバリー

バーバリー

A 色みでいうとモスグリーンも可愛かったです! 差し色としての提案というよりは、アウターやワントーンコーディネートなどベーシックカラーとして使っている。ブラックやグレーの代わりにモスグリーンにすることで少し圧が薄まって温かみのある印象になると発見しました。ロンドンのバーバリーもモスグリーンを基調としていましたよね(6)。

ルイ・ヴィトン

ルイ・ヴィトン

M そうでした、バーバリーはアウトドア的なアイテムに思い切った肌見せという組み合わせも目立ちました。外遊び好きの私としては気になった!

K ゆったりしたニットに、シアーな素材のボトムで肌見せするスタイルも多い(7)。頭や首まわりにボリュームがあるときは、ロングブーツで足もとをスリムにしたり、スリットを深く入れて抜け感を出したり、バランスを取るのが大事なんですね。

クロエ

クロエ

M 抜け感といえばクロエも象徴的(8)。シアーなラッフルや繊細なレースを多用したルックがとても爽やかでした。

ブルネロ クチネリ

ブルネロ クチネリ

A モデルも軽やかにウォーキングしていましたね。ミラノのプレゼンテーションの際、ブルネロ クチネリ(9)が全体のテーマを「ジェントルラグジュアリー」とくくっていたのですが、デザインや素材がジェントルであることに加えて、優しい気持ちでいられる服ということを提唱していて。自分がご機嫌でいられたら、機嫌のよさが周りにも波及していく。心地のよい服は他者にとっても心地よさを与える服である、と提案していました。

K 素晴らしい連鎖!

A ピースですよね。こういう世界情勢だからこそ、自身が気持ちよくなれる服を日々纏って、穏やかな気分を拡張していけたらいいな、と。

ドリス・ヴァン・ノッテン

ドリス・ヴァン・ノッテン

M 創業者ドリス・ヴァン・ノッテンによるウィメンズ最後のショーとなった今回(10)は、新鮮な色合わせや着こなしの妙に着目してしまうのですが、コーディネートを分解していくとシャツやスラックスなどベーシックなアイテムが多い。日常の着やすさも大切にしながら、着ている本人が高揚感を持てる服が最も求められているのかも。

A 最近の流れであったクワイエットラグジュアリーは、凛としたクールなイメージもあったのですが、今季はそこに感情が芽生えたような感じかな。
K 確かに! 優しさや温かみを感じるラグジュアリーが、次の時代に必要なのかもしれませんね。

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