【パリ・ファッション・ウィーク2024】春夏コレクション、現地取材をしたエディターが注目ポイントを語る!

9月25日から10月3日まで行われた、パリ・ファッションウィーク。2024年春夏、「クワイエット・ラグジュアリー」を超えるトレンドはあるのか? 現地取材した編集長NAMIKI(以下N)とエディターSAKURABA(以下S)が、見どころをトーク!

【ステラ マッカートニー】大盛況だったマルシェと、モダンな提案

Stella McCartneyのルック
カマーバンドにちりばめられたのは、鉛不使用のクリスタル。ロックバンド「Wings」のヴィンテージツアーグッズに描かれていたペイントを、Tシャツにオン。©︎IMAXtree/AFLO

N: 今季、一番ホットだったショーはステラ マッカートニー「Stella’s Sustainable Market」と称して、会場には屋台がズラリ! 

S: ショーの後は、実際にショッピングもできたんですよね。

N: 天気もよかったし、ハッピーなバイブスが溢れていた。コレクションでは、もともと得意なテーラリングに、フリルシャツやキラキラのカマーベルトを合わせたり。“カッコいい”と“可愛い”の匙加減がうまい。なんとなくクロエのクリエイティブ・ディレクターを務めていた頃を彷彿させるというか。これって、本来彼女が得意としていたことでは?

S: カマーベルトしかり、今季はウエストをどうするかが鍵ですね! 昨シーズンから続く、メンズのドレスコードを再解釈する流れも。早速いいベルトがないか、ググっています。

N: フィナーレではガッツポーズしていたし、結構手応えがあったんじゃないかな。

S: 実は私はショー後に取材があり、マーケットをゆっくり見られなかったのですが、どうでした?

N: キノコや葡萄からできた新素材や、鉛を使わないスパンコールの展示があり、勉強になりました。それだけじゃなく、オーガニックフードやステラ マッカートニーのヴィンテージの店舗なんかもあって、ワクワクしましたね! リンダ・マッカートニーのベジミートバーガーをいただきましたが、めちゃくちゃ美味しかった。ヴィンテージのLPショップには、パパ・マッカートニー(ポール・マッカートニー)のレコードもセレクトされていたの。「サステイナビリティ」を長年本気で追求してきたからこそ、できること。真面目なメッセージを、みんながワクワクするような仕立てで届けたのが素晴らしい。

S: 服のデザインだけでなく、いかに総合演出でステートメントを伝えるかがクリエイティブ・ディレクターの手腕の見せ所ですよね。ゲストも参加型、というのもいいなと。

Stella McCartneyのルック
胸もとのビッグサイズのブローチが、アンドリュー・ローガンの作品。華やかなプリントもより独創的に際立つ。©︎IMAXtree/AFLO

N: これぞクリエイティブ。あとね、ショー前にキュンとときめいた屋台があったの。キラキラのアクセサリーが並んでいて、ちょうどお土産にもいいな、と目星をつけていたんです。いざショーが始まると、モデルが身につけている! 「みんな気づいちゃったよね、アッという間に売り切れてしまうのでは!?」と、ショーが終わるや否や脱兎の如く席を立って一番乗りでハートのブローチをゲット……したんですが、結局みんなが殺到したのはステラのヴィンテージの屋台でした(笑)。

S: 英アーティストのアンドリュー・ローガンの廃材を用いたウェアラブルアートピースですね。一度捨てられたものを美しく蘇らせて、ファッションとして身につけるというメッセージは、とても説得力があるなと。端正なドレスなんかに合わせると面白みが加わって、今っぽいルックになっていましたね! 

【ロエベ】ますます研ぎ澄まされる、ジョナサンの視点

LOEWEのルック
ボトムのサイドには、スラッシュポケットが。デニムのほか、シアリング素材にも注目。トップスはトラッドな雰囲気を感じるシャツやポロニットがお目見え。©︎IMAXtree/AFLO

S: そしてアーティストコラボといえば、我らがジョナサン・アンダーソンによるロエベ。6月のメンズコレクションに続き、アメリカの偉大なる彫刻家、リンダ・ベングリスと協働。会場に鎮座する巨大なオブジェや、モデルが着用したジュエリーとして登場しました。

N: トレンド重視のコスチュームジュエリーとも、ファインジュエリーとも異なる価値を提案したのね。オブジェみたいに部屋に飾ってもいいし、身につけても可愛いし。ロエベはもともと服をアートピースとして見せてきたから、説得力がある。

S: コレクションではベーシックな服を、拡大・縮小してみたり、プロポーションを変えたり。ユニークな視点が際立っていました!

N: 飛ばしたルックが目立ったシーズンもあったけど、今季は心から「着たい!」と思うウェアラブルな服が揃ったシーズン。ジャケットにシャツ、みたいな“おじかわ”スタイルが、まさにSPUR編集部員のツボでしたね。

S: こちらもメンズに続き、“ハイ”ウエストパンツが視界に入った瞬間、「これはウィメンズも潮目が変わるぞ!」と思いましたね。自分の穿いていたパンツを、思わずグイッと引っ張り上げました(笑)。Nさんはどのルックが気になりましたか?

LOEWEのルック
視点を変えて、ニットの編み目を“拡大解釈”してバルキーなシルエットに。ボトムスにはヴィンテージライクなデニムと、グリッターシューズを。©︎IMAXtree/AFLO

N: 服とバッグが一体化したようなレザーのルックかな。前回の秋冬コレクションに登場したスタイルをアップデートしていますね。ジャケットやパンツの高い位置に、縦にあしらったスラッシュポケットのディテールもいいよね。ポッケに手を突っ込み、腕を直角に折り曲げてちょっと風変わりな態度で着こなしたい。

S: 実際に展示会に行くと、上質な素材感や、こんなギミックがあったのか!ということにいちいち感動が止まりません。

N: ハイウエストボトムの内側にはコルセットが仕込まれていたね〜。ジョナサン・アンダーソンは「borrowed from a boy」=ボーイフレンドから借りた服、と言っていたけれど、単に男性のウェアを女性がぶかっと着る、というお決まりの提案はしない。トロンプルイユのちょっと「おじ」風なニットは、実はシャツと一体化していたり……と、仕立てや作り込みがさすが。

S: 素晴らしいですよね。そういうルックに、キラキラのメリージェーンを履く提案も大好物です。

【ルイ・ヴィトン】ロマンティックに転換した今季

Louis Vuittonのルック
パジャマからインスパイアされたパターンも登場。量感たっぷりの生地が、包容力も感じさせて。©︎IMAXtree/AFLO

S: オレンジのビニールに包まれたルイ・ヴィトンの会場も印象的でした! Under Construction(工事中)的なイメージなのでしょうか。「世にもおしゃれすぎる養生」……という言葉が一瞬頭をよぎりつつ。

N: まだ詳細は未定のようですが、会場となった建物は、これからルイ・ヴィトンのスペースとして活用されていくと聞きました。

S: そうなんですね! 今回、服がいつもと比べてフェミニンでしたね。

N: びっくりしたよね。「ニコラ・ジェスキエールさん、どんな心境の変化が!?」と聞きたいくらい(笑)、イメージが大転換。今回は、風を感じるような軽やかなムードに。ミニ丈にタイツを合わせるなど、60年代のムードも感じました。

S: ステラ マッカートニーと同様、エアリーなボリュームというのもキーワードかなと思いました。“風船”的な。

Louis Vuittonのルック
首から提げているのがカメラバッグ。ビッグシャツをミニ丈ワンピースのようにフレッシュに纏う。©︎IMAXtree/AFLO

N: フレンチガールのムードはずっとありますが、特に今回は、映画『ロシュフォールの恋人たち』(’67)のフランソワーズ・ドルレアック、カトリーヌ・ドヌーヴを思い出した。ただ、そこにパーカーやジャケットなどスポーティな要素や、ボールドなベルトというエッセンスを加えるニコラらしさは健在。

S: 「カメラバッグ」も、とてもキャッチーですね。ショー会場は、その昔はホテルだったとか。観光客がカメラを提げて歩いていたところからもインスパイアされたとのこと。

N: 靴のヒールはノット型になっていたり、小物が凝っていて可愛かった! ジェットコースター好きで有名なニコラさん、疾走感あふれる服を作っていたのが、どうして「可愛い」方に心が向いたのか、やはり気になるところです。

【ミュウ ミュウ】スタイリングの妙が光る

MIU MIUのルック
シャツ、ベスト、ロングジレを重ねて。抱えたバッグからはヒールが顔を覗かせる。ブルマスタイルも引き続き! ©︎IMAXtree/AFLO

S: 一方ミュウ ミュウは、2023年秋冬シーズンのコンセプトを引き継ぎながら、ますますパワーアップ。フレアな台形のマイクロミニスカートは、“ミュウ ミュウ・ガール”なDNAが感じられて、キュンときました。

N: 想像の斜め上をいくインパクトを残した先シーズンは、急いでいて、取るものもとりあえず着てきたファッションが可愛い、というお話でしたね。今回も見慣れた服を、組み合わせや順番をチグハグにスタイリングしていたのが最高にキュートでした。

ところで、パリは街を歩いていてもブルマだらけだったよね(笑)。ファッション・ウィークということもあるのか、タイツなどと合わせて、普通にみんな穿いている。日本ではなかなかハードルが高いですが、さすがの影響力ですね。

S: 日常に落とし込むという意味では、私は「バッグのなかにぐちゃっと物を入れることも、ファッションなんだ!」と勇気をもらいました。ジェーン・バーキンっぽい、無造作さが素敵ってことですかね。

MIU MIUのルック
ネオプレン素材のような、ハリと光沢感あるショーツも登場。©︎IMAXtree/AFLO

N: 海水パンツ的なボトムもあったね。ジムのプールからパーティに直行。でも時間が迫り慌てて着替えて、持ち物をとりあえずバッグに突っ込んで出てきた……みたいな。

S: 前シーズンの“寝癖ヘア”に続き、いい意味での生活感とストーリーを感じます。

N: あとは、着せつけが本当に絶妙! シャツにポロニットを重ねて、片側だけ襟を出したり。レイヤードした袖をぎゅっとまとめてまくり上げたスタイルも然り。簡単にできそうで意外とセンスを問われるかも。私たちがリアルにやって果たしておしゃれになるのかは謎ですが、むしろそこを気にせず支離滅裂なくらいが可愛いのよね。

S: 「あれ? 襟が片方しか出てないよ」と指摘されたら、「あえてなんです!」と強く答えたいです(笑)。

【シャネル】“JOY”なマインドを映す色と柄

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足もとはトングサンダルでノンシャランにまとめるのが気分。©︎IMAXtree/AFLO

S: 今季もシャネルのショーが素敵でしたねー! インスピレーション源は、南フランス・イェールの丘にあるマリー=ロール、シャルル・ド・ノアイユ夫妻のモダニズム様式の邸宅。

N: 会場を仕切っている黒い枠は、ヴィラの窓越しに見える風景というテーマを反映していたんだよね。服は、スポーツとエレガンスを自然な形でミックスしていて、遊び心たっぷり。このショーにも60年代のフレンチシック、フレンチロリータっぽい可愛らしさがありました。

S: 今回のファッション・ウィークでは、久々に柔らかいスタイルが復活しましたが、シャネルのショーではフェミニンな服を思いっきり楽しもう!というマインドを感じましたね。

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ブルーやピンクなど、多様なカラーのスウィムウェアが登場。©︎IMAXtree/AFLO

N: 実はロンドンで開催中のヴィクトリア&アルバート博物館の「ガブリエル・シャネル ファッション・マニフェスト」を観てきまして。冒頭に、ガブリエル・シャネルが手がけたセーラーカラーのブラウスの展示があるんですね。ランウェイにもセーラーカラーのルックがあり、時を超えた共鳴に胸が熱くなりました。ボーダーなどマリンな要素には、ガブリエル・シャネルのスピリットを感じるよね。

S:
 スウィムウェアもカラフルでワクワクしました! 上に羽織ったポンチョをブローチで留めているようなアレンジがとっても可愛くて。あと、なんと言っても「靴」がお買い物欲をそそります。“足もとは快適に”というのが今季らしさかと。キラキラのリボン付きフラットシューズが目を引きましたね。

N: ミニボトムにペタンコな靴で、素脚を伸びやかに出す、という提案が、ノンシャランでいかにもパリジェンヌでしたね。シャネルマークがついたビーチサンダルはバッチリ売れそうですが、いったい“おいくら万円”かしら……とドキドキしています(笑)。

エディターSAKURABAプロフィール画像
エディターSAKURABA

好きな服は、タートルネックのニットと極太パンツ。いつも厚底靴で身長をごまかしています。

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