【2024-'25年NY秋冬コレクション】キーワード別にプレイバック!

2月9日から14日の6日間にわたって開催された2024年秋冬のニューヨーク・ファッション・ウィーク。NY在住のファッションジャーナリスト森光世さんに、現地の様子を教えてもらいました。キーワード別に、ルックを解説します!

森さん(以下、M): 今回のショー全体を見た感想としては、突出した新しいトレンドはあまりなく、コンサバティブな印象でした。テーラードっぽい定番型や、先シーズンからの透ける素材は引き続き、数多くありましたね。

SPUR編集部(以下、S): ショーを行わないブランドもあったり、ニューヨークは少し規模が小さめになっているのかな、と思っていました。

M: ファッションウィーク後半、マイケル・コースのショーのアフターパーティでマイケルが話していたのですが、戦争や経済のインフレなど、世界情勢が不安定なときは、自分を大事にするムードが高まるんですって。派手に遊びを入れた服よりも、安心感のある服に人々の心が惹かれるんだそう。それを聞いてすごくしっくりきたんですが、今回は頭や首周りにニュアンスのある服がたくさんありました。

頭や首周りを“守る”アイテム

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S: マイケル・コースはニットを首に巻きつけたようなルックが特徴的でした。他にも、ストールや襟元にニュアンスをプラスしているものも多かったですね。

M: 今回のテーマはタイムレス=時空を超えたファッションで、お祖母様が結婚された1930年代〜90年代の、各時代のミューズとファッションが具体的なインスピレーション源。美しいカットのテーラードコートやジャケット、30年前に流行ったバイアスカットのドレス、 フーディやデニムなどのスポーツウエアで構成されていました。

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S: ヘルムート・ラングは潜水服のように頭ごとすっぽり覆ったようなニットがユニーク。透け感のある素材やシルエットに変化を加えたものもありました。

M: 個人的にはもう少しピーター・ドゥらしさが見たかったところ! 透け感がある素材を用いていましたが、セクシーさよりも、かわいらしさを感じました。

S: 顔周りをカバーするという繋がりでいくと、アナ スイのスカーフ使いもキュートでした。

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M: アナ スイは、今回全体的にすごく可愛かったです! 70年代ロンドンのムードがうまく出ていたと思います。ヴィンテージショップから出てきた風なんだけど、細部は今っぽいという塩梅。ファーストルックで頭に巻いたスカーフも素敵でしたし、アーガイルのニーハイがすごく気に入りました。アナはさすがスタイリングの名手だな、と唸らされましたね。

 

差し色として効かせるのは、“赤”!

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M: すごく特徴的だったのは、赤い色が全体的に多かったこと。赤い服が多いというよりは、ポイントで赤を差している感じでしたね。

S: トリー バーチでは赤いドレスや、鮮やかな朱色のスカートも印象的でした。全体がダークトーンのコレクションの中に、ポイントで色を入れていましたね。

M: トリー バーチは今年ブランド設立20周年。新たな試みとして幾何学的な形のシルエットをつくることに挑戦したそう。四角を貼り合わせたようなスカートやトップス、ギャザーを寄せた布を螺旋系にしたようなドレスが登場。プラスチックやナイロンのような新素材を多用していたのも特徴的でした。

S: 他にも森さんが印象的だった赤いルックはありますか?

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M: アルチュザラの真っ赤なルックも記憶に残っています。インスピレーション源はイプセンの『人形の家』とサーカス、ピエロ、バレエ、舞台芸術。ピーコートやパーカ、トグルコートなどアウターが印象的でしたが、金ボタン、ピエロの襟をニットで作ったもの、菱形模様などのディテールが上手く使われていました。今回は人数制限をしていて、古くから付き合いのある媒体に……とのことで限りのある中でSPURの席も用意していただけたのですが、ものすごく質の高い素晴らしいコレクションでした。

スクールライクなプレッピースタイル

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S: 今年からファッションウィークに復帰したトミー ヒルフィガーは、王道のスクールスタイル。前述の赤い差し色や首元のニュアンスなども数多く見受けられました。

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M: 学生服からインスパイアされたようなプリーツスカートやジャージスタイルは、NYの若い子達からも支持を集めています。10周年を迎えたサンディ・リアンも学生服をアレンジしたようなルックが多い印象でした。トラックパンツやフーディなどカジュアルなものに、ポイントでのリボンやバラなど、甘いモチーフ使いが効いています。少なく散りばめて可愛く見せるのが上手いですよね。

S: リボンといえば、コーチも印象的でしたね! トップスやドレスのフロントに大きく置かれていたり、ニットの柄になっていたり。バッグのチャームがたくさんついているのも、Y2Kっぽさを感じました。

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M: 今回のコーチのテイストは、新鮮でしたね。リボンは初めて見たくらい。「新しい世代によってリニューアルされたヘリテージ」を軸に展開されたコレクションだったので、チャームのあしらいもそこからきているのかも。クリエイティブディレクターのスチュアート・ヴィヴァースが、じゃらじゃらつけるのが好きみたいです(笑)。

 

マークとトムがNYのモードを覚醒させた!

M: そしてファッションウィークより少し早めではありましたが、印象的だったのはマーク ジェイコブス。ブランド40周年を迎え、これまでのアーカイブからシグネチャーとなるモチーフをピックアップしたランウェイだったのですが、まるでオートクチュールを見ているような感覚でしたね。

 

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S: とてもユニークでしたよね。ボリュームたっぷりのヘアメイクも編集部で話題になりました! ほとんどの服が宙に浮いたような立体感のあるデザインでした。

M: ディテールを見ると、ウエストが数センチ空いていたり、ふわっと着せているんだけど、遠くから見たときと、寄って実物を見たときでまた印象が変わるんです。改めて素晴らしいデザイナーなのだなと、感銘を受けました。

S: ショーの演出といえば、トム ブラウンも話題になっていましたね。

M: トム ブラウンは、ショーを見に来ている人を引き込み、楽しませるべき、という考えの持ち主。エンターテイメントとしてのショーを私たちに見せてくれるんです。今回はエドガー・アラン・ポーの物語詩『Raven(大鴉)』をベースに、独特の世界を創り上げていました。BGMは、詩の朗読。雪に覆われた広場を会場内に作り上げて、中央には大きな鴉を設置。ショーの始まりは鴉の鳴き声でした。

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S: 肩やウェストが強調されたテーラードジャケットやコートを重ねたスタイルが多かったですね。ディテールにはカラスを散りばめており、羽ばたくカラスの模様入りのストッキングや足跡のプリントなど、細部まで目が離せませんでしたね。

 

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M: 現地のエディターたちが絶賛していたのは、今回登場したものが、どれも着られる服だったこと。というのも、スーツやコートを複数枚レイヤードしたりしているんだけど、ピースを1枚ずつばらせば、そのままお店に出せるようなオーソドックスなアイテムなんですよ。見せ方は派手でも、売れる服を作っているという点でとても評価が高かった。商売を成り立たせる服を、ショーピースへ昇華していました。

今回のファッションウィーク、マーク ジェイコブスに始まり、トム ブラウンで締める。NYのファッションウィークのレベルの高さを示す、素晴らしい2つのショーだったと思います!

 

エディターKAGOHARAプロフィール画像
エディターKAGOHARA

メンズ誌から異動してきたのですべてが新鮮な毎日!お笑いとぬいぐるみとドラァグクイーンが好きです。「なにそれ!」とツッコまれそうな服に目がありません。野菜が苦手です。

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